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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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仲直り

 木々の葉っぱが赤や黄色に色付く、今日このごろ。

 秋が深まったな~と、感じてしまいます。

 王宮の庭園内にある、落葉樹の並木道の木々の葉は、オレンジ色です。

 それが、ハラハラと舞い落ちる様子は素敵です・・・が、石畳に落ちた葉を集めるのは大変です。

 こんな時、役に立つのが風魔法です。

 ただ、強さや風を当てる角度の調節が難しいです。

 強かったり、角度を間違えると、余計に広がってしまいます。あと、樹に残っている葉っぱを落としてしまったり・・・。


 ちょうど良い強さと角度を見つけるために、久しぶりにシオン先生と魔法の特訓をしました。

 無茶をすると疲れて倒れそうになってしまいますが、そうなると、シオン先生にお姫様抱っこされてしまう可能性があるので、注意します。

 疲れてきたら、樹に抱きつきます。しばらくすると疲れが取れるのです。植物が癒してくれているようです。

「気付いてしまったか・・・」

 何故か、シオン先生が残念そうです。


 わたしがこうやって葉っぱを集めることで、デニスさん達庭師さんの仕事がはかどります。

 お礼に、王妃様の庭園の植え込みの剪定や、樹木の植え付け、敷石の設置などをして下さってます。

 なので、ここ数日、わたしは王妃様の庭園で作業をしていません。

 その為か、あのパーティ以来、エドワード様と会っていません。


 エドワード様は、コテージに毎日のように来られているようです。

「今日も、エドワード様、いらっしゃいましたよ」

「そうですか・・・」

 一日中、出かけている訳では無いのですが、何故か、わたしがいない時にエドワード様がいらっしゃるようです。

 完全に、すれ違っています。

 わたしが、心のどこかでエドワード様に会いたくないと思っている所為でしょうか・・・?


「マリー様、お出かけしましょう」

 元気の無いわたしを見て、ローラさんが誘ってくれました。

「出かけるって、どこにですか?」

「こういった事の相談に乗ってくれる人の所です」


 連れて行かれたのは、『デイジー』です。


 今日は、お客様が多いようです。

「いらっしゃいませ。あ、マリーさん。しばらく待っていてもらえませんか?」

 お客様の対応に追われていたクララさんが、こちらに気付きました。

 クララさんが落ち着くまで、お店の中を見て回ることにしました。

 お客様が多いのは、カウンターに近い場所だけで、他はむしろ空いています。

「あそこに何があるのかしら?」

 とても、気になります。

「ああ、例の髪飾りじゃないですか?侍女の間で話題ですよ~。どの色にするかって。あちらに見本の品があるようですね。それを見てから注文しようとしている人達じゃないでしょうか?」

 バラ園で、クリスティーヌ達が話題にしていた物ですね。

 彼女達も注文したのでしょうか?


「マリーさん、お待たせしました。奥へどうぞ」

 後は、お婆様とお母様で接客は大丈夫だということで、わたし達は奥の応接室へと行きました。


「先ほどのお客様達は、髪飾りの注文の方ですか?」

 ローラさんが尋ねました。

「そうなんですよ。まさか、ここまで人気が出るとは思っていなかったんです。注文制にしていて良かったです」

「一番人気は、やはり『ピンク』ですか?」

「そうですよ。主人公と同じ、基本の『ピンク』です」

 わたしは、まだ本を読んでいないので、ローラさんとクララさんの会話についていけません。

 そもそも、“基本”とは何でしょう?

 不思議そうに聞いているわたしにクララさんが説明してくれました。

「それぞれの色には、花の色と同色の決まった石が一つ付いているんです。『ピンク』ならローズクオーツです。これが“基本”です。この石の数や色を自由に変えることも出来るんです。その分値段は違ってきますけど、こちらを注文する方もいらっしゃるんですよ」

「そういえば、友人が『完全注文品オリジナルを作ってもらおうかしら』って言ってましたが・・・」

「ええ、そういった方もいらっしゃいます。青や緑で作られたり、花の色を何色か組み合わせて注文される方もいらっしゃいましたよ」

 クリスティーヌは、何色で作ったのでしょうか?今度、手紙で尋ねてみましょう。


「ところで、マリー様。本日はどういった御用でしょうか?」

「ちょっとクララさんにご相談したい事が・・・」

 わたしは、簡単にバラ園でのことを話しました。

「エドワード様に謝りたいのですが・・・・・・、どうしたらいいんでしょうか?」

 クララさんは、しばらく考えてから、

「プレゼントを贈るのも一つの方法ではあるのですが・・・、難しいですねぇ・・・」

 と、呟きました。

「マリー様、相手の方がお好きな色とかお分かりですか?あと、ご趣味とか・・・」

「・・・たぶん、青かと・・・。趣味は、読書ではないでしょうか・・・」

 自信がありません。

「う~~~ん。すみません、マリー様。思いつきません」

 クララさんは申し訳なさそうです。

 わたしでも思いつかないのに、クララさんだと尚更のことでしょう。

「マリー様が選ばれた物でしたら、何でも喜ばれると思いますよ。エドワード様は」

と、ローラさん。

「そうでしょうか・・・?」

 色々悩んで、蓋に四葉のクローバーが彫られている、木製の小物入れを選びました。


「それから、マリー様。お守りです」

 クララさんが、小さな袋を渡してくれました。

「きっと、仲直りできますよ」




 さて、プレゼントは用意できましたが、どうやって、お渡ししましょう。

 そう、考えながらコテージに戻ると、

「マリー様、エドワード様がおみえです」

と、メアリに出迎えられました。

 まだ、心の準備が出来ていないのに・・・。


「すみません、お待たせしてしまって・・・」

 応接室にエドワード様がいらっしゃいました。

「いや、それほど待ってはいない・・・」


 しばらく、沈黙が続きました。


「庭園を散歩しながら話そうか・・・」

 エドワード様が提案されました。

「そうですね・・・」

 植物を見ながらなら、自然と話せるかもしれません。

 しかし、なかなか話すきっかけが見つかりません。

 ふと気付くと、バラ園に来ていました。


「あの・・・。エドワード様、先日はすみませんでした・・・」 

 やっと話すことが出来たのは、あのパーゴラの前でした。

「いや、私のほうこそ、驚かせてしまったみたいで・・・。あと、具合が悪いのを気付けなくて・・・。ロジャーから熱を出したと聞いたのだが、大丈夫か?」

 心配そうな顔で、わたしを見つめてきました。

「一晩寝たら、治りました。ご心配かけました」

 エドワード様が怒っていないことに安心しました。

「最近、元気が無いとも聞いていたんだが・・・、大丈夫そうだな。今日は、どこに出かけていたんだい?」

「『デイジー』に買い物に。・・・あっ・・・」

「・・・?」

「あの・・・、エドワード様にプレゼントを買ったのですが・・・、コテージに置いてきてしまいました・・・」

「私に・・・?」

「はい・・・。先日のお詫びに・・・。気に入っていただけると良いのですが・・・」

「お詫びなんて気にせずとも良いのに・・・。でも、せっかくマリーが選んでくれた物だ。有難く頂く。絶対に気に入る!」

 まだ、実物を見ていないのに、自身有り気におっしゃいました。


「この前は、マリーと二人(・・)でバラを楽しみたかったのだが、それが出来なくて残念だった・・・」

 やはり、少し怒っていらしゃったようです。

「だから、今日は、私が満足するまで付き合ってもらう!この前は、離してしまったが、今日は離さない」

 そう言うと、笑顔でわたしの手を握ってきました。

 離さないって、わたしの手のことなんですね・・・。

 見頃が過ぎて少し寂しくなったバラ園を一周した後、コテージに戻るまで、エドワード様と手を繋いだままでした。



***************



「エドワード。口元が緩んでいる・・・」


 昨日まで、

『マリーに避けられているかもしれない・・・』

と、落ち込んでいたのだが、今日は無事に会えて仲直りできたようだ。

 マリーから貰った小箱を眺めながら、にやけている。

 何か嬉しい事でもあったのだろう。


 この数日、マリーに会って話をするためにコテージに通い続けていた為、仕事が滞っている。

「誤解も解けたようだし、今までに溜まった仕事が終わるまでは、コテージに行くのは禁止な」

「それは困る!」

 エドワードが慌てる。

「そう思うんだったら、にやけてないで手を動かせ!」


 全く・・・。振り回されるこっちの身にもなってみろ!!

 

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