若さって何だ
「恵理、なんか親父くさいよ」
机に新聞を広げる恵理に、可南子は呆れたように言った。
恵理は可南子を新聞を見ていたそのままの表情で見る。
「何言ってんのよ。私がこの新聞を学校に持ってくるまでにどれだけ苦労したと思ってるの。父さんとの熱き争奪戦を勝ち抜いてきたのよ」
「いや、家で読めばいいじゃない」
「だから、みんなして読むんだから、朝の少ない時間の中では読みきれないのよ」
「早く起きれば?」
「それができれば苦労はしてないわよ」
「でも、恵理のお父さんが先に読み終わって、恵理がその後の新聞をもらってきた、ということにはならないの?」
「お父さん、読むの遅いんだもん」
「順番にやればいいじゃない。テレビのチャンネルじゃあるまいし」
「新聞は新しいから新聞なのよ! 朝刊は朝に読まなきゃ意味ないのよ!」
「あー、そうですか」
「私はまだ真面目に全国紙読んでるんだからいいじゃない。その言葉、D組のヤツらに言ってあげなよ」
「ヤツら?」
「行ってみる?」
D組の入り口に来た恵理と可南子。
そこからこっそりと教室を覗き込む。
「ほら、柴山と菊池君」
「ヤツらがどうし……」
最後まで可南子は言わなかった。
柴山と菊池に視線を向けて、可南子の目に映ったのは、菊池が新聞を机に広げ、それを覗き込んでいる柴山だった。
このあいだの席替えで、席が隣になってから、彼らは妙に二人でいることが多くなった。
「しかも、あの新聞何だと思う?」
「んー、何だろう、ちょっと普通の新聞と違う感じ?」
恵理の質問に可南子は目を細めて、新聞を見ようとするが、遠いし、隠れていてよく見えなかった。
「競馬新聞よ」
「…………あぁ」
恵理の言葉に、可南子は合点がいった、という顔をした。
そういえば、菊池は競馬が中学の頃から好きだった。
馬券は買えないから、テレビ番組の中継を見て、予想をして楽しんでいるのだ。
レースがあった日は、必ずその話題を熱く語っていたな、と可南子は思い出した。
「思い当たる節ありありでしょ、可南子」
「それにしても、柴山も競馬好きだったんだね。意外」
「いや、ヤツは興味本位なだけだと思うよ」
「あぁ、あんたもよくそうやって、何にでも首つっこむもんね」
可南子は、悪戯っぽい笑みを浮かべて言った。
「………………」
恵理は、可南子を睨みつけていた。




