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10-35 魔弾

 おっさんが問答無用で距離を詰めてくる。


「ㇱッ!」

「ミッ」


 くそっ。

 おっさんが典型的なガンガン前に出てくる近接ファイターなのが恨めしい。

 ゆっくり考えを纏めてる時間もありゃしない!

 【我が力は生贄の上に(サクリファイス・アブソプション)】で身体能力をゴリッと底上げしたから、一応おっさんの拳の軌道を追えるようにはなったけど……だからっつって、全部避けれるようになった訳じゃねえし。

 【全は一、一は全(レギオン)】状態でも、おっさんの超火力攻撃は一撃食らえばほぼ即死確定。

 後1回死んだら終わり――――。

 普通の奴にとっては当たり前の事だが、俺にとってはそれが結構重く心に()し掛かって来る。

 バグ何たらとの戦い以来、ここまでギリギリになるような戦いをしてこなかったから、無意識に「1度は死んでも大丈夫」って余裕が心の中に生まれていた。

 追い詰められてその余裕が無くなった時に初めて気付いてりゃ、世話ねえな!


「ミュっ!!」


 おっさんの拳の間合いに(つか)まる前に逃げる。

 近接の殴り合いで俺に勝てる要素は1つも無い。

 勝機が有るとすれば中距離(ミドルレンジ)。遠距離攻撃できるならその方が安全だが、おっさんがさっき天空闘技場を砕いたせいで足場が悪すぎて迂闊に遠くの足場に飛べない。

 で、問題なのは、中距離攻撃でどうやっておっさんに致命打を与えるかって事。

 等と考えている間におっさんが更に加速する――――!

 足場悪ぃのに動きが濁らねえなぁクソ!!

 コッチは【空中機動(エアスライド)】で出来るだけ地面に足付けないように走ってるから、スピードで上回れるかと踏んだけど……甘かったな。

 おっさんの間合いギリギリ外をうまく逃げ回る。

 が――――おっさんの左目がチカッと光る。


「ミャっ!?」


 しまった!?

 空中で体が拘束されて動かなくなり、強制的におっさんに向かって引っ張られる。

 【オーバーハンド】の魔眼――――!!

 そうだよ! 獣の奴は魔法の増幅器で絶えず【盲目(ブラインド)】を撃ち続ける事で魔眼を封じてたんだった!?

 体の所有権が戻ってからはそれが止まってるから、当然使ってくるに決まってんじゃん!!

 慌てて遠くにある増幅器に意識を通して【全は一、一は全】による支配を有効にする。そして即座に【盲目】の魔法を投げて魔眼を解除させる。


「――――遅い!」


 魔眼の拘束が消えた時には、既に赤鬼の巨体が目の前――――。

 タイミングを完全に外された!! 下手に後ろに逃げようとすれば、それこそ攻撃を食らう! ビビるな、打ち合え!!

 おっさんの右腕の振りに一瞬遅れて、俺も黒い魔力光(オーラ)を纏う右前脚を振る。

 カウンターを合わせるにはスピードが足りない! そして、それ以上に腕の長さ(リーチ)が足りない!!

 ヤバい――――このままじゃ一方的に攻撃食らう!?

 【タイムアクセラレータ】――――を発動している余裕は無い。だが、息を止める程度なら行けるでしょ!!

 息を止め【アクセルブレス】発動。

 周囲の時間の流れがゆっくりになる――――が、おっさんの拳は多少スピードが鈍る程度。でも、これで良い!

 少し余裕が出来た。と言っても、大きく息を吸って加速した訳ではないので息切れで直ぐ解除される。

 死の予感が頭を(よぎ)った途端、今まで考えなかった事に思考が向かう。

 魔銃エクセリオン。

 実弾ではなく、魔力の弾丸を放つ銃。

 “魔力の弾丸を放つ”――――……。

 そして、現在俺の右前脚は【魔導拳】によって魔力を纏っている。

 …………これ、撃てるんじゃん?

 小さく短い子猫の前脚を振る。そこから、纏っている魔力を切り離す(・・・・)感覚。切り離された魔力が、目の前の鬼の顔面にぶち当たるイメージ!!

 魔力光が腕から放たれ、同時に力が抜きとられるような感覚。


「グっ!?」


 右前脚から放たれた魔力光が、狙い通りにおっさんの右頬を捉えた。

 滅多クソな防御力を持つおっさんが、威力に負けて顔を仰け反らせる。そのお陰で、俺を真っ直ぐに狙っていた右拳が左に逸れて回避余裕。

 良し――――回避すると同時に息を吐いて加速状態を解除する。

 追撃……と行きたいが、さっき魔力弾を放ったせいで【魔導拳】が勝手に解除されていて無理に突っ込めない……。1度距離とるしかねえな。

 【空中機動(エアスライド)】で足場を作り、素早く後ろに飛んで距離を取る。

 仕切り直す。


「……むぅ……」

「ミュゥ……」


 おっさんの右頬にはぶん殴ったような跡。と言っても、傷とも呼べない物だが……。でも、ちゃんとダメージを通せた!

 今の【魔導拳】から、魔力弾を放つ流れの攻撃なら攻撃が通るな? 問題なのは、1発撃つと【魔導拳】状態が強制的に解除されるせいで連発が利かないって事だが……。

 いや、待てよ? この威力の高さって……もしかして【スナイパー】の威力、命中補正だけじゃなくて【ショットブースト】の補正も乗ってないか? あのスキル、「射撃武器の威力補正」って言ってるくせに、俺の投射にも補正が乗るし。

 多分だが、【ショットブースト】の効果って“射撃攻撃判定”だったらなんにでも補正が付くんじゃねえかな? だとしたら超絶優秀じゃね?

 今までRと思ってたけど、実はSSRだった感じか……。スキルガチャで最初にコレを引き当ててる辺り、変な所で強運な俺。

 ま、それは良いや。

 ともかく――――この良い感じの技を“魔砲拳(まほうけん)”と名付ける!!

 響きが魔法剣と被るが、まあ、良いでしょう。別に誰かに言うつもりも無いし、そこは気にしないでおこう。

 と――――。


『派生スキル:【魔砲拳】を編み出しました』


『【魔砲拳 Lv.1】

 魔王ブラウンが編み出した【魔導拳】の亜種スキル。

 魔力を弾丸として撃ち出す事が出来る。レベルが上昇する事で魔力の圧縮率が上昇して威力が増す』


『条件≪派生スキルを編み出す≫を満たした為、以下の派生スキルが解放されました。

 ・【魔法作成(マジックドライバ)】』


『【魔法作成(マジックドライバ)

 この世に存在していない魔法を作成出来ます。既存の魔法を作成する事も可能ですが、その際はその魔法を形作る因子を持つ魔法を覚えている必要があります』


 っとと、急に来た?

 急や。

 魔砲拳がスキルとして登録された……。

 困難初めてだな?

 ……スキル登録の条件は、“自力でスキルの元になる技を使う”“スキルに名前を付ける” “以上を行うのが1人目である”ってところかな? もっと細かい条件があるのかもしれないが、今は詳しく考えてる余裕は無いから一旦放置。

 魔法作成なんて超絶面白そうなスキルが出てきたが、今は頭の中で色々やってる余裕がないので、これも終わった後のお楽しみにとっておく。


「なんだ……今の技は?」

「(企業秘密)」


 言いながらバックステップで更に距離を取りつつ、右前脚を振って魔力弾を飛ばす。


「む」


 簡単に避けられる。

 【魔砲拳】の有効射程は10mってところかな? 【スナイパー】の命中補正込みでも、この弾速だとおっさんなら余裕で躱されるか……。

 ただ、腕の振りで弾速が微妙に変わるっぽいな? “撃つ”ってよりは、“投げる”感覚に近い感じか、なるほど。

 それに、スキルとして登録されてシステム的なフォローがされるようになったからか、さっきより大分撃ちやすい。

 なんつーの? 「初めて乗る自転車」に補助輪が付いたっての? 無意識にやっても撃ち出しが凄い安定する。

 後は……これを、俺が上手く使えるかどうかって話だ。


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― 新着の感想 ―
[一言] 後にかめ◯め波と呼ばれる奥義誕生の瞬間である。なんてね 殺傷力を突き詰めるならかめ◯め波より気◯斬か・・・!?
[一言] 魔法生成!? 何かニャンダフルなの来ましたね♪ 雷扱えて投擲得意そうだから、電気投網とか電撃ダーツとかどうですかね? 魔砲拳。 イメージさえできれば、後ろ脚で魔力の毬球を生成して尻尾で払う…
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