その2 カード
次回、冒険が始まります。
きつねのフードがついたパーカーを着て、ズボンをはいた白い狐が学生用アパートの一室にいた。
僕は自分を変化させる。
頭の白い体毛を髪の毛へ。
おでこの体毛の部分は前髪の一部に。
空色の目は人間が嫌がるから、前髪の部分を伸ばして隠す。
顔、体、腕、手、足。それぞれ人間の体に変化させる。
肌は体毛の影響か、あの人のように白かった。
おっと シッポと耳がそのままだった 危ない危ない。
尻尾は一部を体毛を移動させて後ろ髪に。もう一部は消す。
よし。これで完璧だ。
家にいる間は髪が邪魔だからピンで白い部分を左右に止める。黒は邪魔にならないし、そのままでいいか。
これで人間、木津 浅葱の完成だ。
だけど万が一のために買っておいたカラーコンタクトをつけ……
「 …前が見えない……。」
むぅ。やはり目に異物を入れるのは僕には難しいみたいだ。頑張って慣れよう。
日付を確認。今日は九月の一日。僕が高校に転校する日だ。まあ、転校と言うのは建前で僕は初めて学校に通うのだけど。
時刻を確認。5時ぴったり。高校とやらにはお弁当とが必要らしいので本を買ってみた。“はじめてのお弁当づくり”という本で、かわいらしいお弁当の絵が表紙の本。本屋では小太りしたババ………
…ばーさn…
………なぜか寒気が……ゴホン。おばs…
…………ご婦人たちが買っていたのでよい本なのだろう。
✡✡✡
AM5∶30
ふむふむ。なかなかおもしろい本。
「よし。玉子焼きを作ってみようっと!」
………
✡✡✡
AM6:00
「完成〜!やった!」
とうとうお弁当が完成した。メニューは玉子焼き、たまごサンド、ツナサンド、チョコサンド、プチトマト。はじめてにしては上出来!と喜び、ふっと気づく。
ぐうううぅぅぅ
「あ、あさごはん忘れてた。」
どうりでおなかが空くはず、とコンロに火を入れ、スープを温め、切った食パンの耳をスープにつけて食べ始める。
部屋のテレビが電源をつけられて喋り始めた。
「 続いて今日の天気予報です。今日の天気は 曇り時々雨でしょう。折りたたみ傘を持つことをお勧めします。 7時半になりました。……」
「 やばい。 学校に行く時間じゃん。テンコー早々遅れたら大変だしちゃっちゃと行こ〜っと」
浅葱は急いで制服に着換え、ピンを外し、髪が目立だぬようにつばの大きい帽子をかぶり、筆ペンをポケットにいれてアパートの一室を出た。
✡✡✡
♪キーンコーンカーンコーン♪
浅葱が教室に入ると、転校生と言うことと容姿が相まって生徒をざわめかせた。
禿げたのを鬘で隠して生徒にはバレていない。と思い込んでいる担任に、浅葱はばーろーと心のなかで言いこっそり舌を出した。
「えー、今日からこのクラスに入る 木津 浅葱君だ。皆仲良くしてやるようにー。あー、あと誰か後で校内の案内なー。」
じゃあ、木津君。と言われ、浅葱は自己紹介を書いた紙を出す。
「今日からこのクラスに入る木津浅葱と言います。好きな食べ物は玉子と軍鶏鍋とチョコレートです。特技は料理と火の扱い。趣味は魚釣りあと剣道です。歳は16、誕生日は七月八日です。よろしくお願いします。」
先生、と手が上がり、促されて続きを言った真面目そうな女子生徒は浅葱に嫌悪感を出しながらこういった。
「髪が白いのは地毛?」
浅葱はその嫌悪感に押されつつ、地毛だと答えると、その女子生徒はなるべく染めなさい と威圧的に言った。
「先生、委員ちょー、俺学校案内するよー」
委員長の圧に押されている浅葱を助けるように一人の生徒が案内を申し出た。
「じゃあ皆、仲良くなー」
✡✡✡
「俺、北村 勇司。よろしくな、木津!いや、浅葱の方がいいな。うん。俺のことは勇司って呼べよ。俺もお前のこと浅葱って呼ぶから。」
「うん、わかった。よろしく、ゆうじ。」
じゃあ行くぞ と学校案内が始まる。
✡✡✡
「これで最後。ここが音楽室ね。」
二人分の足音が響く廊下、勇司が言ったことは浅葱が一番知られたくないことだった。
「…なぁ、浅葱はなんでそんなに前髪長くしてんだ?」
えっと驚く浅葱に、勇司は心配そうにそれじゃ見えにくいだろ、と言う。目の色は知られると嫌われる。浅葱は知っているのだ。
浅葱は一応、小学校、中学校にも通っていたが不登校だった。そのきっかけは目の色を見られ、その色が珍しいためにガキ大将のポジションだった者にいじめられた。 アサギは経歴のために人生を歩んでいるが正体は200年くらい生きた白いきつねである。ゆえに頭もよく、大抵のことは身についている。まぁ近代的な英語は苦手だが、それ以外は独学でもかなりの知識を持っているので高校も余裕なのだ。が小、中、高と不登校はまずいと思い、髪で隠して登校したのだ。
「…浅葱?」
だが、浅葱はこの半日で勇司がいいやつだと本能でさ撮っていた。そのため、口から出たことは自分自身も驚く内容だった。
「ねぇ勇司、もしも僕の目が青かったらどう思う?」
言ってしまってからはっと口を抑えるが、言ったものは戻らない。
「そうだな、浅葱の目が青だったらその白い髪と似合いそうだな!」
「…ほんとに?」
それじゃあ…と浅葱は前髪をめくる。急に髪に隠れていた視界が明るくなり、キュ と目をつぶったあとにゆっくり開く。 勇司の顔は驚いていた。そして、ニパッと笑い、浅葱の肩に手をおいて、
「やっぱり。髪の色とよく似合ってるな!」
浅葱もニコっと笑う。
アサギはとても嬉しかった。あの人のように自分の目を嫌わなかったから。
「そうだ。浅葱が秘密を教えてくれたから、俺も俺の秘密、教えるよ。
勇司はゴソゴソとカバンを探り、一枚のカードを取り出した。そのカードには、こう書いてあった。
セーブ記録 無し
(ルージュ)ラニー↔(日本)東京
有効期限 魔王討伐まで。
尚、魔王討伐後は一度だけ使えます。
氏名 北村 勇司
「???」
浅葱がよくわからず、戸惑っていると勇司は説明をしてくれた。
曰く、 学校の帰りに拾った。
名前を書いてみた。
異世界に行けるのかと期待したが
何もおこらなかった。
二人でカードをながめる。と、浅葱の筆ペンが動き出し、勇司の名前をなぞり、浅葱の名を書き始めた。
「「えっ」」
氏名 北村 勇司 ,アサギ
書くと、筆ペンは再び浅葱のポケットに入った。
『条件を達成しました。 転送を開始します。』
カードがひかり、二人は光に飲み込まれた。
あとには開いたままのカバンが2つ残った。
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