星に願いを(4)
流星群は、数日間見ることができるそうです。
なかでも、今日はより多く見ることができるらしく、王宮の庭園で観察会をすることになりました。
わたし以外の参加者は、エミリーさんとローラさん(リズさんとメアリは恋人のところです)セイラさんとゼータ(本名ザカライアス)さん、そして、エドワード様とサイラス様。
当初は、エミリーさん、ローラさん、セイラさんとわたしの四人で見る予定でした。
「冬の夜、屋外は寒いよね~」と、いうことから、魔道具の敷物 - ゼータさん作。敷物は勿論、その上部2メートルの空間までが暖かい ― を借りることになり、実際に使用しているときのデータを取るためにゼータさんが参加することになり、どこから聞きつけたか(たぶん王妃様)エドワード様とサイラス様も参加することになったのでした。
サイラス様は、魔道具のことに興味があるらしく、ゼータさんに質問しています。
そうなると、必然的にエドワード様の話相手はわたしとなってしまいます。
3メートル四方ある大きな敷物の端で、他の方々の背中を見る位置にわたしとエドワード様は座りました。
そして、何故か、エドワード様に手を握られています。
「マリー、腕輪、ありがとう」
エドワード様は早速、付けてくださっています。
先ほど、合流した時に、エドワード様とサイラス様にお渡ししたのです。
「今日渡してくれるってことは、『星の加護』もしてくれたのかな?」
サイラス様は、先日説明したことをしっかりと覚えていたようです。
「ええ。ちゃんと『健康』と『成功』をお願いしておきました」
メアリに言われたとおりにしていて良かった。
「お返しには、俺も『星の加護』をしたほうがいいのかな?」
「いえいえいえ。いつもお世話になっているお礼としてなので、お返しは結構です。腕輪にしたのは街で流行しているもので、話題を提供するにはいいと思ってのことで・・・、深い意味は無いですので、『星の加護』は必要ないです」
実際は、メアリに強引に『デイジー』に連れて行かれ、半強制的に作らされたのですが、その事は秘密にして、もっともらしい理由を述べました。
「マリーが私の為に作ってくれた腕輪を明日、母上達に自慢しよう」
「え・・・?たち・・・?」
「ああ、父上とサザランディー公だ。マリーが母上に提出した報告書を実に興味深げに読んでいたよ」
王妃様が『流星群の時期に行われる恋人達の行事』について、詳しく知りたいとおっしゃっていたので、ロゼッタさんの小説のことや、小説の元となった西側の国のお祭りや習慣のこと、『星の加護』のおまじないなど、聞いたり調べたりしたことを簡単にまとめただけのもので、報告書などという大層なものでは無いです。
ちなみに、ホルト国の隣の国に、年末に親しい人に贈り物をする習慣がありました。
「『西側各国の月ごとの行事(祭り)一覧表』が特に公表だったよ。それから、『最近、街で女性の間で流行していること』についての報告も」
王妃様(と仕えている女性の方々)向けに書いたものが、エドワード様やサイラス様ならまだ分かりますが、まさか陛下と宰相様まで読まれるとは思いませんでした。
「母上は嬉しかったのだろう」
エドワード様がポツリと言いました。
「街の若者の間で何が流行っているかなど、私達の耳にはほとんど届かないからな・・・。マリーのおかげでそれを知る事が出来た。それを父上たちと共有したかったのだろう・・・」
「恥ずかしいですけど、喜んでいただけてよかったです。・・・ですが、腕輪を自慢されるのはやめてください」
「どうして?」
「いえ、恥ずかしいです・・・。今回の報告書?を読まれた後では・・・」
「『流行り物で、話題を提供するための物で、深い意味は無い』のだろう?」
「そうなのですが・・・、自慢されるのでしたら、もう少し見栄えがする物を作りましたのに・・・」
「私は気に入っているから構わないが・・・。では、自慢はしないでおこう。その代わりに、来年は自慢できるような物を作ってくれないか?」
「ええ、喜んで」
エドワード様が柔らかな笑顔で見つめてきます。
エドワード様のこの表情、好きだなぁと思うと、自然に顔が赤くなってしまい、思わず俯いてしまいました。
「マリー・・・、顔を上げて・・・」
エドワード様の繋いでいない手がわたしの頬に軽く触れました・・・。
「あっ!流れた」
突然の声に、思わず体がビクッとなってしまい、それと同時にエドワード様の手が離れていきました。
見上げると、夜空のあちこちで流れ星が確認できます。
「今年は新月なので、星がよく見えますね。星に詳しい者を連れてくれば良かったかしら?」
「先輩、僕も一応詳しいのですが・・・」
「そうだっけ?じゃあ、ゼータ、皆さんに説明してあげなさい」
「はいはい、分かりました」
ゼータさんを中心に、星に関する講義が始まりました。
「『星の祝福』」
エドワード様が呟きました。
「え?」
「ホルト国の王が生まれたのは、今夜みたいな日だったんだろうと思って。この星空を見ていると、祝福されているような気分になる・・・」
「そうですね。きっと、祝福されていますよ。エドワード様の未来が素晴らしいものになるように、わたしがこの星空にお願いします!」
「ありがとう、マリー。私も君の未来が素晴らしいものになるようにお願いしよう」
そう言って、夜空を見上げたエドワード様の横顔から、しばらく目を離すことが出来ませんでした。




