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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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31/53

それぞれの反省

 昨日は、サイラス様に『エドワード様に見つからない』ようにお願いされていたのに、見つかってしまいました。

 さらに、その後気分が悪くなり、熱まで出してしまうとは・・・。

 色々と油断してしまっていたようです。


 『エドワード様に見つかってしまった』ことについて。

 サイラス様とロジャー兄様に頼りきっていた部分が大きかったようです。

 バラ園で、座る場所にも問題がありました。

 パーゴラの位置は、バラ園の奥。

 わたし達がお茶を楽しんでいる間、バラ園を訪れた方もいらっしゃいましたが、わたし達がいる場所まではいらっしゃいませんでした。

 そのため、クリスティーヌ達の話を聞くことに夢中になってしまい、エドワード様の気配に気付かなかったのかもしれません。


 エドワード様が現れた時は、焦りました。

 さらに、エドワード様に、「探したよ・・・」と言われた時などは、自分でも『血の気が引く』感じが分かってしまいました。

 頭の中は、『失敗してしまった』という思いでいっぱいになり、何とかこの場から逃げ出さなければと考え、何とか上手くいったのですが・・・。


 昨日が涼しかったことと、ここ数日の寝不足などが重なって、熱を出してしまったようです。

 十分眠ったので熱は下がりましたが、心配性のロジャー兄様の言いつけで、数日は実家で静養することになりました。


 今は、王宮に戻りたくないです・・・。

 エドワード様と顔を合わせられません。

 わたしは、“わたしのことを探して下さった”エドワード様の元から逃げてしまいました・・・。

 エドワード様は、きっと怒っていらっしゃるでしょう・・・。

 もしかしたら、嫌われてしまったかも・・・。

 正直にお話して謝れば、許して下さるでしょうか?

 でも、そうなると、サイラス様にお願いされたことを話さなくてはいけません。たぶん、エドワード様には秘密のことのはずです。

 どうすれば良いのでしょうか・・・?



***************


 ―― ロジャーの反省 ――


「お兄様、わたし、どうしたら良いのでしょうか?」

 昨夜、熱を出してしまったマリーの様子を見るために、部屋を訪れると、かなり落ち込んでいた。

 昨日のことを気にしているようだ。

「サイラス様にお願いされたこと失敗してしまいました・・・」

「そのことなら、大丈夫。サイラスは気にしていないから」

 

 エドワードが“話をしないといけない相手”と話が終わるまでの間、マリーには離れていてもらうことになっていた。

 終わった時点で、サイラスか僕がマリーを呼びに行くことになっていたのだが、それより先にエドワードがマリーを探しに行ってしまった。

 マリーは真面目なところがあるから、サイラスから終わったことを聞かされるまでは、『お願い』を忠実に守ろうとするだろう。

 案の定、マリーは失敗したと思っていた。


「それから、わたし、エドワード様から逃げてしまって・・・。エドワード様を怒らせてしまったかもしれません・・・。もしかしたら、嫌われたかも・・・」

「・・・・・・」

 どうやら、失敗したことよりも、こちらの方が重大らしい。


 エドワードより先に、僕かサイラスがマリーと接触することが出来ていれば、マリーも落ち込むことは無かっただろう。

 エドワードに今回の計画を秘密にしていたのが不味かった。



***************


 ―― サイラスの反省 ――



 エドワードの元気が無い。

「マリーは大丈夫だろうか・・・?」

 昨日、マリーが倒れかけ、ロジャーに支えられていたのを見ていたようだ。

「ロジャーが付いているから、大丈夫だろう」


「マリーに嫌われているのか・・・?」

と、頭を抱えて落ち込んでいる。

 元気が無い、主な理由はこれか。

 マリーが、エドワードの元から走り去ってしまったことがショックだったようだ。

「マリーの友人達にバラを贈ったのがいけなかったのか・・・?」

 そのことでマリーは怒ったりはしないと思う。


 落ち込み方がひどいので、昨日の計画について正直に話すことにした。


「つまり、俺が、サイラス達より先にマリーを探しだしたことが原因なのか?」

 マリーに、『エドワードに見つからないように』と、お願いしていたことと、その理由を説明した。そして、俺達より先にエドワードがマリーの元へ行ってしまったことで、マリーは「失敗した」と思ってしまい、友人達とエドワードが会話できるようにその場を去ったのではないかと話した。


「お前に計画を秘密にしていた俺達も悪いのだが・・・。まさか、いつの間にかいなくなるとは思っていなかったから。すまない」

「まあ、いままでの俺の態度からすれば、秘密にされてもしょうがないか・・・。次からは話して欲しい。ちゃんと対応するから・・・」

 マリーの昨日の謎の行動に納得し、安心した表情になった。


 マリーのことで一喜一憂するエドワードの対応が面倒なので、マリーに関することは、とりあえず(・・・・・)報告しよう思った。




***************

 

 ―― エドワードの反省 ――



「わたし、あちらに気になる花があったので、近くで見てまいります!」

 握っていた手を離さなければ良かった・・・。

 マリーは、急ぎ足で入口へと向かって行く。

 追いかけたかったが、マリーの友人達をないがしろには出来ない。

 サイラスとロジャーがやって来た。

 マリーがふらつき、それをロジャーが支えていた。そういえば、握った手が冷たかった。具合が悪かったのだろうか?


「すみません、お嬢さん方。エドワードに用がありますので、連れて行きます」

 サイラスがやって来て、その場を離れることが出来た。



 昨日の、マリーの態度が気になって仕方が無い。

 俺を避けているようだった・・・。

 

 サイラスに相談したところ、理由が分かった。


 秋のガーデンパーティの開催理由は理解しているから、“公務”と思って務めることにはしている。

 マリーがいると、その“公務”に色々と支障が出そうだと考えたらしい。主に、俺がマリーばかりと会話をしてしまう・・・。

 計画を話せば、俺が反発すると思って、秘密にしていたらしい・・・。

 サイラス達が、俺の“公務”が終了したことをマリーに伝えるよりも前に、俺がマリーに会いに行ってしまったのがいけなかったらしい。

 計画を知らなかったとはいえ、せめて、サイラスにマリーを探しに行くことを伝えていれば良かった・・・。



  


読んで下さり、ありがとうございます。


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