第三話
クライスが光となり、夜空の星の一部となってからかなりの時間が経っていた。
俺はあの時、再生されたミーティアの未来を見てから一向に動けなかった。
なぜ、彼女が死ぬのか。
その問いについてよりも俺は強い不快感のようなもを感じた。
いや、これは本当に不快感なのだろうか。
俺が感じた強い既視感。あれはなんだったんだろうか。
だが、その理由はわからず、なんで既視感を覚えるのか。
いくら考えても分からなかった。
もしかしたら、既視感などではない、別の何かかもしれない。
ただの体調不良の可能性も十分考えられる。
俺はこの考えを胸の奥にしまっておこうと考えた。
そして、少女、ミーティアのほうを見る。
改めてみても、すごく美しい。
ナンバーワンホステスとおばあちゃんに言われ続けた俺が我を忘れて、
見続けるぐらいには。
…なんだろう、少し恥ずかしくなってきた…
この美しい夜空も徐々に崩壊してきている。ここに取り残されると
少々、厄介なことになってしまう。俺はミーティアに声をかける。
「ミーティア、この場所もじきに壊れる。」
しかし、気づかない。あれ…俺、無視されてる…?
もう一度、声をかけるも本当に気づかない。俺は彼女の華奢な肩に手を置く…気づかない。
しょうがないので禁断の手を使うとしよう。これを使うのは何年ぶりだろうか。
そう、あれは懐かしい夏の夜の日…
いかんいかん、回想に入っては。俺はいつものクールな自分を取り戻す。
覚悟を決めた俺はミーティアの脇に両手を入れ、
指先を繊細な手つきで動かす。猫をなでるかのように…直後
「ひゃわぁぁぁぁ!」
とかわいらしい声が出る。やっと、夢から帰ってきたか。
「ほら、帰るぞ。」
俺はいつものスマイルで話しかける。顔を赤くしたまま、ミーティアは
ジト目でこっちを見てくる。この娘、いつもの顔と温度違いすぎるな…
「セクハラされた…」
思わず、突っ込みを入れる。
「おいおい、誰もミーティアのこと…」
俺はいうのをやめた。いや、悟ったのだ。
やめなければ、殺されるということを。俺の脳が危険信号を出しまくっていた。
「なにか言ったかな?」
「なんでもありません」
俺は貧乳も大好きだぞ!心の中でそうつぶやく。
ミーティアはまたもや10メートルほど、離れていた。嫌われたようだ…
しかし、彼女の足の速度もだんだんと、遅くなり、止まった。俺は距離を保ったまま
「どうした?」
と声をかける。
ミーティアはバツが悪そうだった。少女は目を合わさないようにして、
「帰り方、、、わかんない…」
俺はわざと大きなため息をつく。そして、あからさまに大きな声で
「あぁ~もっと近づかないと帰れないな~~。でも~~俺、近づきたくないな~。
あぁ~謝ってくれたらなぁ~許してあげよっかなぁ~」
少女は10分ほど考える。いや、どんだけ嫌なんだよ。
「…ん」
「なんてェ~?」
「…めん」
「聞こえないなぁ~?」
「ごめんなさい!!!」
甲高い叫び声が聞こえた。
「よし、じゃあ、帰りたいって強く念じてみて?そしたらドアが出るから」
「っえ…うん…帰りたい、帰りたい」
しばらく、そんな感じだったが、一向に帰れない。
ミーティアは来てた話と違うじゃないかという目で見てくる。
「あれ…できない?」
「うん…」
夜空がなくなっていく…あれ、これやばくね…?
急いで思考をフル回転させる。そして、一つの案を考える。
一か八か。出れるか出れないか。つまり、二分の一だ。
大丈夫、いける。俺は呼吸を整える。
「試しに俺の手を握ってみて」
ミーティアは背に腹は代えられないという顔で指先だけ握る。
いや、ほんとにどんだけ、あの一瞬で嫌いになったんだ…さすがに泣きたい…
俺は念じる。帰りたいと。ドアが現れ、そのドアノブに手をかける。
直後、俺たちをまぶしい光が襲った。
見渡すと、目の前には屋敷…ではなく、森の中だった。
俺は不思議に思う。本来なら、俺たちは屋敷の前にいるはず…
まぁ、細かいことは別にいいか。
幸い、ここはミーティアのお気に入り散歩道だったらしく、
簡単に抜けられた。もちろん、距離は10メートル離れてだ。
こちょこちょは大の苦手らしい。
こうして、紆余曲折ありつつ、俺たちは無事に現実へと帰ってきた。
「それじゃ」
「じゃあな」
俺たちは屋敷の前で別れる。仕事の報酬は事前に受け取っていたので
今夜は豪勢に…と行きたいところだが、
もう深夜でこの辺りはもう歩きぐらいしか帰る手立てはない。
更にここら辺はしオオカミや野生の動物たちがうろついているらしい…こっわぁぁ。
こんなところは正直、深夜に帰りたくない。
俺は玄関前で考えていた。そして、結論を出した。
「俺は漢だ。しかし、俺は真面目な男でもある。
夜遊びなんて危ないマネなんてしないのっさ。」
こうすれば、ミーティアも男前だと見直してもくれて、まさに一石二鳥だ。
「完璧だ…」
思わず、口からこぼれる。
意気揚々とドアを開けようとしたとき。
「どこが…」
とミーティアの声がする。
この少女は俺のことを二階のベランダから見ていたのだ。
俺は少し、恥ずかしくなった。顔が熱くなる。
しばらく、互いに沈黙が流れる、ついにミーティアは折れたのか
「いいよ。上がってどうぞ。」
「本当か!お邪魔します」
作戦成功だ。
「部屋はここ使って、お父さんの部屋だから。」
「ありがとう。でも、ここまでタダってのもだめだ。
だから、俺にできることがあったらできる範囲でやってみるよ。」
沈黙が生まれた。俺は失敗したか、と自分の言動を反省する。
「…なら…ごはん、おいしいごはん食べたい…」
意外な答えだった。
「あぁ、わかった!」
ミーティアの顔から少し小さな笑みが浮かぶ。かわいい…ぜひ、嫁に欲しいくらいだ。
しかし、そんなことはできない。俺たちは今日で会わないだろう。
多分、一生…少し、悲しいがそれもしょうがない。ミーティアにはミーティアのことが。
俺には俺のことがあるのだ。短い間だったが、結構楽しかった。
「なに?」
「いやなんでも、おやすみ」
「おやすみ」
俺は深い眠りについた。
翌朝、幸い今日は仕事が休みなため、二度寝ができる。
心ゆくまで楽しもう…ふにゃ、、、しかし、そんないい状況は続かなかった。
ミーティアがお怒りのようだったからである。
というか、ミーティアはかなり感情豊かな子なのかもしれない。
なぜだか、俺はミーティアは勝手にクールなやつだと思っていた。
なぜ、そんなことを感じたのか考察をしていたが、彼女は俺をむすっとにらみつけてくる。
どうしたのだろうか。
「ごはん…」
「?ごはん…あっ、」
そうだった。昨日、俺は約束したのだった。
「ごめん、ミーティア。今すぐ用意する!」
「早くね」
「あぁ!」
俺はすぐさま着替えて、近場の店で食材を仕入れた。
帰る道中、人が集まっているようなので何事かとその輪を観察する。
見たところ、野郎どもらばっかりだった。
「ちっ、男ばっかか…」
そういって、俺の隣を荒くれものが横切る。
それにつれられ、ミーティアを待たせていることから俺も帰ろうとしたとき、
近くにいた旅人が仲間に向かって、
「なぁ、ここで金髪で超でっけェ、パイパイを持ったねェちゃんが客引きしているらしいぞ!」
「「なっなんだと!!」」
俺と荒くれは同じタイミングで振り返った。
「しかも、買うと、ウフフなサービス付きらしい…。しかも、だ。
彼氏募集中だとも。」
「「なっなんだと!!!!!!!!」」
「おっ、お前らも見に行くか?」
「「あぁ!」」
「なら行こうぜ!生まれたときは違えど、死ぬときは一緒だ!ブラザー!」
俺たちはさっき、できたブラザーたちと、すぐに出陣した。
予想通り、ウフフなサービスをしてもらえると聞きつけた、男どもらが長蛇の列を形成していた。俺たちはその最後尾に並ぶ。
「こりゃあ、何時間かかるんだろうな」
「構わん、パイパイのためだ」
パイパイか…
「なぁ、暇だし、自己紹介をしないか?」
「いい、考えだ」
「あぁ」
荒くれも首を縦に振る。
「じゃあ、俺から名前はビタ。最近、旅を終えて、帰ってきたところだ。故郷はここ、リベリアだ。よろしく。」
「俺はヒュース。こいつとは腐れ縁だ」
なるほど、幼いころからの親友ってところか。
あんたは?みたいな目で荒くれがビタを見る。
「俺はメアリー。花屋を営んでいる。出身はネオディスだ。」
そうか…花屋っていうのは裏世界の隠語なんだな…きっと…
だが、俺たちは兄弟、ブラザーだ。
どんなことであれ、俺はあいつを守るべきだ。
「お前も大変なんだな」
「…お前何か勘違いしてないか?ところでお前は?」
「俺はメグル。仲裁官だ。俺もヒュースたちと同じ、リベリアだ。」
「ほう、面白いな。リベリア人で仲裁官か。初めて、見たな…」
「そうなのか?」
「そうだろう。仲裁官なんてのは北の国のやつらばっかだからな」
「なら、もしかしたら俺は生まれはここではないかもな」
「んなこと、あるかよ」
しばらく、沈黙を俺たちが襲う。そんな中、その沈黙をビタが破る。
「みんないいか」
「なんだ?」
メアリーが聞き返す。
「とりあえず、ここだけは言っておく、抜け駆けはご法度だ。」
「「「あぁ!」」」
「やったやつは…わかるよな?」
「俺たちは生まれたときは違えど、死ぬときは一緒だ、だろ?ブラザー。そんなことをするようなやつはここにはいない。」
俺はビタに話す。
「それもそうか」
「お兄さぁん、このパン買ってかなぁい?」
いつの間にかもう順番だった。
うんうん、噂通り、金髪、巨乳、美人、うんうん、素晴らしい…
「あれ、メグル君じゃない」
「えっ、なんで知って…って、サエさんじゃないですかぁ!!」
「あれェまた、私に会いに来てくれたの?
もお、うれしいぃ。後でいくらでも構ってア・ゲ・ル」
「そ、そんな、ぐへェェ」
しかし、なんだろう。ものすごい殺気を感じる。
「メグル~。何が抜け駆けはしないってぇ?」
俺の両手をその場にいた男が捕まえる。
「くずみてえな奴だったけど、俺はお前と過ごしたひと時、楽しかったぜ…」
ヒュース…
「俺たちはブラザーだ…せめて、俺はお前をなんとかしてやりたい…」
メっメアリー…
「最後は俺が一思いに…」
そういって、両手に斧を持って、なにやら両手を合わせている。
これはやばい…本当にやばい。
その直後だった。
「なに…やってるの…?」
美しい美少女が現れた。きっと、女神なんだろう。
あぁ、俺なんかのために最後の懺悔の機会を設けてくれたのか。なんと、お優しい。
俺は今まであったことを包み隠さず、話す。
ミーティアの約束よりもパイパイの誘惑に負けたこと。
かつて、ブラザーだった奴らにやられる寸前だったこと。
フっ、ここまでか。そう思いつつ、目を閉じながら祈り続ける。
近くには誰の気配もない。そりゃ、そうかもな。だが、なぜかひそひそとなにかが聞こえる。
耳を傾けると、
「なぁ、あれやばいんじゃねぇか?」
「ありゃぁ、おっかねぇ…」
まぁ気にするほどでもない。
しかし、女神?は何も言わない。
目を開ける。そこにいたのはミーティアだった。
「へっぇ?」
思わず声がこぼれる。しかし、いつもとちょと、違う。いや、かなり違う。
「あの、怒ってます?」
「怒ってないとでも思う?」
「思いません…」
「わたし、あなたのことずっと、待ってたんだけど…胸がでかいだけの女のほうが私との約束よりずっと大事って思うの?」
「そ、そんなことは、ない!」
「もう知らないから」
「まっ、待ってくれ!なんでもするからどうか許してほしい!」
その言葉を聞いて、ミーティアは振り返る。
「なんでも?」
「あぁ!なんでも!!」
その言葉を聞いた少女の顔を見て、俺は深く後悔することになった。
しかし、そのおかげで俺は旅に出ることができ、
たくさんの楽しい思い出を作ることができた。
だが、それを俺が理解するには少し、時間がかかることだろう。
「なら、とりあえず、ごはんおごって」
「任せろ」
ブラザーたちが俺たちに親指を立てる。
がんばれよ。みたいな感じで。いや、どっちかというより、哀れな目をしていた。
まぁ、気のせいだ。うん、そうに決まってる。
俺は少女の背中を追いかける。
「ブラザー…幸せになれよ…」
荒くれ、メアリーは二人の背中を見て、そうつぶやく。
「「「てか、あの娘も超絶美人じゃねえかぁぁぁ!!
羨ましい!!!」」」
メグルのブラザーズはそう叫ぶ。
こんにちは、Senraku です。
今回は5000文字程度、書いてみました!
5000ってかなりきついですね…
次は1000字程度で毎日投稿か、今回のような文字数で
日をあけるか。悩ましいところです。
次回はミーティアちゃん目線です。




