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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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マリーの悩み

悩みといっても大したものではありません。

惚気とも受け取れます。

何度か書きなおしたので、更新が遅くなりました。

「はぁ~」

 つい、ため息をついてしまいました。


「・・・・さま。・・・リー様!マリー様!!」

「・・・あ、・・・ああ、ローラさん。どうかしました?」

「・・・。こちらが聞きたいです」

 ローラさんがわたしの足元を見つめる。

 そこにはちょっとした水溜りが出来ていました。


「あら?」


 温室の東側にある温室エリア。 

 そこの鉢に水遣りをしていたのですが、いつの間にか鉢からずれて、わたしの足元に水をやっていたようです。

「『あら?』じゃないですよ。ため息をついたり、ぼーっと、あさっての方向を見つめていたりして。何か悩み事でもあるのですか?休憩ついでに話聞きますよ」

「そうですね・・・。休憩しましょうか」

 中央の屋内庭園エリアにある東屋に移動しました。


 新しい年になってから、すでに2週間以上経っています。

 年が明けたばかりの数日は伯爵家(実家)で過ごしました。

 ここ2週間は、王宮で仕事をしています。

 その仕事の合間にダンスの練習と、何故か髪とお肌の手入れをされて、日が傾いた頃にはジェームス兄様に回収され、伯爵家(実家)に帰るといった日々です。

 その為か、なかなか庭園に来る事が出来ず、気が付けば年の暮れに庭園の仕事をしてから3週間近くたっていました。

 久々に庭園の仕事が出来ると喜んで来たのですが、ローラさん達の仕事は素晴らしく、

「今日の仕事は温室の水遣りぐらいですよ」

との事でした。

 ちなみに、リズさんとエミリさんは王宮前の花壇や植木の手入れのお手伝いに行っているそうです。


 

「初めに言っておきますが、話を聞くだけですからね。相談には乗りませんよ」

「何でですか?」

「マリー様の悩み事ってエドワード様がらみのことだと思うんですよね」

 ぎくっ。

「庭園の事でしたら、マリー様は御自分で調べるか、親方やシオン様に相談されると思いますし、王宮でのお仕事でも周りに相談できる方がいらっしゃるでしょうから、悩むことは無いでしょう。今までがそうでしたから。なので、たぶんエドワード様の事じゃないかなぁと考えたのですが、違いますか?」

「はい・・・。そのとおりです・・・」

「恋愛相談は相手がいる人にして下さいね。相手がいない人間には、客観的な意見は言えるかもしれませんが、アドバイスは無理です。で、どうしたんですか?」

 ローラさんがそれはもう、興味津々と言った顔で尋ねてきました。


「エドワード様と・・・」

「エドワード様と?」

「まともに話が出来ないんです」

「お互いお忙しくてなかなかお会いできないのですか?」

「いえ、そうではないんですが・・・」

 王宮で仕事をしているので、1日に数回はお会いするのですが・・・。

「エドワード様のお姿を見ると、恥ずかしくて、挨拶以上の会話が出来ないんです」

「あ~、ソウイウコトデスカ」

 ローラさんが呆れています。

「何を話したらよいのでしょうか?」

 相談には乗らないと言っていましたが、一応、尋ねてみました。

「ええ~~。わたしに聞かれても・・・。とりあえず、今までと同じでいいんじゃないですか?」 

 ローラさんは困りながらも答えてくれました。

「サイラス様にも同じ事を言われてしまいました」

「ええっ?!サイラス様にも尋ねられたんですか?」

 ローラさんがびっくりしていますが、驚くことでしょうか?

「はい。ダンスの練習相手をして頂いたときに。サイラス様が一番よくエドワード様の事を知っているとお思うので」

「確かにそうかもしれませんが・・・」

 ローラさんは何故か頭を抱えています。


 

 数日前、サイラス様とお話する機会があったので尋ねてみました。


「あ~、そういえば、エドワードが言ってた。『最近、マリーが挨拶だけしかしてくれない』って」

「エドワード様、怒っていらっしゃいました?」

 嫌われたらどうしましょう。

「いや、『真っ赤になって去っていく姿が可愛い』だって。まぁ、マリーがそういった態度になる理由を本人も分かっているからね。もちろん、俺もだけどね」

 年の暮れに二人で庭園を散策したことを思い出してしまいました。あの時は、庭園の一角でエドワード様と・・・・・・。その後、ポーっとして動けなくなったわたしはエドワード様に抱き抱え(お姫様抱っこ)られて・・・。その姿をサイラス様に見られたような・・・。

「ううっ・・・。恥ずかしい・・・」

 顔が熱いです。

「エドワードも今色々忙しくてなかなか時間が取れないからね。『挨拶だけでもマリーの声が聞けて嬉しい』って言っていたから気にすることは無いと思うよ」

「でも・・・」

「じゃあ、近いうちにアイツにマリーと会う時間を作るように言っておくから、その時までに考えていたら。そうだな・・・、今までと同じでいいと思う」

 そう言って、わたしの頭に優しく手を載せました。

「サイラス様って、お兄様みたいですね・・・」

「え?」

「ジェームス兄様とロジャー兄様を足したような方だなと・・・」

「・・・そうか・・・。じゃあ、あの二人に相談できないことは俺がこれから聞いてあげるよ・・・」



「マリー様、サイラス様にそんな事を言ったのですか・・・」

 ローラさんの笑顔が引きつっています。

「ええ、そう思いませんか?気軽にお話できて、いざという時は頼りになって、優しくて」

「たぶん、それ、マリー様だけにですから・・・」

 ローラさんのため息が聞こえたような気がしました。 


「ところで、わたし、以前はどんな話をしていたでしょうか?」

「え?そこからですか?なら、庭の事です」

 即答されました。

「他には?」

「仕事の報告ですか?薬草園や大学での特別講義、デイジーはマリー様のお仕事の内ですものね」

「それ以外は?」

「食べ物のことですか?畑で取れた野菜を使って料理をしたとか、料理長からお菓子の試作品をいただいて、それがおいしかったとか」

「そんな話で良いのでしょうか?」

「それしか思いつかないから、仕方が無いですよ・・・」

「それもそうですね・・・」

 近いうちにメアリとリズさんに、お相手の方とどんなお話をしているのか聞くことにしましょう。




「マリー」

 背後から、今、わたしが一番会いたいと思っている人の声がしました。

 振り返ると、エドワード様がこちらに歩いてきます。

「あら、邪魔者は消えたほうがいいですね。それでは、私は失礼いたします」

 ローラさんはエドワード様に挨拶をして、温室から出て行きました。

 


「マリー。会いたかった・・・」

 エドワード様に抱きしめられました。

「サイラスから、マリーが寂しがっていると聞いた」

 えっと、わたし、そんな事言ったでしょうか?

 でも、エドワード様と会いたいと思っていたのは確かなので、

「・・・わたしも会いたかったです・・・」

と、素直に答えました。 

 嬉しくて、つい、エドワード様の胸にスリスリと頬ずりをしてしまいました。

「マリー・・・」

 わたしを抱きしめていたエドワード様の腕が少し緩み、額にちゅっとエドワード様の唇が触れました。

 見上げると、エドワード様の甘い笑顔が目に入りました。

 少し冷たいエドワード様の唇は、続いて頬に触れ、そしてわたしの唇へと重なりました。


 エドワード様の情熱的な接吻キスに酔ってしまったようで、エドワード様のひざの上に横向きに抱きかかえられて座っています。

 先ほどの接吻キスてられて、力が入らない状態なので、自然とエドワード様の胸にもたれかかっています。

 エドワード様は、そんなわたしの額にキスをしたり、頬ずりをしています。

「しあわせです・・・」

 わたしの呟きに答えるように、エドワード様がぎゅうっと抱きしめて下さいました。



「マリーにこれを渡したかったんだ」

 肌触りのよい布で作られた小さな袋を渡されました。

「マリーが気に入るといいのだが・・・」

 エドワード様に促され、袋の入れ口についているリボンを緩めると、中から黒い石のついたペンダントが出てきました。

「石は『オニキス』と言っていた。魔よけとして使われる石らしい」

 黒はエドワード様の瞳の色です。

「もしかして・・・、これ・・・」

「そう。マリーの好きな物語。この庭園を造る時に参考にした話に出てきてたよね」

 物語では、主人公ヒロインが長年片思いだった相手から東屋で告白された時に、相手の瞳と同じ色のペンダントを渡されるのです。物語の中ではエメラルドでしたが・・・。

 想い人に、主に男性が、自分と同じ色の石のペンダントを贈って告白する習慣が平民の間にあるそうで、『君の瞳に映る景色を私の瞳にも映したい=恋人になって下さい』といった意味があるそうです。密かに憧れてました。

 受け取っただけでは、『しばらくはお友達で』となり、断るときは受け取らないそうです。

『貴方のお気持ち確かに受け取りました=私を恋人にして下さい』と返事をしたい時には、


「エドワード様、つけて下さいますか?」

 贈り主にお願いするのです。

「もちろん。喜んで。ただ、このままの姿勢じゃつけにくいかな」

 エドワード様の膝から降りようとしましたが、それは叶わず、エドワード様に背を向けるように膝の上で向きを変えられただけでした。

「つけやすい様に髪を上げてもらえる?」

 金具がつけにくいようなので、言われたとおり首にかかっていた髪をクルクルっとまとめて持ち上げました。

 エドワード様の指先が軽く触れました。それだけで熱く感じます。首に金属のヒヤリとした感触が心地良いです。

「ふふ。マリー、首が赤いよ」

 首筋に不思議な感触がしました。

 もしかして、エドワード様にキスされている!?

 チュといった軽い感じではなくて、チュウといった吸い付く感じ・・・。


「痕つけちゃった」

 耳元でエドワード様が嬉しそうに呟きました。

 そして、ぎゅうっと後ろから抱きしめられ、

「マリー。マリーは私と会話が出来ないことを気にしているようだけど、私は会話が無くてもこうやってマリーを抱きしめているだけでも嬉しいよ。それから、私のことは『エドワード』と呼ぶようにって言ったよね?次から間違えた時は、見える場所に痕をつけるから」

 クスクスと楽しそうな笑い声が耳元で聞こえました。

「わ、わかりました・・・」 





「ロジャー兄様、ここ数日、エドワード様とお会いしないのですが、お忙しいのですか?」

「あ、はは・・・。その様だね・・・」

 何故かロジャー兄様の視線はあさっての方向を向いています。 

 その横で、ジェームス兄様は楽しそうにしています。


 久しぶりにお会いしたエドワード様の目の下には隈ができていました。

 

 

エドワードが隈を作るほど忙しかったのは、キスマークを見つけたジェームスの嫌がらせです。普段はエエドワードの仕事の進行状況を見ながら優先度の高い書類を渡すのですが、この時は、一度に数日分、優先度関係なく渡しています。

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