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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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庭園デート

風邪をひいたり、急に用事が入ったりと、気付けば一ヶ月過ぎていました。

更新、遅くなりましてすみません。


 恋人同士の会話って、何を話題にしたら良いのでしょうか?

 目の前で優雅にお茶を飲んでいるエドワード様のお顔をまともに見ることが出来ず、つい俯いてしまいます。


「マリー」

「・・・ふぁい!何でしょう?エドワード様・・・」

 返事さえまともに出来ないなんて・・・。

 そんなわたしにエドワード様は微笑みながら、

「もう恋人同士になったのだから、二人きりの時は敬称抜きで呼んでほしいのだが・・・。『エドワード』と」

なんておっしゃいます。

「そ、そ、そ、そんな・・・。まだ、心の準備が・・・」

「では、出来るだけ早くお願いできるかな?マリーが私の恋人だということを実感したいんだ。マリーが私の求婚を受けてくれたことは夢なんじゃないかと思ってしまう・・・」

 わたしも今朝、昨日の事は夢だったのではと思ってしまいました。メアリ達の笑顔がいつもと違ったので、夢じゃなかったと分かりましたが。

「え、エドワード・・・」

 勇気を振り絞って、言ってみました。小さい声ですが。

 ちゃんとわたしの声が聞こえていたらしく、エドワード様は今まで見たなかで一番の笑顔になりました。

 わたしは恥ずかしくて、頬がすごく熱いです。


「照れているマリー、すごく可愛い・・・」

「え?」

 エドワード様が何かおっしゃったようですが、よく聞こえませんでした。


「いや、これからもそう呼んでくれると嬉しいなと(顔を真っ赤にしながら言っている姿が可愛い)」

「はい・・・」


「あの・・・」

 何か話しをしなければと思い、顔を上げるのですが、エドワード様が笑顔でわたしを見つめているので、恥ずかしくなってまたすぐに俯いてしまいます。

 以前はどの様な会話をしていたかも思い出せないほど、顔が熱いです。

 適当にメアリに話題を振って、会話の糸口をつかもうかと思いましたが、メアリは理由をつけて部屋から退出しており、どうにもなりません。



「マリー、庭園を案内してくれないか?」

 会話の無さに耐え切れなくなった頃、エドワード様からお誘いがありました。 

「では、急いで仕度してきます」

「慌てなくていいよ。玄関で待っているから」

 わたしが勢いよく立ち上がったのがおかしかったのか、エドワード様はクスクス笑っていらっしゃいます。恥ずかしい・・・。


 


 外は、日差しは暖かですが、風は冷たいです。

 防寒対策をしっかりとしたので、寒くはありません。

「マリーは、手を繋ぐのと腕を組むの、どちらがいい?」

「・・・!?」

「恋人同士なんだから、当然だよね?」


 恥ずかしいですが、腕を組むことにしました。正確には、エドワード様の袖をつかんでいます。

「もう少し、くっついて欲しいのだが・・・」

 エドワード様は不満そうです。

 今の段階では、これ以上は無理です!


「図面から想像はしていたけれど、ずいぶん変わったね」

 以前は、コテージから温室全体が見えていましたが、曲がりくねった小路沿いに植えられた樹木の枝の間から見える程度です。春になって葉が茂ってくると、屋根の部分しか見えなくなるでしょう。

「はい。デニスさん達ががんばって下さいました」

 わたしは手伝わせてもらえなかったです・・・。

「だが、設計したのはマリーなんだろう?」

「はい。半分ほどデニスさんが修正してますが・・・」

 長年の経験から得た知識には敵わないです。


 レンガで舗装した小路の途中には、砂利や飛び石、木材など趣向の違った脇道があって、それぞれの道の両側には雰囲気の違う小さな庭があります。

 庭によっては、生垣やラティスなどで道から庭が見渡せないように仕切っているところもあります。

 庭の広さもそれぞれ違います。

 

 わたしのお気に入りの庭は、香りの良いつるバラを絡ませたアーチの下にベンチを置いた小さな庭です。

 植物に囲まれて考え事をする場所が欲しくて造った場所で、二箇所ある出入り口以外は塀で囲んであるのです。塀には小さな磨ガラスの窓がついているので、庭に人がいるかどうか外側から感じることが出来ます。

 あと、夜でも利用できるように、明かりを置くための棚も付けました。

「ここは、ちょっとした部屋だね」

 エドワード様も気に入られたようです。

「花が咲く頃が楽しみですね」

 ベンチに座り、上を見上げます。

 植えたばかりなので、まだツルは上まではありません。冬の青空が見えました。


 ぐっと肩を引き寄せられ、唇にやわらかく暖かいものが触れました。

 それがエドワード様の唇だと気付いたのは、エドワード様のお顔がすぐ目の前に見えたから・・・。

 わたし、エドワード様とキスしてる・・・?

「!!!!」

 驚きでわずかに動いたわたしの身体を逃がすまいと、肩を抱くエドワード様の腕がさらにわたしを引き寄せ、もう片方の手で頭を固定されてしまいました。



 どのくらい唇が重ねあっていたのでしょうか?

 エドワード様の唇が離れた頃、すでにわたしの思考は停止していました。

 ぬれた唇に感じた冬の風の冷たさで我に返りました。

 エドワード様の手が、わたしの頬を優しくなでています。


「そんな潤んだ瞳で見つめられたら・・・。ますます愛しいと思ってしまう!」

 そう言って、再び唇が・・・。



「エドワードさま~~!!サイラス様がおみえで~す!」

 少し離れた場所からメアリの声が聞こえてきました。

「チッ。邪魔が入ったか・・・・・・。マリー、もっと一緒にいたかったが仕事に戻らなくてはいけないようだ。明日も案内してもらえるかな?」

「はい・・・」

 頭がボーっとして、力が入らず、エドワード様の胸にもたれかかりながら返事をしました。

 エドワード様は、そんなわたしの額にキスをすると、軽々とわたしをかかえあげました。

 久々のお姫様抱っこです。

「では、戻ろうか」

 そう言ったエドワード様は、とても満足そうでした。



 


 

読んでいただき、ありがとうございます。

次回の更新は年明けとなります。

来年もよろしくお願いします。

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