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「黒」が醜悪とされる世界で、怪物と恐れられた皇帝の孤独な夜を、押し強めな辺境伯令嬢が丸ごと愛して夜明けに変えるまで  作者: みこち


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第79話:不滅の愛と、帰る場所

ノクス視点です。

 客間の扉を荒々しく閉め、廊下を足早に渡る。

 先ほど振り払った腕に、なおも残るまとわりつくような不快感が、私の苛立ちを激しくさせていた。


(早く……ロキシーのもとへ……)


 頭にあるのは、ただそれだけだった。

 彼女の自室の扉をノックもそこそこに押し開ける。


「!?……ノクス様?どうかされましたか?」


 突然の訪問に驚きながらも、私を迎えてくれたロキシー。

 言葉を返す時間すら惜しく、私は衝動のままに距離を詰め、華奢な身体を強く腕の中に抱きしめた。


「ノクス様……っ!?」


 急な抱擁にも嫌がるどころか、ロキシーは私の背中にしっかりと腕を回し、力強く抱き締め返してくれた。


 じんわりと伝わってくるあたたかい体温と彼女の香りに、先ほどまでの不快感がみるみる消し飛んでいく。


 腕の中の愛しい存在を確かめるように、そのまま顔を近づけ、吸い寄せられるように唇を重ねた。


「ん……っ」


 一度では足りず、貪るように幾度も熱を分け合っても、この胸の渇きは収まりそうにない。ロキシーも逃がさないとばかりに私の首に腕を回し、応えてくれる。


「っ……ノクス様ったら、一体何があったのですか?」


 長く口づけを交わしたあと、少し息を切らしたロキシーが私の頬を両手で挟み込んで覗き込んできた。


 その美しい瞳に見つめられ、私は息を吐き出しながら先ほど客間で起きた出来事をかみ砕いて伝えた。


 使節団としての面会のはずが、聖女が突然側室にしてほしいと言い出したこと。

 ロキシーを正妃として立てて二人で仲良く支えるという狂気じみた提案をしてきたこと。


 そしてーー腕を掴まれた瞬間に、自分の意思とは無関係に身体の自由を奪われそうになる不気味な感覚があったこと。


「あの女は、自分たちこそがこの世界で決められた運命だとかなんとか言っていたが……」

「……この世界で決められた運命……側室……」


 聞き終えた瞬間、ロキシーの瞳から甘さが消え、「なるほど」とでも言いたげに、何かを考える仕草をした。


「だから私、聖女様と接してから嫌な胸騒ぎが止まらなかったのですわね。まさか側室になりたいと言い出すとは……でも、もし本当にノクス様と聖女様がこの世界で決められた運命の相手だとしても……」


 ロキシーは一度言葉を区切ると、私の両頬を挟んだまま、至近距離で私の目を力強く見つめ言い放った。


「万が一にも、聖女様を選んだりしたら……私、絶対に許しませんからね!」

「……ふっ、当たり前だ。そなた以外の女を選ぶわけがない。きっぱりと断ってそなたに会いに来たのだから」

「当然です!ノクス様のすべては私のものなのですから」


 一切の迷いなく私を自分のものだと断言する彼女の言葉に、私の胸は喜びに震えた。

 

 ーー彼女だけが、私の唯一無二の伴侶だ。


「ああ、そうだ。私の身体も、心も、魂さえも生涯ロキシー……そなただけのものだ」


 私は再び彼女と口付けをするためにロキシーを強く引き寄せた。

 世界が決めた運命など関係ない。私を従わせるのは、私自身の意志と、この手の中にある愛だけだ。


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