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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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星に願いを(3)

 今日の庭園は、大変にぎやかです。

 

 以前、デニスさんに庭園の改装について相談した時、必要な物(植物や資材)はデニスさんの方で手配してくださることになり、出来次第連絡を下さることになっていました。

 その連絡が数日前にあり、今日、それらを庭園に運びこむことになっていたのでした。


「それは、そっちに置いてくれ。その樹はこっちだ」

 デニスさんが、庭師の方々に指示をして、次々に物が運びこまれてきます。

 その数は、わたしが想像していたよりも多いのです。

 不思議に思っていると、

「冬の間にできる事はすべて(・・・)やっておこうと思いまして。ああ、ちゃんとエドワード様からも了承いただいております」

と、デニスさん。

 デニスさんの言う『冬の間にできる事』とは、パーゴラやアーチなどの設置、小路のレンガ敷き、この時期植え付けが可能な植物の植え付けなど・・・。 

 計画の九割近く完了してしまうことになります。

 それから、作業をしている人数。多いような気がするのですが・・・。

「造園の専門学校生ですよ」

 ああ、やはり・・・。

 資材の購入費と、専門学校生のお給金でかなりの資金が必要となると思うのですが、そちらは『エドワード様から了承済』との事なのでしょう。


「マリー様。庭園のことは私達にお任せ下さい」

「人数も十分足りていますから」

「結構、大掛かりな作業になりますし」

「「「怪我をされたら大変ですから~」」」

 リズさん、エミリーさん、ローラさんに言われてしまいました。



 仕方なく、コテージのダイニングで過ごすことにします。

 メアリが用意してくれたお茶を飲みながら、クララさんから届けられたテレサさんからの手紙を読みます。

 テレサさんからの手紙は、『流星群の行事イベント』の件でした。


 リズさんとメアリが『デイジー』でテレサさんから聞いていた、小説がきっかけになったというのが当たっていたようです。

 ロゼッタさんのお父様の友人で、商人をしている方から聞いた西側諸国のお話を元にロゼッタさんが小説にしたそうです。

 そして、その小説を売り込んだのが、現在ロゼッタさんの旦那様が社長をしている出版社(当時は旦那様のお父様が社長で、旦那様は編集者)らしく、小説がきっかけでお付き合いを始め、本が出版される頃には婚約したそうです。その事がロゼッタさんの(未婚の)友人達の間で噂になり、小説は話題に。そして『流星群の行事イベント』は広まったらしいです。 

 その小説も一緒に届けられていました。


「マリー様。エドワード様とサイラス様がお見えになりました。応接室でお待ち頂いてます」

 小説を読もうとしたところ、メアリから来客を告げられました。


「お待たせいたしました。エドワード様、サイラス様。お元気そうで何よりです」

 お二人とお会いするのは久しぶりのような気がします。


「今日は、ジェームスに頼まれていたものを持ってきた」

 そう言って、エドワード様がテーブルの上に置かれている数冊の本を指さしました。

「?」

 ジェームス兄様は、エドワード様に何を頼んでいたのでしょうか?

 本を手に取り、ページをめくってみると、ある国の文化や風習を紹介しています。

「ホルトという国が、冬の流星群の頃に祭りをするそうだ。その本には、その祭りについて書いてある。こちらには、それに関連する話がかいてある」


 現在のホルト国の礎を築いた王 ― ルドルフ王 ― の生誕祭だそうです。

 ルドルフ王は、それまで内戦が絶えなかったホルト国を平定し、繁栄に導いた賢王だそうです。その王が生まれたのが冬の流星群の頃で、『星に祝福されし王』として、祭りが行われるようになったと本には書かれていました。

 祭りは、王が埋葬されている教会でミサが行われた後、王の生涯を題材にした劇などが上演されるらしいです。屋台などでは、星をモチーフにした商品が売られているそうです。


「エドワード様、サイラス様申し訳ございません。兄がお二人に頼んでいたとは思いませんでした」

「いや、いい息抜きになった」

「いや、俺は何もしていないから。それにしても、何故、マリーはこの事に興味を持ったの?」

 サイラス様が尋ねてきました。

 そこで、わたしはこれまでの経緯、『デイジー』で聞いた『流星群の行事イベント』について説明とジェームス兄様が西の国でお祭りがあることを思い出し、『流星群』繋がりで興味を持ったことを話しました。ついでに、テレサさんからの手紙のことも。

「へぇ~。おもしろいね」

「だけど、ホルト国の祭りでは、贈り物をするとは書いていなかったが・・・」

「まだ小説を読んでいないので分かりませんが、テレサさんの手紙に『西側諸国』と書いてあったので、もう少し調べてみようと思っています。しばらくは時間がありそうなので」

 庭園の工事が終わるまでは、庭園には立ち入らせてもらえないでしょう。コテージ前の菜園の手入れだけでは、時間が空いてしまいます。

「そらなら、図書室を好きに使うといい。鍵は、私の執務室に取りに来てくれ。手伝えることがあれば手伝うが・・・」

「いいえ。メアリがいますので、大丈夫です。お気持ちだけで十分です」

「ああ・・・。分かった・・・」

 そう答えるエドワード様の横で、サイラス様が口を押さえて肩を震わせていたようですが、わたしの気の所為でしょうか?



 帰っていかれるお二人の背中をみながら、

「お仕事が忙しいでしょうに、お手を煩わせてしまいましたね・・・。何かお礼をしなければ・・・」

と、呟いたところ、

「そうですね。サイラス様はともかく、エドワード様にはしっかりとお礼をしなければいけませんね」

メアリが言いました。目の奥がキラーンと光ったような気がしました。

「早速、明日『デイジー』に行きましょう!」


 翌日、メアリに引きずられるように『デイジー』を訪れました。

「基本セットでは、ロジャー様達とおそろいになってしまいますので、アレンジいたしましょう」

「はい・・・」

 何故かメアリが張り切っています。おとなしく従うことにしました。

 お二人に、皮製の腕輪を手作りすることになってしまいました。

 サイラス様には赤銅色の、エドワード様には濃紺の紐を編みこむことになりました。

 今回は、三つ編などではなく、少々複雑です。クララさんのお婆様が丁寧に教えて下さいました。

 数時間後、二つの腕輪が出来上がりました。


「お二人共、喜んでくださるでしょうか?」

 高級な物を見慣れているお二人に、これはあまりにも質素なのでは・・・?

「『マリー様の手作り』だということが重要なのです。あと、『星の加護』のおまじないも忘れないように。内容は、『成功・健康』でよろしいと思います。他にも色々ございますが、そちらはマリー様の判断で」

「おまじないまで必要でしょうか?」

「ええ、お二人に『星の加護』について説明した以上、そのままでお渡しすることはありえません。お渡しする時に、『成功と健康をお願いしました』とおっしゃれば、感激すること間違いありません!」

「では、そうします・・・」

 熱く語るメアリには逆らえませんでした。

次回で流星群ネタは終わらせる予定です。

もうしばらくお付き合い下さい。

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