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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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サイラス 行動する(後)

 執務室に戻ったのは、一時間後だった。

 エドワードは真面目に仕事をしているようだった。普段の半分から三分の一のペースで・・・。


「お~い。食事ぐらいしろよ」

 昼食が運ばれてきていたが、全く手が付けられていなかった。

「ん・・・?サイラス戻って来ていたのか・・・」

 俺が戻って来たことにも気付かないほど、マリーの事を考えていたのだろうか?

 

 サンドイッチやフルーツが応接テーブルの上に並べられていた。

 早速、頂くためにソファに腰を下ろす。

 エドワードも向い側のソファに腰を下ろし、食べ始めた。


「なぁ、まだ、あの事を考えていたのか?」

 “あの事”とは、エドワードが王妃様に『マリーを妃に迎える』と宣言した事。

「ああ。俺と結婚するって事は、『王太子妃』になり、後々は『王妃』になるわけだから、マリーと結婚する意志があることは分かってもらえているとは思うのだが、俺の気持ちは伝わっているのか、それが気になって」

「そんな事、本人に聞けばいいじゃないか」

「なっ・・・!何て聞けばいいんだよ?」

 何故か真っ赤になるエドワード。

「そのまま。ストレートに。『俺がマリーを愛している事、伝わっている?』でいいんじゃないか?」

「サイラス。お前は言えるのか?」

「ああ。言うよ」

 ここは、きっぱりと答える。

「それか、明日、改めて『マリー愛している。俺と結婚してくれ!』と求婚するか。間違いなく、お前の気持ちが伝わる」

「それはそうだが・・・」

 普段は積極的なエドワードも、マリーの事となると消極的だ。

「仕方が無い。今日の仕事は俺が何とかするから、お前はマリーに告白する言葉でも考えてろ!」

「うっ・・・。すまない・・・」


 書類を見ているフリをして、エドワードを見る。

 本を読んでいる。表紙から、マリーのお気に入りの物語だと分かる。

 確か、温室はこの物語の庭を参考にしたと言っていたな・・・。

 俺は読んだことが無いが、恋愛物だとは聞いたことがある。

 しばらくすると、今度は何か呟きながら応接セットの周りをぐるぐると歩き出した。

 本を読んで何か思いついたのだろうか?


 ドアをノックする音が聞こえた。

 たまたま、ドアの前を歩いていたエドワードがドアをあけた。

「失礼します」

 入って来たのは、いつも王妃様の伝言役を務める侍女だった。

 ドアを開けたのが、エドワードだと気付いて一瞬顔が引き攣ったようだったが、そこは王妃様付きの侍女。すぐにいつもの表情へと戻った。

「お忙しいところ申し訳ございません。図書室の鍵を開けて頂けないでしょうか?王妃様が本をお探ししたいそうです」

「エドワード。ついでだからお前も本を探したらどうだ。マリーが興味を持ちそうな本。『面白い本があったから持ってきた』と、会う口実になるんじゃないか?」

 室内を歩き回られるのも鬱陶しくなっていたので、丁度良かった。

「そうだな。どうやってマリーを誘おうか考えていたところだったし。じゃあ、サイラス、行って来る」

 侍女が俺に目配せしたことには気付かず、エドワードは部屋を出て行った。


「こっちは上手くいった・・・。さて、あちらはどうかな?」


 少し時間を置いて、図書室に向う。

 丁度、メアリが図書室から出てきたところだった。


「上手くいったみたいだな」

 俺に気付いたメアリに声をかけた。

「はい。私は王妃様に報告してきます」


 休憩だと言って、部屋を留守にしていた間、俺は王妃様の部屋にいた。

 そこで、メアリや他の侍女達を交え、エドワードとマリーを二人きりにする計画を立てていたのだ。

 勿論、首謀者は王妃様だ。


「それではメアリ、マリーの準備が整ったら連絡して。こちらから、サイラスに連絡してエドワードに鍵を開けさせるようにします。その間にマリーを図書室に誘い出してね。サイラスも、エドワードを上手く図書室に留まらせておいてね」


 大雑把な計画ではあったが、案外上手く二人きりに出来た。

 図書室のドアは分厚く、中の様子を窺うことは出来ない。


「さて・・・、どれくらいで戻ってくるかな?」

 図書室の前にずっといる訳にもいかないので、部屋に戻って仕事をすることにした。


 エドワードは、以外と早く戻って来た。マリーと一緒に。


「サイラス様。申し訳ありません。サイラス様の『提案』お受けできません」

 逆に、こちらが申し訳なく思ってしまうほど、マリーは深々と頭を下げた。

「うん。初めから分かっていたことだから、そんなに畏まらなくても・・・」

 エドワードも申し訳なさそうに俺を見る。


「マリーの婚約者探しの話は、半分嘘だから。エドワードがなかなかマリーに告白なり求婚なりしないから、王妃様が痺れ切らして言い出したことだから。まぁ、二人がくっつかなかった時は、実行されていたかもな」

「じゃあ、サイラス、お前の『提案』も?」

「・・・ああ。ああ言っておけば、お前が焦ると思って。マリーも結婚の事、本気で考えただろう?」

「ええっ!?では、メアリ達が言った言葉もですか?」

 マリーがなにやら驚いている。そういえば、メアリがフォローしておくなんて言っていたが、何を言ったんだろうか?

「彼女達が何を言ったか知らないが、計画に乗ってくれたようだね」

 後でメアリに口裏を合わせるよう言っておこう。


「それにしても、意外と早く戻って来たんだな・・」

「マリーが早くお前に謝りたいって言うから・・・。ん?まさか・・・」

 エドワードは、今回の事も仕組まれたことだと気付いたようだ。

「これで、お互い想いが通じあったようだし、仕事がはかどるよな。エドワード」

 エドワードに皮肉をこめて言った。

「お仕事お忙しいのに、お邪魔でしたよね。わたし、これで失礼します」

 “仕事”と聞いて、焦ったのはマリーだった。

「あ、待ってマリー。明日、お茶の時間にコテージに行っても構わないかな?」

「はい・・・。お待ちしております」

 マリーが赤くなって俯く。

 それにつられてエドワードも赤くなる。


「お邪魔なのは俺のようだな。俺、ちょっと用事があるから、しばらく帰ってこないから、気にせず二人で話しをすればいい。それじゃ」



 王妃様の元に、二人がエドワードの執務室にいることを報告し、そこにいたメアリにマリーに言ったことは計画に乗っての事だと口裏を合わせるように念を押した。

 ついでに、マリーに何を言ったか聞いてみた。

「リズさん達と共に、サイラス様がマリー様をいかに“好いて”いらっしゃるかを力説いたしました。具体的に申し上げたほうがよろしいですか?」

「いや・・・。遠慮しておく・・・。彼女達にも、『計画に乗っての事』だと念を押しておいて」


 俺の態度って、そんなに分かりやすいものなのだろうか?


「分かりやすかったぞ」

 そう答えたのは、シオン殿だった。


 王妃様への報告のあと、シオン殿と話しがしたいと思い、彼の執務室へとやって来た。

「来ると思っていたよ」

 そう言って、部屋へと迎え入れてくれた。


 俺は、昨日からの出来事、すべてをシオン殿に話した。


「女性は、ローズマリー本人以外は気付いていたと思うぞ。男性は、気付いていない者が多いが、俺は勿論、君と何度か接したことのあるゼータは気付いていたようだ。まぁ、彼は意中の相手がいるからそういった感情には敏感だからね」

「はは・・・。そうですか・・・。でも、不思議と失恋した割には悲しくないんですよね。どうしてでしょう?」

「それは、あの二人が“運命の相手”同士で、君はその二人を結びつけるための重要な人物だったからかな?彼らにとって君が重要な人物であるように、君にとっても彼らは重要な人物で、君がマリーに惹かれたのはその所為だよ。まぁ、その内分かるよ」

 シオン殿の言葉で、自分の中にあった不思議な感情を理解できた気がした。

 

 


 

なんとか更新できました。

今年も残り、約一ヶ月。

年末の行事や大掃除などで、更新の回数が減るかもしれませんが、出来るだけがんばりますのでよろしくお願いします。

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