第二話
「あなたなんでここにいるの?警察に突き出そうか?」
そういわれて俺は慌てて、状況を説明した。
すぐに少女は冷静になり、ポーカーフェイスになっていた。
俺が何回も呼び鈴を鳴らしたのに出てこなかったこと。
けっして、下心があったわけじゃないこと。
今日来た理由についてもだ。
彼女は納得してくれた…と思っている。
実際、10メートルは距離が離れて話している。
そこまで嫌われたのか…すこし悲しい…
「というかあなたは?」
身長は150センチ以上160センチ以下。しかし、胸などは…小さいな…。
子供な可能性も十分ある。
ここは子供と話すように。
「私?私はミーティアだよ。」
「あぁ、そうだったんだね。ごめんけど、両親はいらっしゃるかな?
子供は保護者の同意がこの国ではいるんだ」
その時、少女から悲しそうな雰囲気が出た気がした。
「私の両親はいない。私が物心つく前には亡くなったらしいから。」
「そっか。実は俺もなんだよね。」
少女の表情が一瞬、変わる
「そうなの?」
首をかしげる。
「そうだよ。でも君とは違って、俺は俺のせいで両親を失ったから。」
両親のことはあまり思い出したくはない。
少女はなにも言わなかった。
そう…とだけ言って。しばらく、経ったのだろうか、
この空気に耐え切れなかったのか、少女は
「お茶でも飲む?」
そう声をかけてくれた。俺は
「じゃあ、いただくよ」
と言って、屋敷に入った。
屋敷はきれいだった。しかし、ほとんどの部屋が本で埋め尽くされていて、
図書館のような屋敷だった。
「なんでこんなに本があるの?」
少女は答えに困ったのか、無言を貫いた。黙秘権の行使のようだ。
少し歩き、少女は振り向いた。
「ところであなたの名前は?」
「ああ、そういえば自己紹介はまだだったけ。
俺の名前はメグル。仲裁官をやっている」
「仲裁官…仲裁官…あっそういえば今日だったね。」
もしかして、忘れていたのか…
「じゃあ、メグル。ちょっと待っていて。」
「了解、ミーティアさん」
「ミーティアでいいよ」
急に呼び捨てか悪くない。しかも、なんだかさんを付けないほうがなぜだか、懐かしい。
ミーティアが茶を入れている間に俺は部屋を散策し、
一つの本を手に取った。
本の著者はミーティアという名前だった。
調べたところ、この人はかなり有名な天才だった。
脳科学の第一人者で知る人は知るというような学者らしい。
俺は全く知らなかったけど…まさか、あの少女ではない…と思う。
そんな形で本を見ていたらミーティアが茶を入れていてくれて
「どうぞ」
と手渡された。ふむ、なかなかにうまい。
かつて、茶の求道者と唄われた俺はかなりの高評価を出す。
「私の書いた本、面白い?」
ぼっふ…俺としたことが出されたお茶を吹き出すなんて…茶の求道者の名が廃るぜ。
そして、少女は新聞を見せる。
天才美少女ミーティアとでかでかと、書かれた見出しの下にはミーティアが載っていた。
ミーティアは少し、誇らしい顔をしていたが、
ポーカーフェイスのようなことは変わらない。
あの真っ赤な顔を今のミーティアに見せてやりたいのものだ。
「あぁ、すごいな」
そういったとき、老人が立っていた。恐らく80代だろう。
「もう時間ではないのか。仲裁官殿」
俺はいつもの仕事のように気持ちを切り替える。
「申し訳ありませんが、あなたがクライスさまでお間違いはないでしょうか?」
「いかにも私がクライスだ」
一瞬、別のことを言いかけたようとしたようにクライスの口が固まったような気がした。
「ありがとうございます。それではこちらにサインを仲介料はもう払っておられるので結構でございます。お時間は今夜の9時でございますのでそちらまでお過ごしください。」
「わかった」
クライスは重そうな腰をあげ、屋敷を後にした。
そんな様子を見ていたミーティアは
「変態なのにしっかり仕事している。」
と褒められてしまった。少し照れるな
「ほめてない」
実はミーティアはツンデレのようだ。そんな俺を見てか、
ミーティアはため息をつき、質問したいことがあるそうだったので遠慮なく、聞いてみて俺は優しく話す。
「おじいさんはなんで、寿命を渡すの?」
意外にも素朴な疑問だった。
「大体の人は自分がちゃんと、生きたんだっていう痕跡をこの世界に残したいからかな。」
ミーティアはため息をつく。
「ほかにやりようがあるでしょうに」
その姿を見て、俺は咄嗟に
「でも、これはあくまでの一般論、俺は罪滅ぼしの人もいるのかなって思う。」
その答えを聞いて、ミーティアは興味深そうな顔をする。よかった。
「まあ、おじいさんに聞いたほうが早いんだけどね。」
その答えに少し肩を落とす。そりゃそうだ。
「あ、あと私とあなた。同じぐらいの年齢だよ。」
へっ?
「それは大変失礼しました。
では、サインをしてくださるだけで結構でございます。」
「…はい。あと、敬語はやめてね。さっきのでいい。」
「そうか。なら遠慮なく」
時計を見て、俺はいつの間にかもう18時を回っていたことに気づく。
「俺も一度、夕食をとる」
そういって、支度を始めたとき、
「なら、私と食べない?」
「いいのか?」
「あなたがいいなら」
いつの間にか10メートル以下の近さだ。
これは大きな進展かもしれないと、心を躍らせていると、
ミーティアは台所をごそごそとし始めた。
何やら手料理でも作ってくれるのではないか。
そんな期待ができたとき、
ミーティアはレインボーな色をした液体が入ったコップを差し出した。
「これは…?」
「?ごはん、だけど、味はまあまあだよ」
その言葉を信じて、一口飲む…
…正直言ってくそまずい。思わず
「いやどこがまあまあだ!」
とミーティアに言ってしまった。
「そんなに?」
「そんなに」
ミーティアはかなり悲しそうな顔をしていた。
俺はすぐさま、彼女の手を引っ張り、家から連れ出した。
「どこ…行くの?」
「決まってるだろ、レストランだよ。」
俺は開いている店に入り、食事した。
ミーティアはハンバーグを俺はオムライスを。
なかなかにうまかった。ミーティアも嬉しそうにおなかをさすっている。
「あの…」
もしかして、お礼を言ってくれるのかそう期待して
「時間…」
「ッ」
俺はすぐさま、代金を払い、彼女を抱きかかえて、全力疾走した。
待ちゆく風は俺を応援するがごとく、追い風だった。
しかし、野郎どもらの視線は刃物のようにするどく、女性たちの視線は
冷ややかなものだった。
なぜだ。と考えるまでもなく、屋敷について、理解した
。俺はミーティアの小さな胸をわしづかみにしたまま、走っていたのだ。
ミーティアの顔は真っ赤で半泣きになっている。
俺は彼女に謝る。しばらくして、ミーティアは泣き止んだのか
「…だった…」
「なんて?」
「どうだったの!!」
「なにが」
「その…胸は」
「小さくて、つかみやすかったぞ!」
しまった…しかし、時を戻すことは俺にはできない。
ミーティアはまた、泣いていた。
俺は慰めようとしていたとき
「夫婦漫才はもういいか」
クライスがいた。
「ああ、すみません…」
不甲斐ない…
「お嬢ちゃんもほら」
とクライスは懐からミーティアになにか渡して、
彼女はピタリと泣き止んだ。
その後、いつものクールな表情に戻る。
「…ありがとう」
なにあの人すごい…
俺が感嘆している間にクライスは
「もう彼女を泣かすんじゃないぞ」
と俺に話す。
「すみません…」
本当に不甲斐ない…
「そろそろ時間だ。本当は仲裁官などいらんのだがな。」
クライスはそう俺たちに話す。
仲裁官について、否定的な意見を持つものも世界にはいる。
これはしょうがないと俺自身割り切っていることだ。
俺は時計を見やり、契約が後10分ほどで始まろうかとしていた。
気持ちを整え、寿命譲渡契約書を読み上げる。
「甲クライス 乙ミーティア とする。
本契約は甲のすべての寿命を自由意志で乙に譲渡する。
本契約はそれに伴い、甲の記憶を乙の未来へと変換する。
以上でよろしいですか?」
「…問題ない」
「私も」
「では、始めます。私の手に触れたまま寿命を受け渡してください。」
「あぁ」
「記憶をほどき、未来へと送る。
――仲裁、開始」
そのとき、俺たちをまぶしい光で襲った。俺たちは夜空を眺めていた。
クライスは感慨深そうに。ミーティアは興味深そうに。
夜空の星々はクライスの記憶だ。それを俺は集める。
そして、変換し、ミーティアの未来へと変える。
残った星々をミーティアに分け与える。この程度であれば、何も問題ない。
そして、俺はミーティアの未来を見た。
そこにいた女性は泣いていた。笑っていた。
そして、その女性はミーティアによく似ていた。
そして、俺は絶句した。彼女の瞳から光がなくなっていく。
俺は直観的に分かった彼女は死ぬ。
そのとき、強い衝撃が脳を揺さぶった。
俺は叫んだ。叫び続けた。その記憶のせいかはわからない。
覚えているのは既視感のようなもの。それがなぜかはわからない。
どれぐらい時が経っただろうか。
ただ、いつの間にか未来は無くなっていた。
ミーティアは心配そうな顔で俺の顔を覗き込んでいた。
「すまない…」
ふと、クライスがこちらに寄ってきた。その体は光にゆっくりと、
変換されてきている
「この先、お前の旅がどんなものになるか、それは私にはわからない。
しかし、お前は必ず、やり遂げようとするだろう。
それがどんな結末であれ。」
「どういう意味なんだ?」
俺は聞き返す。
「きっと、わかる時がいやでも来るさ。」
それ以上は俺は何も言わなかった。いや、言えなかった。
「あぁ、終わるのか…これで本当に良かったのだろうか…」
クライスはそうつぶやく。そして、体は光となり、夜空に消えていった。
こんにちは。Senrakuです。
今回はミーティアちゃんをめちゃくちゃ可愛く描くように頑張りました。
ここだけの話なんですが、さりげない部分に意味を持たせているため、気にしながら読んでいただけると面白いかもしれません。
誤字脱字、感想などありましたらぜひ、コメントしてください。私が喜びまくります。




