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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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33/53

ジェームス兄様

 長兄のジェームス兄様がコテージを尋ねてきました。

「お兄様がこちらにいらっしゃるなんて、珍しいですね」

「それは、マリーが実家うちに帰って来ないから。せっかく、色々と買って帰ってき来たのに、渡せないじゃないか」

 お兄様が持ってきたのは、王国の西部地域の工芸品の数々。

 中でも気になったのが、レースを使った小物類。ハンカチやリボンなどです。

 レース産業が盛んな地域らしく、色々な種類のレースが作られているそうです。

「安くて手に入りやすい物を選んできたぞ。最近はこういった物に興味があるんだろう?ロジャーから聞いた」

「はい。お兄様、ありがとうございます」

 王都では、見ない柄もあります。

 メアリにお願いして、『デイジー』に持っていってもらいましょう。


「お兄様は西部でお仕事だったのですか?」

「西部の王国領にある古城の修繕をすることになって、修繕箇所などの調査。今は国境警備の兵士の宿舎や、僕のように西部地区に仕事で行く王国の役人の宿泊施設になっているんだけど、老朽化が酷い箇所があってね」

「そうなんですか。そこは、どんな所なのですか?」

 王都と伯爵領のある南東部にしか行った事が無いので、西部に何があるのか知りません。

「精霊伝説のある森と湖がある、美しい場所だよ。ブドウなどの果物の栽培が盛んで、それで作った果実酒やドライフルーツはおいしいよ。果実酒は実家にあるからね」

 飲みたかったら帰って来い、と、言うことですね。


「興味があるのだったら、今度、一緒に行くか?馬車で五日はかかるが・・・」

 往復で10日。滞在を考えると、最低2週間は必要です。

 レース製品が気になりますので、『デイジー』の商品の仕入れを理由に、王妃様に休暇のお願いをしましょう。

「是非、お願いします」

「そうか。冬は大変だから、春になってから行こう」


 その後、ジェームス兄様は、西部の王国領周辺の素晴らしい場所や、おいしい食べ物のことを語って、帰って行きました。

 王妃様には、三週間の休暇をお願いしようと思いました。



***************


 ―― 宰相執務室にて ――


「ジェームス、今回の調査、ご苦労だった」

 宰相の執務室の中には、僕と宰相であるサザランディー候の二人きり。

「いえ、気になる箇所をじっくり調べられたので、楽しかったです」

 修繕箇所は、専門家に任せて、僕が調べたのはそれ以外。

「お目当ての物は見つかったかい?」

「入口は見つけました。中は崩れている可能性もあるので、今回は諦めました」


 僕が探していたのは、城にある隠し通路の入口。


 元々、この城は、かつてあった小国の物。我が王国とは良好な関係を築いていた国だった。

 しかし200年ほど前に隣国から攻撃を受け、王族達は使用人達を逃がした後、城の敷地内にあった礼拝堂に篭り、建物に火を着けたと言われている。

 城を占拠した隣国の軍だったが、数日後には、我が国の軍にあっけなくやられてしまう。

 この戦争に乗じて、隣国では革命が起こっていたのだ。

 革命の知らせを聞いた兵士達の多くは、すぐに投降してきたので、大きな被害を出さずに戦争を終わらせることが出来た。

 実は、小国の王族達、逃げることが出来ている。

 礼拝堂に、隠し通路の入口があり、そこから逃げたのだ。

 礼拝堂を焼いたのは、入口を敵から隠すため。

 その後、隣国から城を奪い返した我が国が、王族慰霊のためと称して入口を隠すように、再び礼拝堂を建てたのだ。この事は、一応、我が国の重要機密事項となっている。

 それを、宰相殿はともかく、何故、僕が知っているのかと言うと、ヴェニディウム伯爵家は小国の王族の子孫にあたるのだ。

 小国から逃げてきた王族達は、祖国に戻ることなく我が国の民として生活することを望んだらしい。その中の一人が、伯爵家に嫁いできたのだ。

 この事は、伯爵家の当主になる者にしか知らされない。

 今回の修繕を機会に城の調査をすることになり、秘密を知っている僕が担当となった。 

 まあ、表向きは、城にある調度品の調査と、備品の充実のための見積書作成となっている。


「他にも面白そうな場所を見つけたので、そちらも次回は調査してきます。出来れば、仮設の転移装置を設置して頂けるとありがたいのですが・・・」

 片道馬車で五日は少々キツイ。

「そうだな。調査期間中だけでも設置するようにしよう」

 これで、資料を調べたい時にはすぐに戻って来ることが出来る。


「それから、君がロジャーに大学の進学者数を調べるように仕向けてくれたおかげで、例の件を自然に彼らに任せることが出来たよ」

「それは良かったです。彼らが気付かなかったらどうしようかと思っていましたから。特に殿下」

「その時は、別の方法を考えたよ。君の力を借りることにはなっていたとは思うがね」

「これ以上仕事が増えるのは、遠慮したいです。最近、休み取っていないんですよ。春にマリーを西部に連れて行く約束をしたので、一月ほど休み下さい」

「私は構わないよ。ただ、視察を理由にして、同行したがる者がいると思うが・・・」

 誰かは、想像がつく。

「その者の為に、仕事を見つけてきてあげますよ。東部の港町あたりに面白い事がありますから・・・」

 今回は、ロジャーに理由を話して協力してもらうかな。たぶん、喜んで協力してくれるだろう。

「ほう。詳しく教えてもらおうか」

 宰相殿も愉快そうだった。

  

 

 

約2週間ぶりの更新です。

簡単な設定しか考えていなかった長男だったので、いざ、登場させようと思うと、なかなか話が出来ず、更新が遅くなってしまいました。

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