↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『ダイエッター 長谷川アスカ36歳の、町内(腸内)会長、ロズマリンさん!』〜街の平和を守ります〜  作者: 東曌


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
4/11

第四章 五大ヘビー級モンスター軍団の総攻撃

第四章 五大ヘビー級モンスター軍団の総攻撃


「うおおおおおっ!」


最初に突進してきたのは、唐揚げクラーケンだった。


無数の衣付き触手を振り回し、町の広場をめちゃくちゃにする。


「油の海だあああ!」


メカブが悲鳴を上げた。


「落ち着いて! 掃除はあと!」


ワカメが叫ぶ。


その後ろから、トンカツ・ザ・ブルータルが巨大な剣を振り下ろした。


ドゴオオオン!


「うわっ!」


ひじきが飛びのく。


さらに、豚骨ラーメン・ギガが、白い湯気を吐き出した。


「濃厚! こってり! 替え玉ァァァ!」


「叫び声まで重い!」


アスカが思わずツッコむ。


チャーハン・ゴーレムは、米粒の嵐を巻き起こした。


鉄鍋ギョーザ・ドラゴンは、ニンニクと肉汁のブレスを吐いた。


「く、臭いっ!」


「食欲をそそる香りと、町を襲う攻撃は別物です!」


ロズマリンさんが叫ぶ。


「皆さん、役割を忘れずに!」


熱血消防団が駆けつけた。


先頭はショウガ消防士。


続いて、クミン消防士、唐辛子消防士、黒こしょう消防士。


「火事場の香り、出動だあ!」


ショウガがホースを構える。


「香りで場を盛り上げろ!」


クミンが叫ぶ。


「料理の魅力を取り戻すんだ!」


唐辛子が飛び跳ねる。


「ただし、脂肪を直接燃やす魔法は使えません!」


黒こしょうが、なぜか注意書きを掲げた。


「そこは現実的なんだ!?」


アスカは叫んだ。


「当然です!」


消防団が声をそろえる。


「私たちの仕事は、料理をおいしく楽しむお手伝い!」


四人は、町に香りを広げた。


ショウガのさわやかな香り。


クミンの異国情緒あふれる香り。


唐辛子の刺激的な香り。


黒こしょうの、ぴりりとした香り。


住民たちの顔に、少しずつ笑顔が戻っていく。


「いい匂いだねえ」


「なんだか、お腹がすいてきたよ」


「そうだ、食事は怖がるためにあるんじゃない!」


その間に、お掃除特戦隊が動いた。


「町の通りを確保!」


「住民の避難路を確保!」


「唐揚げの衣が飛び散ってるけど、これは清掃案件です!」


メカブが叫ぶ。


「食物繊維の仲間たち、力を貸して!」


ワカメが網を広げる。


ひじきが、ほうきを振り回す。


「清掃開始! ただし、食べた脂を全部回収する特殊能力はありません!」


「ひじき、さっきから説明が細かい!」


「大事なことですから!」


サラシア警備員も、住民の誘導を始めた。


「こちらへ。慌てず、落ち着いて」


彼は唐揚げクラーケンの触手を避け、チャーハン・ゴーレムの米粒攻撃をかわし、鉄鍋ギョーザ・ドラゴンの翼の下をくぐった。


しかし、モンスターたちは強かった。


唐揚げクラーケンが、巨大な触手で広場を叩く。


トンカツ・ザ・ブルータルが、剣を振り上げる。


豚骨ラーメン・ギガが、湯気の嵐を巻き起こす。


「このままでは、町が持ちません!」


メカブが叫んだ。


アスカは、モンスターたちを見つめた。


恐ろしい姿。


巨大な体。


迫力満点の攻撃。


けれど、よく見ると。


唐揚げクラーケンの衣は、きつね色で、見るからにおいしそうだった。


トンカツ・ザ・ブルータルの衣は、さくさくしていそうだった。


豚骨ラーメン・ギガの湯気からは、濃厚なスープの香りが漂っていた。


「……ねえ、会長」


「はい、アスカさん」


「このモンスターたちって、本当に悪者なの?」


ロズマリンさんは、扇子をゆっくりと閉じた。


「いいえ」


「えっ?」


「食べ物そのものが、悪者というわけではございません」


ロズマリンさんは、五体のモンスターを見つめた。


「唐揚げも、トンカツも、ラーメンも、チャーハンも、ギョーザも。それぞれに魅力があり、食べる楽しみがございます」


「でも、食べすぎには気をつけなきゃいけないんでしょう?」


「もちろんです。量や頻度、普段の食生活との組み合わせを考えることは大切です」


ロズマリンさんは、にっこりと笑った。


「けれど、一度食べたからといって、すべてが失敗になるわけではありません」


アスカは、はっとした。


モンスターたちは、突然、動きを止めた。


唐揚げクラーケンが、触手を下ろした。


トンカツ・ザ・ブルータルが、剣を地面についた。


豚骨ラーメン・ギガの湯気が、少し弱まった。


「……あれ?」


アスカが近づくと、モンスターたちは、どこか寂しそうな顔をしていた。


「おれたちは……」


唐揚げクラーケンが、低い声で言った。


「食べられるたびに、失敗だと言われる……」


トンカツ・ザ・ブルータルが続けた。


「一口食べたら、もう終わりだと……」


豚骨ラーメン・ギガが、すすり泣くような湯気を吐いた。


「たまには食べたい、という気持ちまで、悪者にされた……」


アスカは、言葉を失った。


そうだったのか。


彼らは、食べ物の姿をしている。


けれど、本当は、アスカ自身が抱えてきた罪悪感の形でもあったのだ。


好きなものを食べたい。


でも、太りたくない。


食べたら後悔する。


後悔するから、次は我慢する。


我慢が続かなくなって、また食べてしまう。


そして、自分を責める。


その繰り返し。


「……私も、ずっとそうだった」


アスカは、ぽつりと言った。


「好きなものを食べたいだけなのに、食べたあと、自分にダメ出ししてた」


ロズマリンさんが、うなずいた。


「アスカさん。食事は、一食だけで人生のすべてが決まるものではございません」


「うん……」


「好きなものを楽しみながら、普段の食事や生活を整えていく。それも、立派な方法のひとつです」


アスカは、モンスターたちに向き直った。


「ねえ、みんな」


五体のモンスターが、顔を上げた。


「あなたたち、町を壊さなくてもいいんじゃない?」


「……何?」


「おいしく食べたいって気持ちは、悪いことじゃないもの。でも、毎日そればっかりじゃなくて、いろんなものを食べればいいんでしょう?」


アスカは笑った。


「私、明日も豆腐を食べるかもしれないし、野菜も食べる。忙しい日はコンビニに頼るし、疲れた日は簡単に済ませる。それで、たまには唐揚げも食べる!」


唐揚げクラーケンの目が輝いた。


「本当か!?」


「うん。ただし、食べる量や頻度は考えるよ!」


「よし!」


唐揚げクラーケンが、拳を振り上げた。


「それなら、おれも町を壊すのはやめだ!」


トンカツ・ザ・ブルータルが、剣をしまった。


豚骨ラーメン・ギガが、湯気をふうっと吐いた。


チャーハン・ゴーレムが、米粒の嵐を止めた。


鉄鍋ギョーザ・ドラゴンが、翼をたたんだ。


五体のモンスターは、みるみる小さくなっていった。


やがて、広場には五人の食いしん坊な住民が並んでいた。


「いやあ、暴れたら腹が減った!」


「それ、最初から食べたかっただけじゃないの?」


アスカが笑う。


町中に、笑い声が広がった。


ところが。


ただひとり、笑っていない男がいた。


黒咲厳である。


「……認めん」


彼は、採点表を握りしめた。


「そんな曖昧な考えで、健康が守れるものか!」


そして、懐から取り出した。


小さな機械を。


「最終判定は、これで決める!」


それは、体重計だった。


ゲンは、町の中央にそれを置いた。


「数字こそ、真実だ!」


ロズマリンさんは、静かに目を閉じた。


「……なるほど。次は、数字との向き合い方が議題になりそうですね」


アスカは、ため息をついた。


「まだ続くのかあ……」


第四章・了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。