第11話:最終日の夜と、愛を刻むキス
ロクサーナ視点です。
一週間に及ぶ夜会も、ついに今夜が最終日。
今夜の私は、三日目に着ていたあの鮮やかな黄色とゴールドのドレスをもう一度身に纏っていた。全く同じドレスを着回すのは社交界のマナーとしてはNGなので、少しだけアレンジを加えている。
お兄様はなぜか昼間から「ロキシー、お前、本当に大丈夫なんだな……? いや、何でもない……」と遠い目でブツブツ呟いていたけれど、そんなの今の私には関係ない。
「ルシウス様……!」
庭園へ飛び込むと、そこには愛しい漆黒の姿があった。
振り返った彼の瞳が、私の黄色のドレスを見た瞬間、息を呑むように優しく揺れる。
「……やはり、そなたにはその色が一番よく似合う」
「ふふ、そうでしょう? 最終日ですもの、ルシウス様に一番似合う私で来たかったのですわ」
そう言って胸を張る私を見て、ルシウス様は愛おしさを堪えきれないといった風に、ふっと目を細めて歩み寄ってきた。
「今夜もちゃんとご用意しましたわ!」
私が誇らしげに差し出したのは、シルクに包まれた特製の極厚ローストビーフ。今夜は料理長に最高級の部位を焼いてもらったのだ。
ルシウス様はそれを受け取ると、早々にテーブルに置き、そのまま私を強い力で引き寄せた。
「っ、ルシウス様……?」
「肉は後だ。一週間の夜会が終われば、そなたは北の辺境へ帰ってしまう。……そんなこと、私が許すと思うか?」
耳元で囁かれる、低くて少し強引な声。
見上げる彼の漆黒の瞳には、庭園のどんな魔導ランプの光よりも深く、情熱と独占欲が渦巻いていた。
「私はそなたを絶対に離さない。国中の男を敵に回してでも、そなたを私のものにする。……ロクサーナ、私と『婚約』して、ずっと私の側にいてくれるか?」
それは、私がずっと待ち望んでいた言葉だった。
ルシウス様に婚約者がいないどころか、彼の方から離さないと、こんなにも激しく求めてくれている。
「はい……! 喜んで、あなたの婚約者になりますわ! ヴァルハイトの女に二言はありません。世界中で、私が愛しいと思う殿方は、ルシウス様だけです!」
満面の笑みで答えた瞬間、ルシウス様の顔が、どこか切なげに、そして至福の表情へと変わった。
「……ああ、本当に愛おしい」
気づけば、彼の手のひらが私の後頭部を優しく、けれど拒絶を許さない力強さで固定していた。
ゆっくりと、けれど確実に重なっていく、美しい顔。
「っ……」
触れ合った唇は、驚くほど熱かった。
夜風を遮るように彼に深く抱きしめられ、唇を何度も、角度を変えて深く貪られる。息が詰まるほどの、激しくて甘い口づけ。心臓が壊れてしまいそうなほどの衝撃に、私の頭は真っ白に染まっていく。




