原点に戻ろう
「エイズが増えてるらしいね」
「若い人の間で増えてるらしいよ。ずっと言ってるよね」
「こんなに言ってるのに、何で気をつけないんだろ」
「どうせ、やりたい放題やってるからだろ」
「……………」
恵理と可南子の会話に入った柴山の言葉に、二人は絶句した。
「あんた、そこまでズバっと言うことないじゃない」
「まぁ、確かに一理あるけどね。なんかもっと大事なものあるだろっていう」
「全くだ。俺は真実を言ったまでだ。ったく、男も女も裏ではやったのやらないだのって話ばかりでうんざりだ。もっと話すことがあるってんだろ!」
「どうした……柴山……」
可南子が目の前の菊池を伺いながら、言った。
「お前ら、人が勉強してる横で、気楽に話してんじゃねぇよ!」
「柴山ー、イライラしたって、この文が読めるわけじゃない……ってか、むしろイライラした方がますますわからなくなるんだから、落ち着きなよ」
恵理が冷えた笑いを浮かべて、柴山と向かい合っている机の上の問題集を指し示した。
「う、うるさい! だいたい、お前らは勉強しなくていいのかよ」
「俺らは、柴山が終わるのを待ってあげてるんじゃないか」
菊池が笑顔で言う。
「……菊池……お前最近性格良くなったよな……」
柴山がひきつった笑みを浮かべて言った。
「そうかい? ありがとう」
「皮肉だっつーの!!」
「いいから柴山、早くやろうよ。兼好法師様も怒っちゃうよ」
恵理が頬をぷっと膨らませてみた。
「あー、俺、こういう暇に任せて文書けるようなヤツらの文章っていまいち理解できなくてなー」
「何庶民派ぶってんの。早くしてー。私、再放送のドラマ見たいんだからー。教えてって言ったの柴山でしょー」
「くそー……」
柴山は渋々、また問題に向かった。




