結婚式
遅くなりました。
結婚式当日の話ですが、マリー以外の複数の視点で話は進みます。
*メアリ*
その場にいる全ての者は、感嘆のため息をつくことしかできなかった・・・。
純白の花嫁衣裳を纏うマリー様は、地上に降り立った女神様・・・。清楚で気品に満ちた姿を例える言葉を私はそれしか思いつかなかった・・・。
「えーと・・・。何かおかしいかしら?」
誰も言葉を発しないので、不安そうにマリー様が尋ねてきた。
「いえ。マリー様が美しすぎて、皆、何と言葉にしていいのか思いつかず、考えていたのです」
私の言葉に皆が頷く。
「ありがとう。エドワード様もそう思ってくださるかしら?」
「ええ。もちろんです。見惚れて、動きが止まってしまうかもしれませんよ」
「まぁ、メアリったら、大袈裟よ」
緊張で強張っていた表情が、少し揺るんだようだ。
マリー様は大袈裟だとおっしゃるけれど、絶対、エドワード様は動きが止まると思います。
部屋に案内されたマリー様のご家族の方々もマリー様の美しさに驚いたご様子で、
「コレがあのお転婆だったマリーとは思えないわ・・・」と、伯爵夫人。その横で、お父様である伯爵様は目を細めて頷いていらっしゃいます。すでに目が潤んでいるようですが、見なかったことにします。
ジェームス様、ロジャー様のお兄様お二人は、
「エドワードより先にマリーの花嫁姿を間近で見たぞ。これぞ家族特権」
なんておっしゃってます。エドワード様に自慢するんでしょうね。エドワード様の悔しがるご様子が目に浮かびます。
「そろそろお時間です」
司祭様が式の開始を知らせにいらっしゃいました。
「では、私達は席の方に。アナタ、マリーをしっかりエスコートして下さいね」
「ああ、もちろん。さぁ、マリー、行こうか」
「はい。お父様」
マリー様が差し出された伯爵様の腕にそっと手を添えます。
「マリー様、これを」
マリー様をイメージして作られたブーケを手渡します。
「マリー様・・・。いえ、ローズマリー様・・・・・・おめでとうございます・・・・・・」
これだけ言うのが精一杯だった。
「ありがとうメアリ。それから、皆さんも・・・。これからもよろしくお願いしますね」
「「「「はい・・・」」」」
あふれそうになる涙をこらえ、お辞儀をした。
*サイラス*
公爵家の嫡男という地位のおかげで、祭壇から近い席に座ることが出来た。
花嫁を待っているエドワードの顔は、いつもの凛々しいものではあるが、口角がわずかに上がっている。
ニヤケそうになるのを必死に我慢しているようだ。
それはそうだよな。
婚約してから同じ建物内で暮らしていたのに、なかなかゆっくりと会えなかったからな・・・。王妃様とマリーの兄二人の策略で。
今日から、共に過ごす時間が長くなるわけだが、安心するのは早いと思う。近いうちにまた忙しくなると思うぞ・・・。
マリーが伯爵にエスコートされ、エドワードの元に近付いて行く。
二人の距離が近付くにしたがって、エドワードの表情がわずかだが変化していく。
花嫁を見つけた喜びの笑顔から、徐徐に花嫁の美しさに驚いている表情へ。マリーの美しさに見惚れて固まったか?
マリーに手を差し伸べた時の笑顔といったら、今まで見た中で最高のものだった。
「逃がした魚は大きかったわね」
隣に座っていた母上が囁いてきた。何故知っている?何処まで知っている?そう思いながら、
「相手が悪かったんだよ」
と、返しておいた。
マリーが王宮に来てからのことからを思い出していた。
エドワードに遠慮などせず、もっと積極的に接していたら、あの場所に立っていたのは俺だったのかな・・・。
気付けば、すでに式は終了したようで、腕を組み、寄り添った二人が近付いてくるのが見えた。
マリーと目が会った。
「幸せに・・・」
拍手の音で聞こえないかもしれないが、言わずにはいられなかった。
彼女は頷いてくれた。
*シオン*
今日の私は、王太子夫妻の乗る馬車の御者だ。
御者姿の私を見た二人は、ひどく驚いていて見物だった。
私が御者をするのには理由がある。
パレードで使用する馬車は、当然ながら二人の姿がよく見えるよう、上部の壁と屋根の無い型である。その為、攻撃の標的となりやすい。
馬車には、魔術庁によって結界魔法を応用した防御魔法の細工がしてある。さらに今回は、夏の暑さと日差しからも守り、パレードの間快適に過ごせるような細工も施しているため、馬車に設置してある魔石だけでは魔力が足りなくなる可能性もあるのだ。
私であれば、魔石への魔力の補充は簡単だし、いざという時は防御魔法も攻撃魔法もすぐに発動できる。
結果は、危惧していたことは起こらず、無事パレードは終了した。
まぁ、エドワード殿下のローズマリーへの甘い言葉に終始当てられっぱなしではあったが・・・。
*セイラ&庭師三人娘(セイラ視点)*
今頃、式の最中かなぁと考えながら、庭園に新しく建てられた温室へと向う。
この温室は、エドワード様とローズマリー様の婚約が決まってから建てられた物だ。
今回の結婚式で使用する、ローズマリー様のご実家の領地から運ばれてきた花を栽培するためだ。
ここにある花は全て、市場ではあまり流通していない高級な物ばかり。中には、まだ発表されてない新種もあるとの事で、伯爵領から運ぶのが大変だった・・・。
今回、この花たちを運ぶためだけに、仮の転移装置を設置したぐらいで・・・。
花と共に、伯爵領の熟練庭師さんも数人やって来て、これらの花の栽培方法を王宮庭師に伝授している。
ローズマリー様と共に庭園の世話をしていた、リズさん、エミリーさん、ローラさんがこの温室を任されることが決まっているので、特にしごかれているそうだ。
「皆さん、休憩の時間ですよ」
魔術庁の技術で造られた温室なので、点検がてらお茶とお菓子を持っていくことにしている。そうでもしないと時間を忘れて仕事をしてしまうような人達だ。
「え、もうそんな時間だったんですか?師匠達ー!お茶の時間ですよー!」
伯爵領の庭師さんのことは師匠と呼んでいるらしい。
「今日は、デニスさん達は?」
普段ならデニスさんと数人の庭師さんがいるのだが、きょうはリズさん達三人と伯爵領の庭師さん達だけだった。
「親方達なら、今日は庭園のほうですよ。いつもの点検ですけど、今日は特に念入りにするそうなので・・・」
「ああ、魔術庁の職員もそんな事を言ってました・・・」
今日は夜から晩餐会があるから、怪しいモノが無いかを探しに行くと言っていた。
「結婚式、見たかったですね・・・」
リズさん達はずっとローズマリー様と過ごしていたから、そう思うのも仕方が無い。
「それに関しては、魔術庁の開発した記録装置で式を記録していて、後日、上映会をしますのでご安心を」
「嬢ちゃん。ワシらもローズマリーお嬢様の結婚式を見れるのかい?」
嬢ちゃんと言われる歳でもないのだが、この人にとってはローズマリー様とたいして歳の変わらない私はそうなるのだろう。少し、嬉しく感じてしまう。
「はい、もちろんです。その為に、後日、魔術庁の職員が伯爵領まで伺う予定です」
「そうか・・・。じゃあ、ウチのカミさん達も見ることが出来るのか・・・。ちっちゃかったお嬢様の花嫁姿を・・・」
年配の庭師さんが男泣きし、他の庭師さん達も涙ぐみながら「良かったなぁ」と声をかけている。
その後は、年配の庭師さんから幼い頃のローズマリー様の話を聞いたのだが、小さい頃からあまり変わっていないようですね。
*熟練侍女*
晩餐会も無事終わり、ローズマリー様はただいま夜のお支度中・・・。
本日、王太子御夫妻の寝室は私共、熟練または既婚侍女が担当します。
若い未婚の侍女には、少々刺激がつよ・・・いえ、荷が重いでしょうから・・・。まぁ、しばらくは私共が担当して、徐徐に若い人に任せるようにと考えています。
エドワード様が幼い頃から王宮に勤めておりますので、エドワード様の御婚姻は自分の事の様に嬉しいことでございます。
浮いた噂も全く無く、夜会でも国賓以外の女性と踊ることが無かったので、一時期、サイラス様やロジャー様との仲を疑ったこともございました。
私としては、それでも別に構わないと思っておりましたが、初恋相手のローズマリー様のことが忘れられなかったのですね。王妃様からその話を伺ったときは、何て一途な方なんだと感動いたしました。
私をはじめとして、他の侍女達もお二人のお幸せを全力で願っております。ローズマリー様に危害を加える方は阻止いたしますのでご安心を。
それにしても、エドワード様、やっとですね。
王妃様のご公務のご都合で、一月以上前にローズマリー様は王族籍となられましたが、
「寝室を共にするのは、結婚式が済んでから」
との、王妃様の御達しにより、正式なご夫婦でありながら寝室を共にすることが出来ず、さぞ、お辛かったでしょう。
お互い、ご公務も忙しく式の打ち合わせの時でしかお話できる機会も無く・・・。
今晩からは思う存分、中睦まじく過ごしてくださいませ。
あまり睦まじくしすぎますと、お仕事が忙しくなると思いますので、程ほどに。どなたの指図かはお解かりになるでしょう。
他のお部屋でお支度を済まされたエドワード様がいらっしゃいました。
お顔は少々緊張していらっしゃるようですが、醸し出す雰囲気は・・・・・・。やはり、若い侍女を配置していなくて良かったです。
「ローズマリー様、エドワード様がお見えになりました」
寝室のドアを開けると、そこには、寝台の上で幸せそうな表情で、ネコの様に丸まってお休みになられるローズマリー様が・・・。
ここ数日、かなり緊張しているご様子でしたし、本日も夜が明け始める頃から式のお支度を始められたので、お疲れがたまっていたのでしょう。
ここに来て、安心から睡魔が襲ってきたのでしょう。
そんなローズマリー様を愛しむような眼差しで見つめるエドワード様・・・。思わず見とれてしまうところでした。
「・・・エドワードさまぁ・・・。だいすきです・・・」
ローズマリー様が起きたご様子ではないので、寝言ですか・・・。
エドワード様の方を顔は動かさずに視線だけで見ると、お顔が真っ赤です。
思わずニヤケそうになったのを、勤続20年の侍女スキルでこらえます。
「もう、下がってよい・・・。呼ぶまでは入ってこない様に・・・」
「かしこまりました・・・」
それではごゆっくりと言いそうになってしまったが、飲み込んだ。
明日は、王妃様の計らいで特にご予定がありませんので・・・。
先ほどの件は王妃様への報告書にしっかりと記入させていただきます。
遅くなってすみません。
マリー視点、メアリ視点で結婚式前日の話を途中まで書いたのですが、行き詰ってしまいました。(書きたいと思ってるネタが上手く繋げられなかった)
次回はもっと早めに投稿できるようにします。




