第五話
「何ですか、これ。」
俺は絶句した。
ミーティアの殺害、だと。
「どういうつもりですか?」
「まてまて、そんなに怒るんじゃない」
「まず我々、仲裁官は表向きでは寿命譲渡でクロノジェムに頼っている人々を手助けするために存在している。しかし、これは表向きだ。
別名エンフォーサー、執行人だ。エンフォーサーがする任務は暗殺、監視、交渉、治安維持など多岐にわたる。だが、これは平和のためだ。寿命を譲渡する技術が世界に広がり、情勢は不安定になった。いつ、戦争が起きるかもわからんこの時代において、我々は必要不可欠だ。」
エンフォーサー。世界各地にいる仲裁官を使い、平和を維持することを理念に掲げて、活動し、正義を執行している。実際にこの統括機構ができてから世界に大きな戦争は起きていないため、世界中で統括機構は信頼を得ている。今日の平和もこのおかげである。
「ですが、なぜ、彼女を殺すのです?なぜ私なのです?」
「詳しくはいえないが、彼女が世界の命運に強く関わっているということだ。それに殺しはしない」
殺しはしない、ひとまずそれを聞いて安心した。
「ですが、意味が分かりません…証拠はどこなのです?」
「冷静に考えたまえ。我々はどうして、未来を見ることができる?それは過去という膨大な記録を原動力に演算しているだけだ。
そして、この演算はこのまま、何もしなければ、という[If]の話であって、これのおかげで今まで数々の災厄を回避してきた。それに譲渡は未来をみる副産物だ。ただ、あのように大事なことがわかるということはかなり稀だがな。そのせいか、次第に寿命のほうに焦点があてられた。」
「なら…ピンポイントにその未来が見えた、というわけですか。」
「あぁ、彼女は運が悪かった。ただ、それだけだ。」
「ですが、この任務になぜ、私が選ばれたのですか?」
「君ぐらいしか彼女と関わっている者はおらんのだ。それに君、彼女と旅に出る予定だろう?こんなに丁度いい人材はいない」
「こっちのことはなんでもお見通しってわけですか…ですが、私は戦闘に関しては最弱ですよ?万が一にも…」
「問題ない。この任務はレギウス帝国に12/25日に着けば、良い。それまでに彼女がついていれば、お前の任務はそこで終わる。彼女もその後、原因がわかるまで帝国内で拘留とのことだ。明日、出発するとして、…丁度、90日か…。かなり猶予をもって、いけるな。」
「聖なる夜の日に…ですか。とんだ皮肉ですね」
「そうだな。ほら」
「これは…?」
「旅の金だ。寿命を金として、扱うのが普通ではないところもある。そういうときはそれのほうが役に立つ」
「帝国にそのまま行くにしてはかなり、量がありますが…」
「なんのことだ?」
総裁はそう言って、わざとらしく視線をそらし、窓から夜空に浮かぶ星をみつめる。
「どうやら、帝国までの道のりには4か国通らなければならないらしい。学んで来い。」
「はぁ、わかりました。」
「では、貴官に’オペレーション ルミナス・リクレイヴの任務の遂行を命令する」
「ライト・ヴォウ オーバーライトを開始する」
「では、また」
俺は部屋から出ていこうとした。
「ただ、万が一にも逃げようとするなよ。世界中が敵になる。この任務は予定通りに着けば、誰も血を流さなくて済む。」
「理解しております」
「それと、リベリア共和国から騎士を一人派遣するそうだ。大方、メンツのためだろう。もちろん、作戦内容は通達済みだがこのことは内密に」
「承知しました。」
俺は部屋から出る。ひとまず、ミーティアと旅ができる理由を作れてよかった。
しかし、騎士か…二人きりではないのが残念だが、旅は人が多いほど、楽しいものだ。これもこれでいいことだろう。
俺は帰る道中、ミーティアの家に寄るついでにいろんなことを考えていた。
もし、ミーティアが帝国に行かないなら…どうしようか、とか騎士はどんな奴なんだろうとか。
きっと、むさくるしくてマッチョなんだろうか、とか。くだらないことを考えていた。そして、あの事を思い出す。
俺が見た未来はミーティアが死んでいたことを。
だが、あの場面も総裁が言う通り[もしも]という話である。
むしろ、あれを見られて幸運だ、これはミーティアを救うことができる、かもしれないのだから。
それに帝国に予定通りにつけばいいし、大丈夫、だ。何も心配などないはずだ。
あの仲裁官が出て行って、私はおもむろに空を見ていた。
空はきれいな星々がこの街を照らしてくれている。
私は今、後悔していた。強く、強く。
あの時、無駄に金などやらなければよかった、と。
あの娘を見て、かつて、失った「もの」を私は思い出してしまった。
無駄にあの二人に思い出を作らせて、どうする。
絆が深まれば深まるほど、別れは辛く、深い分だけ痛みが増すだけだというのに。
ただ、彼を見ていると、昔の私と姿を重ねてしまった。
あの後悔をしてほしくはなかった。
「私は罪を犯したのだろうか…」
夜空に光り輝く星々は何も語らない。
ただ、これから散りゆく一筋の流星を、憐れむように見下ろしているだけだった。
「ほ、本当についてきてくれるの?」
「あぁ、許可が下りたんだ。金も支給してもらった。」
「すごい、いい職場だね。羨ましい。」
「ところで旅はいつからだ?」
「明日から。北の最北端まで行く予定。クリスマスに帝国に着いてると思うよ。」
「そ、そうか」
なんだ、この偶然。ただ、偶然にしてはできすぎている。すべて、見透かされているような。気味が悪い。
「帝国を入れて、5か国は旅をするよ」
「それは楽しみだな。どういう国なんだ?」
「秘密」
「えぇ~。教えてよぉ~。ミーティアちゃ~ん。」
「気持ち悪い…」
しょうがない、俺流奥義 二の型 餌付け
「あ、ケーキ屋でいちごのショートケーキ買ってきたんだよね~」
「そう…」
無関心!?そんなバカな…俺のデータにないぞ!? メガネㇰィっ
「プリンタベル…」
俺が席を立とうとすると、ミーティアが俺の袖をつかんできた。
「どうした?あっ、もしかして、ケーキ本当は食べたいんだろ?素直じゃないんだから」
ミーティアの顔が一気に険しくなる。
「もしかして?プリン…?」
わっ、わぁ、今まで見たことがないほどの笑顔だ…
「タベル?」
「いい、の…?」
多分、二度とみられない笑顔だろう。
守りたい、この笑顔
この無邪気な少女が本当に世界の命運を握ってるだなんて…ギャップ萌え、だ…
「プリンくれたからここで泊まっていいよ」
「なら、遠慮なく」
プリンってしゅごい
翌朝、あの笑顔を見た俺のコンディションは最高だ
昨夜のプリン、マジ、降臨。
溶けたカラメル、解けた仮面。
揺れるプリン、揺れるミッション。
天才とスイーツ、このギャップ。
yeah!
まだまだいくぜ、これからだぜ!
~~割愛~~
あのラップでしっかりと、ミーティアに怒られた俺は代わりに彼女の旅の準備をさせられていた。
「えっと、確か、パジャマと、日用品と地図と…」
だが、俺は気づいてしまった。
「下着があるのではないだろうか」と
しかし、ここで見てしまうのは何か違う気がする。
ズルをするのは俺の流儀に反するからだ。
やはり、正々堂々見せてもらいたい。
そう考え、荷物整理を終えた。
あっ、俺の荷物、家だ。置いてきちゃった…
「ごめん、ミーティアすぐ、戻る!」
「えっ、もう…」
メグルは走った。
走り続けた。
「やっと、つい、た。楽勝、だ、ぜ」
「おい!早く乗れ!」
うん…なんだ?ミーティアの声がずいぶん、違う気がする…
気にしないでおこう…
「ごめん…いま、の、る」
俺はミーティア?に倒れこんだ。
胸で受け止められる…?
そ、そんな、ミーティアに胸なんてない!
こいつは誰だ…?
目をこすって、見ると、そこには巨にゅ…いや、ビッチな青色の髪の色をした美少女が立っていた。
「な、なにを、す、する!」
「あんた、誰?」
「聞いていなかったのか?リベリア共和国の騎士レイナ・フィリスヴァルトだ」
「あぁ~。てっきり男かと。」
「何言ってるんだ、あんな可愛い美少女をお前なんかのやつより…ゲフンゲフン。私は護衛するために来た。あの子を襲うような奴から守るためにな。」
なんか、本音が駄々洩れな気がしたが、気にしないでおこう。
「ミーティアは?」
「なっ、お前、下の名前でもう呼んでいるのか。ウラヤマシイ…」
「お前もそう呼べばいいだろ」
「しょっ初対面の人には…その恥ずかしいというか」
なにこいつ、めんどくせぇー
「私ならここだよ、その人は…?」
「わ、ワタシはレイナ・フィリスヴァルトで護衛だ」
「護衛なんて、頼んでないけど」
すごく嫌そうな顔をしてる
まじかよ、あの統括機構の野郎、手をまわしてなかったのか…
「こ、これを」
なにやら袋を渡す。
「まっ、まぁ、旅は人が多いほど楽しいから、しょっ、しょうがないよね」
袋の中を見ながらそう言う。しかも、口から笑みがこぼれてる。
なにをあげたんだ。
「ミーティア、そろそろ行かないとまずいんじゃないのか?」
「そうだね、じゃあ、行こうか。」
「「あぁ!」」
これが今回の俺の初めての旅だった。
これから、たくさんの面白いもの楽しいことを経験していくんだろう。
本当に楽しみだ。
こんにちは!どのぐらいの文字数がいいのか悩んでるSenrakuです。
今回は仲裁官の裏の顔が明かされ、新たな仲間が増えた回でした。
やっと旅に出れた( ノД`)シクシク…
次はリベリアを離れ、いよいよ次の国です!




