5話「ブラック職業「勇者」の悲哀」
――――――保健室の出来事から、翌日。
変態教官との死闘で【禁断の技】を使った事により、頭髪がマダラ模様のファンキーなハゲ頭となってしまった俺こと『レパード・バクスター』。
こんなこっ恥ずかしい格好で教室に入るとなると、さぞやクラス内で好奇の目で見られるだろう。
(もしかしたら入学早々、不良に目を付けられて校舎裏に呼ばれ、散々コケにされた挙句にイジメの対象になるかもしれない)
フサフサ頭のチンピラ生徒が俺の少ない髪をむしり取ったり、全身赤色でペイントした未開民族の生徒が未開の言語で俺を小馬鹿にする情景が目に浮かぶ。
(まぁ、そうなったら不良共を挽肉にして校舎裏に穴を掘って死体を埋めた上で、何食わぬ顔で授業を受けるだけだ)
高速思考で0.1秒で完全犯罪を計画する俺。
(………まあ、そんなどうでもいい事より問題は悪役令嬢がどんな反応をするかだな)
保健室では「天然素材の俺が素敵」と言っていたので、教室に入った途端、ウットリしながら俺にチューをしてくる可能性がある。
逆に〝女心と秋の空〟という格言があるように、今日になってハゲをキモそうに見る可能性もある。
その情景を思い浮かべるだけで、俺の胸は張り裂さけんばかりになる。
そんな思春期特有の揺れ動く乙女心を胸に教室に入った訳だが、俺の迷いは教室に入って吹き飛んだ。
オドオドと気弱な女子生徒の如く教室に入ると――――――
全身イレズミだらけのヤクザめいた男子生徒が、タバコを10本同時に吹かしながら机で半丁博打をしていた。
一方で、顔面をピアスだらけにした未開の土人のような女子生徒が毒々しい液体でネイルを塗って、ゲハゲハとお歯黒丸出しで笑っていた。
――――――どう見ても堅気と思えぬクラスメイト達が、教室に蔓延っていたのである。
初授業では変態教官の圧倒的なキモさばかりに目が行っていたが、クラスメイト共も負けず劣らずの中々のキモさだ。
そんな奴らばかりのお陰で、俺のマダラ模様のハゲもクラスの中に埋没して特に目立たなかった。
そんな訳で、清々しい気分で俺はクラスに溶け込む事が出来た。
――――――――――授業二日目 座学―――――――――――
「勇者と聞けば、ドラゴン退治や邪神を倒して世界を救う救世主みたいなのを漠然と思い描く人が多いわね。
その褒賞として、王様から地位と名誉と富を得て贅沢三昧。
その肩書きと財力に釣られて美少女達が、ホイホイ寄って来てハーレム三昧。
そんな浮世離れした職業を夢見て、この学校の敷居を跨ぐ生徒が実際多いわ」
教室で教鞭をとっているのは、『ノエル・ヴァイトリング』(30歳・既婚・暗殺者)。
如何にもやり手のキャリアウーマンと言った出で立ちの凛とした女教師だが、職業はヤクザである。
何故、女ヤクザが学校で生徒を相手に授業をしているのか?
最初はチンピラの罰ゲームで教師の真似事でもやっているのかと思ったが、一応ヤクザの上級職(?)でマフィア幹部の一人らしい。
十数カ国の外国語をマスターしているインテリ・ヤクザで、各国の犯罪組織との各種違法取引で頭角を現した女傑とのことだ。
《哲学する盗っ人》と呼ばれるほど学問に通じた珍しいタイプのヤクザだが結局、学問とは無縁のチンピラ共とはソリが合わずに教員職へと左遷させられたらしい。
―――と言う話を、聞いてもいないのに隣の机に座っているチャラ男から聞かされた。
ヤクザの左遷先という時点でアレな学校という事を再認識させられるが、誰も気にした風も無く授業は進む。
「実際に莫大な富と名声を手に入れたセレブな勇者もいるけど、そんな成金は勇者稼業をしている数万人と言われる内のほんの一握りよ。
大抵の勇者達は人目に付くことも無く、野原やダンジョンで雑魚モンスターを相手に日々、僅わずかな小銭を稼いで細々と生活しているのが実情ね」
(大金稼いだり、王様からちやほやされたり、ハーレムで爛れた生活したりと青少年の妄想の限りを尽くさせる話にすりゃ盛り上がるのにな。
なぜにロクでもない妙にリアルな現実を突きつけて幻滅させるような話をしてるんだ、このヤクザは?)
「まぁ、そんな侘しい生活を送ることを強いられる勇者のタマゴ達に、少しでも生き残る方法や生活していける術を教える慈善公共事業、それがこの学校の役割よ」
(ヤクザが公共や慈善を語るか…、笑う所か?だが今、笑ったらドスで指と舌を切り取られるかもしれんし、黙っとくか………)
「さっきも言った通り、勇者は数万人と言われる供給過剰、飽和状態の職業よ。
替えが幾らでも効くから使い捨てなんて当たり前だし、報酬金未払いなんてケースもザラにあるわ。
夢はあるけど、夢で食っていくには世知辛過ぎる商売ね」
(エリスのケツを追いかけて入学しのたはいいが、決定的に人生の選択肢を間違ったか?
まぁ、エリスと結婚出来るなら誤差の範疇ではあるが…、思った以上にひでぇ学校だな、ここは)
「さて、そこのチャラ男………もとい、サーハン君に質問。 勇者にとって、最も重要なモノが何か判る?」
「やはり《努力》《友情》《勝利》ですかね?
修行してレベルアップ、そして友情パワーで悪をブチのめし、チームワークでモンスターやヤクザなどの社会のゴミを袋叩きにして得る勝利!
《努力》《友情》《勝利》が揃えば、どんな困難や強敵にも勝てると思います!」
「努力や友情程度で金が稼げるのなら、その辺の社畜だって大金持ちよ。
群れるだけが取り柄の仲間と組んでも、稼ぎなんてほとんど無いわよ?
団体行動やチームワークが好きなら今すぐ退学届を出して、普通の学校に通って社畜になる事をお勧めするわ」
女ヤクザが指名したチャラ男、もといサーハンという名の男子生徒が、やたら物騒な努力と友情を強調するが、ヤクザは無慈悲に適性が無いから社畜になれと切り捨てる。
入学する前に判断すべき適性を、高額の入学料をふんだくってから適性なしと放り捨てるとは流石ヤクザだ。
(まあ、女ヤクザの前でヤクザを袋叩きとか言っている時点で、こいつはどんな職も適性が無さそうだがな)
「じゃあ、そこのハゲ………もとい、レパード君に同じ質問をするわ。 勇者にとって、最も重要なモノは何かしら?」
「………コネと人脈ですかね? コネがあれば非合法な仕事でも役所が忖度してくれるだろうし、人脈があればヤクザからでも低金利で借金が可能と思いますので」
ヤクザからハゲと呼ばれた程度で動揺するほど、俺の心はヤワではない。
それとなく体制批判を織り交ぜて、咄嗟に模範解答をする俺。
反社会・非合法組織であるマフィアの元幹部なので、この回答は評価ポイントを稼げるはずだ。
「残念。
いいところは突いているけど、余程の強力な有力者とのパイプでもない限り、コネも人脈もクソの役にも立たないわよ。
実力があっても仕事が無ければ、職業安定所で惨めな転職をするしか無いわ。
旨味のある仕事を回してくれるスポンサーを得て、初めて金回りが良くなるのよ。
まぁ、そういう段階になると社畜がヒイヒイ言いながら身を粉にして働く年収の数倍の金が1日で手に入る美味しい職業に早変わりするんだけどね」
「………要は、スポンサーを見つけなけりゃまともなクエスト一つ回って来ないって事ですか?」
「そうよ。仕事の斡旋をしてもらうには、決定権を持つスポンサーに気に入られるか、旨味のある情報や儲け話を持って行かない限り、デカい仕事を回してもらえないわ。
こう言うと枕営業とか勘違いするビッ〇生徒が必ず居るけど、スポンサーも若い女なんて喰いまくりハメまくりだから、枕なんてした所であたら処女を散らすだけよ、止めておきなさい。
………て、やだ。若くてピチピチの女教師が〇ッチだのハメまくりだの、はしたない言葉を使ってしまったわ。
私、恥ずかしい………」
三十路の女ヤクザが恥ずかしがりながら口ごもったところで、麻〇のやり過ぎで意識が混濁しているだけにしか見えないが、下手に指摘するとリンチされた挙句、海に沈まされかねない。
有力スポンサーをどう手懐ずけるか等々、聞きたい事はまだまだ山のようにあるが、カマトトぶった〇薬中毒者を刺激するのは得策では無いと判断し、一呼吸おいて質問を切り上げる事にした。
-------------------------------5分後-------------------------------
「―――――勇者稼業でも、ランク分けがあるわ。
A〜E級の一般レベルと、S級と呼ばれるトップランカーの勇者。
武術・魔術が一通り使えて、ようやくE級。
そのE級は身分も扱いも最低で、安い報酬で長時間コキ使われる派遣勇者と呼ばれているわ」
麻薬の効果が切れたのか、カマトトぶった年増の麻薬中毒者は5分後には何事も無かったかのように授業を再開する。
(相変わらず世知辛い内容だな…。低賃金で殺し合え?闇バイトよりも悪質じゃねーかよ。本当に公共の学校か?)
大人しく授業を聞いていた無頼漢のような生徒共も、その勇者という職業のアレ具合を疑問視し、入学して騙されたと騒ぎ始める。
全身イレズミだらけの暴力団のような男子生徒が、机を放り投げて怒鳴り散らす。
「ふざけんな!手前ぇ、『ピー(放送禁止用語)』して風俗に沈めたるわ、クソヤクザが!」
「হে ঈশ্বর, এই মহিলার মগজগুলো টয়লেটে ফেলে দাও, তার উপর মল মাখিয়ে শুয়োরদের খেতে দাও!」
暗黒教団の修道女らしい女子生徒が怪しげな呪いのグッズを取り出して、狂ったように未知の言語で呪詛を叫び出す。
だが、女ヤクザは気にした風もなく授業を続ける。
「そして、実績を着けてランクを上げて、C級からいわゆる正規勇者って呼ばれるようになるわね。
そこから飛躍的に地位と収入が上がるようになるの。
各種保健や手当ても充実しているし、公共施設の優先パスポートも格安で手に入る。
E級と比較するだけ無駄ってくらいに高待遇になるわ」
(要はC級以上の正規勇者になれば、安定した生活で安心しながら殺し合いが出来るって訳か……)
高収入・高待遇の話が出た途端、放送禁止用語を垂れ流していた暴力団男は、軽薄な笑みを浮かべながら椅子に座り直して大声で言う。
「最初からそう言わんかい、ボケ!危うく、おのれの頭カチ割るところだったわ」
「ধন্যবাদ ঈশ্বর! কিন্তু এই মহিলাকে চিরকালের জন্য অভিশাপ দিন!」
発狂して呪詛を叫んでいた下っ端修道女は、憑き物が落ちたかのように暗黒神に感謝の祈りを捧げ始めた。
実に多様性に満ちたクラスメイト共だが、暴力団や邪教の修道女が勇者学校に入学できている事自体、この学校の選考基準に致命的な欠陥があるのでは? と感じる。
「そしてS級と呼ばれる勇者は、一つ仕事クエストをこなせば豪邸が一軒建つ程度の収入が軽く手に入るってワケ。 もっともトップクラスの勇者の仕事は、ランク下とは内容が大きく異なってくるけどね」
女ヤクザはそう言いながら、おもむろに懐からタバコを取り出して吸い始めた。
(さすがは、ヤクザ。授業中に喫煙とは、グレた教師だ)
「S級になると、戦場に出て敵と正面から斬り合うようなチャチな仕事はほとんど無くなるわ。
まぁ、明日の生活の糧すら覚束かない学生のあなた達がS級の仕事内容を知る必要も無いけどね。
先ずは最底辺のE級になる為の武術・魔術をこなせるようになる事、そして仕事クエストを得る為のノウハウを実戦方式で学ぶ事。
学校のカリキュラムを進めて、一流の派遣勇者になる事ね」
(高収入・好待遇を餌に情弱な生徒を釣るか…。
詐欺の常套句だが、トップになれば豪邸でハーレム三昧できると言われて有頂天になるアホも居るだろう……。
てか、ほとんどの奴が目を煌めかせてパートになりたがってるわ。
手遅れだな、このクラスメイト共は)
そこまで考えて、一瞬思考が止まる俺。
(――――こんな胡散臭い学校に入った俺が言うのもなんだが、エリスは何を考えてこの学校に入ったんだ?)
幼年学校では、ずば抜けた頭脳と戦闘能力で将来を嘱望されていた才女が輝ける未来を蹴飛ばして、派遣勇者になってキラキラと輝きながら人生を爆死させる夢でも見ているのだろうか?
(そりゃ、あり得んな。数々の政敵共を叩き潰していったあの冷酷無比な手腕と人間離れした謀略力。
それに、未来予測めいた思考、行動力で巨万の富と権力を手に入れた稀代の悪役令嬢が、こんなアレな学校の口車に引っかかるとも思えん)
まぁ元々、行動が予測不能な上に解剖やら研究など言動が狂ったとしか思えない突飛でキュートな女の子だ。
授業中に悪役令嬢の姿に目を向けると、丁度目が合った。
悪役令嬢はニンマリと邪悪な笑みを浮かべて俺を見返すが、授業中に目が合うなどきっと両想いに違いない。
この調子なら放課後、お茶に誘って夜には念願のベッドインを果たせるのでは?と期待でハァハァと呼吸が荒くなる俺。
《妄想中》『私……、私……、あなたとベッドで〝ピー(放送禁止用語)〟する為に生まれてきたの!抱いて!!』(赤面する悪役令嬢)
《リアル》「フゥゥゥゥウウウウウウウウーーーーーーーーーーーーーーーー!」(荒い鼻息)
俺の鼻息で机の上のノートが強風を受けたように激しくめくれ上がり、ペンが四方八方に飛び散り、俺の少ない髪の毛が激しく抜け落ちる。
それを見た周囲の男子女子学生達が、怪異でも見たかのように不審そうに人の顔をジロジロ見るが、こっちはそれどころでは無い。
(妄想とは言え、たった一言で俺をここまでトキメかせるとは【最強】の名は伊達じゃない。
――――――さすが俺の女(になる予定の女)だ)
延々と続く勇者という救いのない職業の授業にうんざりして、妄想に花開かせる俺。
だが、俺が妄想で楽しんでいる間にも授業は続く。
ヤクザの説明がひと段落着くと、丸々と太ったデブだが明るい女子生徒が元気良く女ヤクザに質問していた。
「ノエル教官、質問! 教官の勇者としてのランクって何級ですか?」
「私のランク? 私はS級よ」
「凄い! 鬼女(既婚女性)のヤクザでもセレブになれるんだ! じゃあ、変態教官は?」
「私はセレブではあるけど、ヤクザじゃないわよ?
今度ヤクザ呼ばわりしたら、その可愛い首を問答無用でヘシ折るから言動には注意しなさい。
ちなみに、あの変態教官はB級ね」
ニコニコ笑いながら物騒な受け応えをする女教師ヤクザに対して、デブ女は驚きながら更に質問をする。
「え………?あのデタラメな強さの変態教師がB級なんですか? ランクおかしくないですか、それって?」
「当然よ。 言ったでしょう?
S級になると、敵と正面から斬り合うような安直な仕事は無くなるって。
ランクが上がるにつれて純粋な戦闘能力では無く、総合的な技能・知識でランク分けがされるようになるのよ」
「でも、あの教官って神や魔王すら輪切りにする『人間国宝』って呼ばれているんでしょ? 伝説の勇者クラスの戦闘力でランクがB級っておかしくないですか?」
「確かに、あの変態教官は戦闘力だけなら人類最強よ。 と言うか、人類を逸脱した強さと言うべきね。
でも、単なる戦闘バカとも言えるわ。 要は、魔王退治とか限定された仕事しか出来ない『使い勝手の悪い勇者』って評価なワケよ」
神だろうが魔王だろうが、敵対する全てを輪切りにする伝説の変態勇者が、意外に低ランクだったことに驚く生徒達。
その変態にクラス全員が全滅の憂き目にあって、そのデタラメな強さを身をもって知らされたのだから、当然と言えるだろう。
(【人間国宝】と持ち上げられても、実質は低評価。キモいしアレな教官だが、可哀想かも。
…………いや、メッタ刺しにされた俺の方が可哀想か)
個人的には恨み骨髄だが、その恨みを忘れて憐憫の情を抱いてしまう俺。
が、そんな授業内容に困惑した顔を浮かべるクラスメイト共を余所に、愛しの悪役令嬢が質問を繰り出す。
「質問。 S級は『総合的な技能・知識でランク分けがされる』というお話でしたがノエル教官は、どんな仕事で評価されて今のランクになったのですか?」
「まぁ、これから勇者になろうって学生には、どんな仕事で荒稼ぎをして評価されるのか知りたいと思うのは当然よね。
でも、価値ある有用な情報はタダでは手に入らないわよ? 知りたければ自分で情報を集める事ね」
女ヤクザはそう言いながら、意味ありげな笑みを浮かべてその先は答えなかった。
人生の先達として良い事を言ってそうに見えるが、相手は人生裏街道を歩くヤクザだ。
臓器売買やら麻〇密売やら、そんな非合法な仕事に手を染めて荒稼ぎしている可能性は十分ある。
荒稼ぎには興味があるが、闇バイトみたいな稼ぎ方は大抵たいていロクな結果をもたらさない。
どうせなら正々堂々と非合法で荒稼ぎをするオリジナル手法を開拓した方が悪訳令嬢に対してデキる男をアピールできるだろう。
「変態教師の例を挙げた通り、敵と戦って早々に死ぬか、どんなに功績を立ててもせいぜい正規勇者迄が限界で実入りが少ないわよ。
勇者として成功したいのなら情報収集と取捨選択そして、それをどう儲けに繋げるのか知恵と経験を積むことね。
そういった苦労は、色々と良い経験になるわよ。 私もそれで中長期的なスパンで物事を見る視野を身につけたし、麻薬密売ルートの拡販とか応用の効くノウハウも手に入れたしね」
私はヤクザじゃないと否定しておきながら、さらりと犯罪履歴を公表する元マフィア幹部。
どうやら変態教官とは違うベクトルで、頭がおかしい教官のようだ。
「まぁ、貴方たちも楽しみながら勇者稼業をやる事ね。恋も仕事も充実するわよ」
麻薬密売ルートの拡販で、どうやったら恋が充実するのかは知らないが人生は楽しく過ごしている感じは見て取れた。
このヤクザが生徒相手に麻薬を売り込もうが、臓器を奪って転売して荒稼ぎをしようが知った事では無い。
愛しの悪役令嬢を口説き落し、心踊る学校生活を送る算段をつけるとしよう。
――――――――――授業後、教室にて――――――――――
(さて。ロクでもない授業が終わった事だし、放課後エリスをベッドに誘うとしようか……)
「よう、レパードだったっけ?俺と組まねえか?」
授業中、見つめ合いながら邪悪な笑みを浮かべられる仲になった以上、速攻でベッドイン出来るはずと確信してたら、隣の席に座っていたサーハンと呼ばれたチャラ男が声を掛けて来た。
「…………あん?何の話だ?」
悪役令嬢にベッドインの声掛けしようとしたら邪魔された格好なので、自然と険のある反応になってしまう俺。
「まぁ、そう邪険にするなよ。改めて自己紹介するぜ。俺の名は『サーハン・ジャベラ・サリバン』。盗賊で情報屋も兼任しているイケてる男だ。よろしくな!」
爽やかで屈託のない笑顔を浮かべながら気さくに話し掛けてくるサーハン。
一見、好青年らしい印象の立ち振る舞いだが、どうにも胡散臭い笑顔が警戒心を呼ぶ男である。
「お前さんの活躍、見たぜ?ハゲ散らかしながら変態教官を叩きのめす雄姿をよ。
ハゲてメッタ刺しにされたのはアレだが、その強さは本物だ。
その強さにあやかってお前の仲間になってやろうと思ってな」
「俺に仲間は必要ない。そもそも俺をハゲと言う以上、殺されても文句は言えんぞ?」
「なんだ、やっぱりハゲを気にしてたのか。だが、ヤブ医者から聞いたぜ? ハゲが治らない上に、莫大な借金で首も毛も回らないんだろ?」
「……お前、何者だ?返答次第じゃ、校舎裏に穴を掘って貴様をそこに捻じ込む事になるが」
「ケッヘッヘッ、まあそう睨むなよ。俺はお前の為に、お得な情報を提供しに来ただけだ。 その代わりに、パーティを組んで荒稼ぎの手伝いをしてもらうだけさ」
「―――人の研究素材に手を出そうなんて、命知らずね。遺言は決まった?決まり次第、即死魔法を叩き込むけど」
胡散臭い情報屋が俺に胡散臭い話を持ち掛けていると、悪役令嬢が割って入ってきた。
相変わらずキュートな顔で物騒なセリフを吐く悪役だ。
「別にあんたの彼氏を獲って喰おうって訳じゃねえ。高額なクエストの話があるんだが、俺一人じゃ厳しいから仲間にならねぇかってだけだ。結構な額の借金があるんだろ?捗ると思うぜ」
「私に彼氏は居ないわよ。それにお金なら家に幾らでもあるし、借金はこちらで持つからいい条件で解剖したいってだけ。
余計な事を吹き込まれて稼がれるとその分、解剖条件が厳しくなるの。手を引いて頂戴」
「あんたの意向は判ったよ。ただ、授業で言ってたろ?優良なスポンサーの情報と伝手は今の内に入手した方が有利になる。
解剖はその後、じっくりやればいいんじゃねえのか?」
俺の意向を無視して勝手に話が進んでいくが、解剖前提というのは頂けない。
まあ悪役令嬢の事だから、恥ずかしがってベッドインを解剖と言い換えているだけかもしれない。
「クエスト自体は簡単だ。ある邪教集団の討伐で生き死には問わないって話だぜ」
「邪教集団の討伐?そりゃ低賃金そうな安っぽいクエストだな」
「安っぽいが、これが何と報奨が金貨50枚(現実社会において15億円相当)。破格過ぎて大笑いしちまうだろ?」
サーハンが自慢気にクエスト内容をベラベラと喋り出す。
そして、その金額の異常さにクラス中がどよめく。
「ちょっと待て!教室のど真ん中で、何を口走ってんだお前?」
「知られたところで、構やしねえさ。何せ、このクエストで二桁のパーティが全滅してる。
ただの安直なクエストにしちゃ、死に過ぎだと思わねぇか?」
「確かにな。だが、クラス中に知られた以上、後を尾けられたり余計なちょっかい掛けられたり、面倒事だらけになるだろうが」
「後を尾けさせるんだよ。二桁のパーティが全滅してるんだぜ?中には凄腕と言われるプロ集団も含まれてるって話だ。数はどの道、色んな意味で必要だと思うけどな?」
「あまりに数が多すぎると取り分が減るだろ?俺とエリスだけで十分対処可能だと思うがな」
「そうか?死んだ人数を換算すると、前の初授業みたいな変態教官戦みたいなのを想定してるがな」
「あんなアレな奴がそうそう居るかよ。アレ相手なら褒賞が金貨1万枚でも足りんだろ」
「まぁ、確かにな。だが、不安要素は潰しておいた方がいいだろ?」
確かに不確定要素が多すぎるクエストだ。
単なる邪教討伐と言うには破格というか異常過ぎる報奨金と、二桁のパーティ全滅というオマケ付き。
―――つまり、この依頼には金貨50枚でも足りない何かがある。
「………面白い。クエストの内容もだが、そんな金を出すスポンサーとやらの意向も実に奇怪で不可解だ。
あの女ヤクザの話した内容の一端が透けて見えて来たぜ」
「ヒッヒッヒッ、話に乗ってくれるか相棒。それじゃ、セレブになる為に共に戦おうぜ、主にお前がな」
「お前も戦うんだよ、チャラ男。戦力にならない雑魚と判断したら、先ずは貴様から挽肉にして校舎裏に穴を掘って埋めてやるぜ相棒」
信頼と友情に満ちたパーティ結成の宣言で盛り上がる俺とサーハンを冷ややかに見ながら、悪役令嬢は事もなげに宣言した。
「話は決まった?今回、私は戦わないで観戦だけしてるわ。レパードを心ゆく迄、観察するから楽しませてね」
超高額の報奨金というボーナスは美味しいが、悪役令嬢は戦闘不参加、胡散臭さ満載の新しい仲間サーハン、クエスト自体も内容が不穏当・不透明の極みで先行きが不安しかないまま、俺の初クエストは決まった。
次回6話は明日21;00予定です。
是非お楽しみにして頂ければと思います!




