それぞれの反省
昨日は、サイラス様に『エドワード様に見つからない』ようにお願いされていたのに、見つかってしまいました。
さらに、その後気分が悪くなり、熱まで出してしまうとは・・・。
色々と油断してしまっていたようです。
『エドワード様に見つかってしまった』ことについて。
サイラス様とロジャー兄様に頼りきっていた部分が大きかったようです。
バラ園で、座る場所にも問題がありました。
パーゴラの位置は、バラ園の奥。
わたし達がお茶を楽しんでいる間、バラ園を訪れた方もいらっしゃいましたが、わたし達がいる場所まではいらっしゃいませんでした。
そのため、クリスティーヌ達の話を聞くことに夢中になってしまい、エドワード様の気配に気付かなかったのかもしれません。
エドワード様が現れた時は、焦りました。
さらに、エドワード様に、「探したよ・・・」と言われた時などは、自分でも『血の気が引く』感じが分かってしまいました。
頭の中は、『失敗してしまった』という思いでいっぱいになり、何とかこの場から逃げ出さなければと考え、何とか上手くいったのですが・・・。
昨日が涼しかったことと、ここ数日の寝不足などが重なって、熱を出してしまったようです。
十分眠ったので熱は下がりましたが、心配性のロジャー兄様の言いつけで、数日は実家で静養することになりました。
今は、王宮に戻りたくないです・・・。
エドワード様と顔を合わせられません。
わたしは、“わたしのことを探して下さった”エドワード様の元から逃げてしまいました・・・。
エドワード様は、きっと怒っていらっしゃるでしょう・・・。
もしかしたら、嫌われてしまったかも・・・。
正直にお話して謝れば、許して下さるでしょうか?
でも、そうなると、サイラス様にお願いされたことを話さなくてはいけません。たぶん、エドワード様には秘密のことのはずです。
どうすれば良いのでしょうか・・・?
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―― ロジャーの反省 ――
「お兄様、わたし、どうしたら良いのでしょうか?」
昨夜、熱を出してしまった妹の様子を見るために、部屋を訪れると、かなり落ち込んでいた。
昨日のことを気にしているようだ。
「サイラス様にお願いされたこと失敗してしまいました・・・」
「そのことなら、大丈夫。サイラスは気にしていないから」
エドワードが“話をしないといけない相手”と話が終わるまでの間、マリーには離れていてもらうことになっていた。
終わった時点で、サイラスか僕がマリーを呼びに行くことになっていたのだが、それより先にエドワードがマリーを探しに行ってしまった。
マリーは真面目なところがあるから、サイラスから終わったことを聞かされるまでは、『お願い』を忠実に守ろうとするだろう。
案の定、マリーは失敗したと思っていた。
「それから、わたし、エドワード様から逃げてしまって・・・。エドワード様を怒らせてしまったかもしれません・・・。もしかしたら、嫌われたかも・・・」
「・・・・・・」
どうやら、失敗したことよりも、こちらの方が重大らしい。
エドワードより先に、僕かサイラスがマリーと接触することが出来ていれば、マリーも落ち込むことは無かっただろう。
エドワードに今回の計画を秘密にしていたのが不味かった。
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―― サイラスの反省 ――
エドワードの元気が無い。
「マリーは大丈夫だろうか・・・?」
昨日、マリーが倒れかけ、ロジャーに支えられていたのを見ていたようだ。
「ロジャーが付いているから、大丈夫だろう」
「マリーに嫌われているのか・・・?」
と、頭を抱えて落ち込んでいる。
元気が無い、主な理由はこれか。
マリーが、エドワードの元から走り去ってしまったことがショックだったようだ。
「マリーの友人達にバラを贈ったのがいけなかったのか・・・?」
そのことでマリーは怒ったりはしないと思う。
落ち込み方がひどいので、昨日の計画について正直に話すことにした。
「つまり、俺が、サイラス達より先にマリーを探しだしたことが原因なのか?」
マリーに、『エドワードに見つからないように』と、お願いしていたことと、その理由を説明した。そして、俺達より先にエドワードがマリーの元へ行ってしまったことで、マリーは「失敗した」と思ってしまい、友人達とエドワードが会話できるようにその場を去ったのではないかと話した。
「お前に計画を秘密にしていた俺達も悪いのだが・・・。まさか、いつの間にかいなくなるとは思っていなかったから。すまない」
「まあ、いままでの俺の態度からすれば、秘密にされてもしょうがないか・・・。次からは話して欲しい。ちゃんと対応するから・・・」
マリーの昨日の謎の行動に納得し、安心した表情になった。
マリーのことで一喜一憂するエドワードの対応が面倒なので、マリーに関することは、とりあえず報告しよう思った。
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―― エドワードの反省 ――
「わたし、あちらに気になる花があったので、近くで見てまいります!」
握っていた手を離さなければ良かった・・・。
マリーは、急ぎ足で入口へと向かって行く。
追いかけたかったが、マリーの友人達を蔑ろには出来ない。
サイラスとロジャーがやって来た。
マリーがふらつき、それをロジャーが支えていた。そういえば、握った手が冷たかった。具合が悪かったのだろうか?
「すみません、お嬢さん方。エドワードに用がありますので、連れて行きます」
サイラスがやって来て、その場を離れることが出来た。
昨日の、マリーの態度が気になって仕方が無い。
俺を避けているようだった・・・。
サイラスに相談したところ、理由が分かった。
秋のガーデンパーティの開催理由は理解しているから、“公務”と思って務めることにはしている。
マリーがいると、その“公務”に色々と支障が出そうだと考えたらしい。主に、俺がマリーばかりと会話をしてしまう・・・。
計画を話せば、俺が反発すると思って、秘密にしていたらしい・・・。
サイラス達が、俺の“公務”が終了したことをマリーに伝えるよりも前に、俺がマリーに会いに行ってしまったのがいけなかったらしい。
計画を知らなかったとはいえ、せめて、サイラスにマリーを探しに行くことを伝えていれば良かった・・・。
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