表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼ノ目 六節・旧国、溺るる虚像  作者: 三Ⅲ三Ⅲ三
中篇・菊花開、霽月の徒路(全50話)
PR
62/71

六十二話 威勢

そういった事を見ず知らずの他人にされた事がないのだ。分かりやすく単純だ。まぁ、あまりにも扱い易いと思わず心配になってしまう事も暫々、無くはないのだが。

 相手が此方の胸ぐらを掴み、振り慣れてなんかいやしない、受けたところで大して痛くも(かゆ)くもありゃしない拳を受ければ、それが合図となる。

 此方も振るい返す、理由が生まれる。

 見ず知らずの他人に向かって拳を振るえる、最強の言い訳を手に入れる事が出来るのだから、だから与市はそれが()められた試しがない。

 (わざ)とらしく(わめ)き立てでもすれば、勿論余計に、だ。近所の店の連中に嫌な顔をされたってお(かま)いなしだ。

 棚が壊れてしまったなり、椅子が使い物にならなくなった。予備のない、店先に(かか)げる暖簾(のれん)が泥んこ(まみ)れになってしまっただの、どうしてくれるんだ、なんて文句を(いく)ら言われた(ところ)で、怒り(ぞん)だろうにと(はす)(かま)えて飄々とやり過ごすのが(つね)である。

 だって仕方がないだろう、金だけなら五万(ごまん)とあるのだ。

 十数年前にほんの気紛れで拾ってやった連中の中に、金勘定の仕方を教えてやった与市よりもずっと賢い奴が紛れ込んでいた。

 質で売り(さば)けた金で、子どもが八人で()むだけにしてはそこそこ立派な家を買うも、しかし長く同じ場所に居着く習慣があまりなく、家へと帰る頻度も少なかった与市は年長者である自分に代わり、最年少であった寛吉(かんきち)に金の管理を任せることとした。

 それで、ほんの一月(ひとつき)ほど家を留守にして帰ってみれば、食べ(ざか)りな七人分は(たくわ)えが減っているものと思っていたものが、どういうわけか増えていたのだ。

 自分が外でどれだけ好き勝手呑んで食ってとしても、一向に減る(きざ)しを見せてくれずに早……、早十二年が経つ。

 弁償だなんだと騒がれたとしても(はら)えるモノがあるのだからどうとでもなってしまう。(しま)いにはここいら一帯じゃそこそこ名も顔も知れた存在と今や与市はなってしまっているのだから、本当に人生というのは何が起こるか読めたものじゃない。

 思いがけず楽が出来る分には恵まれてしまっている。



「そういや(つつみ)のおやっさんが兄貴に頼みたい事があるとかなんとかって言ってやしたよ。」

 家の中でも図体ばかりが矢鱈(やたら)とデカく(そだ)ってしまったものだから女に(おび)えられるばかりで、惚れた腫れただのに無縁な丸刈り頭の晋助が、ふとした拍子にとんでもない発言をかましてくるものだから与市は(あわ)てふためかずには居られなかった。思わず、火を付けて咥えたばかりの煙管(きせる)をそのまま丸ごと、受け止めることも出来ずに地面に落としてしまう始末だ。

「バカ野郎、晋助オメェッ⁉︎

 その口振りは昨日今日のモンじゃねぇだろぉ!」

「へ、へぇっすいやせん……三日前、(ウチ)におさっやんが立ち寄られた時ですねぇ……」

「おめぇさんはよぉぉ⁉︎」

 危なかった、なんて言葉は出てこない。よりによって堤の親父だ、と与市は焦ってしまった。

 ここ数年は商売をする拠点(場所)を変えてしまったからか、姿を直接(おが)むことのなくなった相手ではあるが、昔世話になった相手である事は違いない。

 阿呆(あほ)ぉ、なんて口にしつつ、自分よりも上背のある弟分が自ら屈んで差し出してくる頭を一つ叩くも、しかし堤の親父に自分が世話になってた頃は()だ弟分達は世渡りのなにも知らぬ者が大半であり。()ずっぱりの多かったのに連れ歩くなんて事はしなかったものだから、与市が世話になったと一方的に言いはしても、それがどの程度であるかは彼等は知らなかったのだろう、と思い(いた)る。

 ともなれば今この時、頭を叩いたりといった行為は多少筋違いになってしまいそうだとも気付くのだが、まぁ、仕出(しで)かしてしまったものを今更なかった事になどは出来っこない。

 であるものだから謝罪の言葉なんてモノは浮かぶわけもなく。日課のような品定めを(おろそ)かにすることで与市は自分に用があるという恩人が世話になっている宿を探すこととなったのだった。




全文には性的暴行描写が含まれるため、

以下pixivでのマイピク限定公開となります。

https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=24744251

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ