ハッピーエンドのその後
結婚式=ハッピーエンドという事で、結婚式の後日談です。
晩餐会後、案内されたのは今まで使用していたのとは別の部屋
部屋の中央には大きな寝台が置かれています。
「さあ、ローズマリー様。夜のお支度を・・・」
見るからに熟練の侍女が今夜は仕度を手伝ってくれるそうです。
普段、わたしに付いてくれている若い侍女たちは、早朝からの式の準備などで疲れているだろうという事で、今日は早めに上がらせたとのことでした。
今朝と同じくらい丁寧に体を磨かれ、香油で肌を手入れされ、新しい夜着を着せられました。
胸元のリボンで襟ぐりを調節できるタイプのようで、
「本日はちょっと大胆に、広めにしておきましょうか?」
と、お母様より少し若いぐらいの侍女さん達が楽しそうに言いました。危うく、オフショルダーにされるところでした。
「エドワード様もまもなくいらっしゃると思いますので、お寛ぎなさっていて下さい」
そう言われても、どうすればよいのか分からないので、とりあえず寝台の縁に座りました。
軽く体が沈みこみ、寝心地は良さそうです。
そのまま体を倒すと、寝具からいい香りがします。寝具の柔らかさ、肌触りも最高です。
この寝台で、今夜からエドワード様と一緒だと思うと・・・、
「きゃ~ぁ。はずかしい・・・」
思わず悶えてしまいました。
侍女さんは室内にいないようなので、今のわたしの姿を見られてはいないようで安心しました。
今夜から、エドワード様と一緒・・・・・・。
朝はエドワード様の腕の中で目覚めるのでしょうか・・・・・・。
「おはよう。マリー」
目の前には、ニッコリと微笑みながら朝の挨拶をするエドワード様。
あれ?いつの間にエドワード様の腕の中に・・・・・・?
寝台でエドワード様を待っていて・・・・・・。
「オ・・・オハヨウゴザイマス・・・・・・」
エドワード様を待っている間に寝てしまったようです。
気が付けば、朝?あ、でも、まだ完全には明るくなっていないから夜って事でいいですよね?
そんな思いで、エドワード様を上目遣いで見れば、わたしの考えていることを分かっているようで、
「大丈夫。今日は一日予定は入っていないから、十分時間はある」
と、耳元で囁かれてしまいました。
次に気が付いたときは、日は頭上近くにありました・・・・・・。
結婚式後の慌しい日々が落ち着き、わたしに与えられた公務も難なくこなせるようになった頃、
「この調子なら、私も陛下の視察に付いて行っても大丈夫そうね」
そう言って、王妃様は陛下と共に約一ヵ月半の国内視察へと旅立って行きました。
王妃様の留守の間、わたしが王妃様“代理”として公務を行うことになるわけで・・・。
「結婚式前、王妃様の仕事を代わってやっていたけど、結婚式の準備が忙しいからだと思っていたけど、もしかして、今回のため?」
「『マリーが優秀だから、間に合ったわ』と、おっしゃっていた」
わたしの書いた書類に不備がないか、確認しながらジェームス兄様が答えた。
「・・・・・・」
王妃様が戻って来るまでは、ジェームズ兄様が手伝ってくれることになっているので心強いです。
わたしが王宮で働くきっかけとなった王妃様の庭園ですが、結婚祝いとして王妃様から譲られました。
ただ、王太子妃、そして王妃代理としての公務が忙しく、管理は庭師の方に任せています。
その庭園で先日、リズさんとジミーさん、それにメアリと恋人の門番さんが結婚式を挙げました。
結婚式と言っても、庭園内の東屋で結婚誓約書にサインをするというものですが。
二人にはずいぶんお世話になったので場所を提供しました。もちろん、わたしも立ち会いましたよ。
昨年まではエドワード様のお相手を探すために開かれていたガーデンパーティですが、今年も開催しました。
バラ園に新しいバラを植えたので、それをお披露目したいのと、前回のガーデンパーティの後、友人クリスティーヌの婚約が決まり、そのきっかけがガーデンパーティだったと聞いたからです。
クリスティーヌの友人の方達も、その時に知り合った方とお付き合いを始めたそうで、近いうちに正式に婚約することになるそうです。
夜会が苦手でめったに参加しない方々の新たな出会いの場となるのではないでしょうか?
そんな忙しい日々はあっという間に過ぎていき、気付けば季節は晩秋となっていました。
陛下達も国内視察から無事、お戻りになられました。
やっと、領地に視察旅行に出かけることが出来ました。
馬車だと移動時間がもったいないと、転移装置で。
ここは、以前ジェームス兄様が訪れていた西部の王国領です。
今回の結婚で、エドワード様が公爵位と共に賜ったのです。
本当でしたら半年前、兄様と来る予定でしたが、エドワード様と婚約したことで忙しくなり、実現できなかったのです。
それが、まさかこんな形で、エドワード様と二人で訪れることになるとは思いもしませんでした。
「山の木々の紅葉が素晴らしいですね・・・」
湖の周囲の山々の木々は、赤に分類される色だけでも何種類もあるのです。
「いつもの年と比べて、今年はさらに鮮やかに色づきました。きっと妖精たちがお二人を歓迎しているのでしょう」
そう言ったのは、この城の管理を任されているグレゴリーさんです。グレゴリーさんの一族が代々城の管理をしているそうです。
「ジェームス兄様から妖精伝説があると聞きました」
「はい。人には見えませんが、妖精はこの土地の至るところに住んでいます。この地は以前は小さな王国でした。王国の始祖は、大地の妖精の娘である花の妖精と人との間に生まれた子だといわれています。だからでしょうか。王家の者には不思議な力がありまして、魔法とはちょっと違う力、“妖精の加護”が使えたそうですよ。私も詳しくは知りませんが、城に保管されていた古い書物に書かれているそうで、時々、魔術庁のシオン様がお見えになって調べていらっしゃいますよ」
シオン先生、時々留守にされていたのは、ここにいらしてたからなんですね。
「我々もその書物を見ることはできるかな?」
エドワード様が興味を示されたようです。
「はい。奥の書庫に保管されています。ご案内します」
書庫に続く長い廊下には肖像画が飾られていました。
「こちらにあります絵は、城の修復時に地下の隠し部屋から見つかったものです」
その中の一枚の絵の前で、エドワード様が立ち止まりました。
「やはり驚かれましたか・・・。ジェームス様もシオン様も驚かれていましたから・・・。この絵は王族のなかで最も“妖精の加護”を持っていて“妖精姫”と呼ばれていた、“ローズマリー”王女の絵です」
「あら、わたしと同じ名前なのね」
偶然の一致に嬉しくなってしまいます。
「名前まで一緒とは・・・・・・。マリー、よく見てごらん。この絵、髪の毛の色は違うが、君に瓜二つだ・・・」
グレゴリーさんが頷きます。
「はい。ジェームス様から伺ってはいましたが、まさかここまでそっくりだとは思ってもみませんでした」
「自分ではよく分かりませんが・・・・・・」
深緑色のドレスを着た女性の姿は自愛に満ちた顔で微笑んでいます。
どこか懐かしいと感じるのは、自分に似ているからでしょうか?
『おかえりなさい・・・・・・』
何処からか、そう、聞こえてきました。
マリーとエドワード、無事、結婚できましたので、この話も今回で完結とさせていただきます。
約2年。思っていたより多くの方に読んでいただけたことを嬉しく思っております。ブックマーク登録して下さった方、感想を送って頂いた方、本当にありがとうございます。とても励みになりました。
今後、二人のその後、本編では書けなかった周囲の人達のことを番外編といった形で書いていければと思っています。
新しい話も考えていますので、これからもよろしくお願いします。




