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6話「邪教討伐?正規の教会にケンカを売る」

『仲間』。


 いい響きだが、俺は孤高とソロ活動がよく似合う男 『レパード・バクスター』。


 仲間の力に頼るようでは、一人前の勇者とは言えないだろう。


 【邪教集団討伐】という安直且つ貧乏臭そうな初クエスト。


 だが、実際は金貨50枚(現在社会において15億円に相当)という破格の報奨金のお陰で欲の皮の突っ張ったクラスメイトだけでなく他のクラスの奴らまでが集合場所の校門前に群がっていた。


 そして、その烏合の衆共は気の合った奴や使えそうと思った奴同士で、次々と即席のパーティを決めていく。


 そんな浮ついた奴らの様子を横目で見て、俺はニヒルに笑いながら孤高を気取る。


 校門の片隅で1人でニヤニヤ笑っている不審者のような男を気味悪がって、誰も俺に声を掛けてくれないという悪循環に陥っているだけなのだが、俺はソロ活動が似合う男なので気にしない。



(―――しかし孤高を愛する俺だが、麗しのエリスの動向だけはチェックせねば………て、あいつ誰だ?

 あんなスカした野郎共に目を付けられていたのか。ここは俺が出張って、あの野郎共を挽肉(ミンチ)にして校舎裏に…!)



 ちょっとした隙に、変な虫が寄り付いて来ているのを見て、害虫を踏み潰そうと俺は立ち上がる。


 絶世の美女に群がる害虫は即座に排除せねばならないので、当然の措置というべきだろう。


 幸いな事に悪役令嬢(エリス)は声を掛けてくる下心満載の男子生徒共を片っ端から断っている為、俺の心配は杞憂となっていた。



(ここまで頑なに害虫(スカした男子)共のお誘いを断っていると言う事は、俺が声を掛けるのを待っているに違いない。

 ここはイケメン度を150倍に出力を上げて、胡散臭いクエストなんぞ放っぽり出してベッドへ誘わねば……!)



 孤高を愛する俺だが、エリスが相手なら孤高なんぞゴミ箱に捨てても悔いは無い。


 そう決断すると俺はソロ活動の看板を放り投げて、エリスに声を掛けようと近づく。


 しかし、俺が声を掛ける寸前に、横から邪魔が入った。



「うぇーい、レパード!どうした、そんな所でボッチを決め込んで?

 陰キャなんてモテねえぞ?俺と一緒に女をナンパしまくりハメまくりしようぜ!」


「黙れ、下衆野郎が」



 陽キャ仕草の下衆野郎が、両手に女子生徒を抱きかかえて俺に話し掛けてくる。


 しかも女子生徒達の胸や尻を揉みながら、うぇいうぇい言ってる姿はおぞましき陽キャそのものだ。


 この陽キャは、今回の胡散臭いクエストを俺に紹介して来た盗賊兼情報屋の『サーハン・ジャベラ・サリバン』。


 改めて見ると、けっこう甘いマスクに爽(さわ)やかな笑顔でセクハラ三昧しており、俺と女の敵に相応しい下衆っぷりだ。



「何を辛気臭(しんきくさ)い顔してるんだよ、お前は。初クエストの出陣祝いだ。盛大に触りまくりキスしまくり、クエスト達成後には、ハメまくろうぜ!」


「やかましい!お前、こいつら全員連れて行くつもりか?こんな大所帯じゃ、いくら賞金の高いクエストでも、一人金貨1枚にもなりゃしねえだろうが。何考えてやがる!」


「こんだけ大所帯なら、道中で奇襲を受けたり襲おうと思う奴自体が居なくなるだろ?どうせ、帰りはこの内の何人が残ってるのか判らんしな。

 どうせなら、触りまくりハメまくりの道中を楽しもうぜ!」



 相変わらず爽(さわ)やかな笑顔を浮かべてトチ狂った事を言っているが、サーハンの発想が下衆なのは判った。 


 最初に警戒した通り、こいつは下衆野郎だ。


 こんな下衆野郎(サーハン)に構(かま)っているヒマなど無い。


 改めて悪役令嬢(エリス)にベッドインのお誘いをしようと思ったら、既にその場に居なかった。


 きっと俺の顔を見るのが恥ずかしくて、雲隠れしたに違いない。


 まぁ道中、周りが触りまくりハメまくりなら、俺も悪役令嬢(エリス)と触りまくりハメまくりが出来る可能性が高いというものだ。


 そう期待に胸を膨らませながら、俺達はクエストの目的地へと出発した。



---------------------------半日後、うっそうと茂る森林の中の教会へ---------------------------------



「邪教集団の本拠地かと思ったら、ずいぶん立派な教会じゃねえかよ。大都市の大聖堂よりも金掛かってるんじゃねえのか、これ?」



 うっそうと茂(しげ)る森の中に密やかと言うには派手過ぎる大きな教会が一棟だけドンと建っていた。


 磨かれたような新品同様の外壁に煌(きら)びやかなステンドグラス、教会の頂にはどう見ても純金の巨大な十字架が取り付けられていた。


 外見だけでも相当な金額がかかっていると見える場違いな荘厳性がある教会だ。



「邪教集団の住処って割に、随分羽振りが良さそうだな。てか、教会の入り口の門に正規のヴィーゼル神聖教会の紋章まで描かれているぜ?

 ここ本当は、神聖教会じゃねえのか?」


「まあ、金貨50枚の高額クエストだからな。案外、成金のカルト集団かもしれん」


「確かにカルトも邪教も似たようなもんだしな。要は、怪しい新興宗教の討伐って事かよ」


「静かに。教会の傍(そば)に人影が見えるぞ」



 下衆野郎(サーハン)が音を立てるなと小声で注意を喚起(かんき)するが、陽キャの宿命か、うぇいうぇいとジェスチャーが鬱陶(うっとう)しいので静かにもクソも無い。


 案の定、鬱陶(うっとう)しいジェスチャーで隠密性(おんみつせい)皆無(かいむ)な動きに、にわかに見張りの僧兵たちが下衆野郎(サーハン)に気付いたのか、指を差して「曲者!」「誰か居るぞ!?」といった怒号が聞こえ始める。



「うえぃうぇい言いながら発見される偵察とは、なかなか珍しいというかアホみたいな展開だな。

まぁ、自業自得だ。うぇいしながら敵を撃退してみせろ」


「ハンサムな俺は戦いとか殴り合いとか泥臭(どろくさ)いのは不向きなんだよ!こういう荒事はお前の領分だろ?代わりに戦ってくれたら、この女を触り放題、ハメ放題にしてやる!」


「お断りだ」



 さっきまで「愛している」だの「可愛い」だのと乳繰り合っていたセフレの女子生徒を、敵に襲われると判断したら、女をハメ放題にしてやると躊躇(ちゅうちょ)なく言い放つ。


 下衆なイケメンという新境地を切り開く下衆野郎だが、悪役令嬢(エリス)という心に決めた女が居る以上、ハメ放題の女などに引っ掛かる俺ではない。


 必死に懇願(こんがん)する下衆野郎(サーハン)を見捨て、その場から逃げる段取りを始めるが、女を見捨ててハメ放題にされる危険を察知(さっち)した女子生徒は下衆野郎(サーハン)の下衆な本心を知って死なばもろともと大声で居場所を判るように叫び始めた。



「いやぁああああああ!人の乳揉んどいて何がハメ放題よ!死ね、この女の敵!」


「馬鹿、黙れクソ女!乳揉んだくらいで俺の女気取りすんなよ、ビッチめ!」



浅ましい男女の戦いが繰り広げられる中、気付いたら見張りの僧兵達が下衆野郎の痴話ケンカを発見し、こちらに向かってくるのが見えた。



「神聖な教会の前で女とイチャつくとは不届き千万!獄門貼り付けの上で、串刺しにて火炙りにしてやるわ!」


「見張りをしていたら我らと神の敵が出て来たわ!神よ、この不届き者に呪いあれ!」



憎悪を撒き散らしながら曲者討伐を叫ぶ僧兵達。


あの殺意の量なら、下衆野郎(サーハン)を躊躇(ちゅうちょ)無く滅多刺しにしてくれるだろうと期待していたら、何故か僧兵達はターゲットを俺に絞って、斬りかかってきた。



「何をする!?お前らの敵は、あの下衆野郎だろ!」



トチ狂った僧兵達の目を覚まそうと、懇切丁寧に下衆野郎(ターゲット)を教えるが彼らは執拗に俺を攻めてくる。



「クソ面倒臭ぇ、死ね!」



俺は逃げるのを止めると振り向きざまに剣を大振りする。


ハンマーを持った僧兵が首を叩き斬られて転倒する。



「おのれ、女の敵!貴様のような下衆は神の名の元に……!」


「だから相手は俺じゃなくて、こっちの下衆野郎(サーハン)だって言ってるだろが!」



そう言いながら袈裟懸(けさが)けで2人目の僧兵を斬り捨てる。


血を噴き出しながら倒れる僧兵を見ながら俺は違和感に気付く。



「こいつら、正規のヴィーゼル正教の僧兵だぜ?着ていた鎧も正規のモノだしな」


「クエストは邪教討伐だって言うけど、ヴィーゼル正教の僧兵達がこんな辺ぴな教会で見張りとか、胡散臭いわね?」



元々、邪教討伐に金貨50枚(15億円相当)という報奨金が掛けられているという時点で異常なクエストだが、益々異常性が増してきた。


邪教と言いつつ実際には正規の教会が絡んでいて、それを討伐しろと言っているのだ。


常識外れの大金を報奨金として掛けられている状態を見ると厄介事の臭い、裏のある面倒事にしか見えない。


悪役令嬢(エリス)もキナ臭さを感じて、形のいい眉を顰める。



「まぁ、正規の教会の僧兵を2人も叩き斬っちまった訳だし、言い訳を考えるのも面倒臭いな。知らん振りして、全員皆殺しでも構わんだろ」


「正規の教会ってのがヤバいのよ。力押しだけで何とかなるような組織じゃないわ」


「学校からは正式なクエストとして認定してるんだろ?なら邪教認定した学校の責任にすりゃいい」


「大雑把で適当ね。学校が役人根性を出して知らぬ存ぜぬを主張したら、あの教官連中が貴方を守ると思う?」


「率先して見捨てにかかるだろうな。生徒の命なんざ空気より軽いって考えてるだろうし」


「そういう事よ。あまり軽率な動きをすることは控えなさい」



悪役令嬢(エリス)に自重しろと言われてしまっては仕方ない。


とは言えど、邪教討伐でヴィーゼル正教の教会に殴り込みを掛けて自重もクソも無い。


僧兵を殺しておいて、事務手続きのミスや確認ミスで済ませられる話にはならないだろう。


面倒な事になったと思いつつも、事務手続きのミスで金貨50枚(15億円相当)なんて報奨金を出すのか?という疑問も同時に浮かぶ俺であった。

毎日21:00頃に1話投稿します。

次回7話は明日投稿予定ですのでお楽しみに。

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