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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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秋の花市

「エミリー姉さん、リズ姉さんとジミーさんがとても仲睦まじく見えるのは、私の気のせいでしょうか?」

 隣のエミリーさんに小声で尋ねました。

 私とエミリーさんの前方には、リズさんと庭師のジミーさんが仲良く手をつないで歩いています。

「気のせいではありませんよ。二人は恋人同士ですから」 

 小声で返事がきました。

「マリー様、周りを見て下さい」

 エミリーさんに小声で言われて、周囲を見回すと、広場には多くの恋人達カップルの姿がありました。

 どの恋人達カップルも、仲睦まじげに花を選んでいるようです。

恋人達カップルの割合が多くないですか?」

 花市と聞いて、私は園芸好きな高齢の方が多くいらっしゃるものだと思っていたのですが、そんな方達よりも若者、特に恋人達が多く見受けられます。

「それはですね、ある噂があるんです」


 “秋の花市で購入した苗(種や球根)が無事冬を越し、花が咲くと幸せになれる”


「恋人同士で購入した場合は『結婚できる』、片思い中なら『恋が実る』、恋人募集中なら『運命の相手が見つかる』となっています」

 だからでしょうか?花を選ぶ若いお嬢さん方の目が真剣なのは・・・。

「今日、メアリとローラさんがお留守番の理由はもしかして・・・」

 恋人と一緒に来るためでしょうか?

「ローラは、温室に植える花を決めるための読書です。メアリさんは、恋人と休みを合わせるためらしいですよ・・・」

 メアリに関しては、当たっていたようです。お相手は、王宮の門番をしているそうです。

「それで、エミリー姉さんは・・・?」

 聞いてはいけないかなと思いつつ、つい、聞いてしまいました。

「わたしですかぁ?恋人いませんよ。想う相手もいませんし、しばらくは一人でいいと思ってますし。今は、恋愛よりもマリー様のお手伝いをすることが楽しいですから。・・・色んな意味で・・・」

「そうですか・・・。では、庭園が完成するまで、お付き合い下さいね」

「ええ、もちろん。それから、今日はわたしの側を離れないよう、気を付けて下さいね。変な輩がいますので・・・」

「変な輩・・・・?」


「そこのお嬢さん方。俺達と一緒に見て廻らない?」

 見知らぬ男性二人組が声をかけてきました。

「こんな輩のことです。無視しちゃって下さい」

 エミリーさんが小声で言いました。

「無視すんのかよっ」

 男達が間を詰めて来たところへ、

「うちの娘達に何か用か?」

 デニスさんが低音の凄みを利かせた声で男達に言いました。

 日々の庭仕事で真っ黒に日焼けした上、力仕事も多いので筋骨隆々な体格、さらに背も高い。

 デニスさんの強そうな見た目に気圧され、男達はそそくさと逃げて行きました。


 花市に行くことをエドワード様とサイラス様にお話したところ、お二人共、「付いて行く」とおっしゃったのは、これが理由でしょうか?お仕事がかなりあるらしく、側近の方に止められていました。

 お二人の代わりに、今日の花市には、デニスさんが一緒に来て下さいました。

 デニスさんなら、花のことも詳しいですし、父娘おやこに見えなくもないので、自然と共に行動できます。

 今日は、私とエミリーさん、リズさんは姉妹で、デニスさんがお父さん。ジミーさんはそのまんまリズさんの恋人という設定で行動します。だから、エミリー姉さん、リズ姉さんと呼んでいたのです。デニスさんのことを「お父さん」と呼ばないといけませんね。


「後ほど魔術庁のセイラさんと後輩の方が合流予定です」

 エミリーさんが教えてくれました。

 王宮を出る時に、シオン先生から乳白色の石が付いた指輪を受け取りました。「何かあったら石の部分を押すように」と言われました。セイラさん達は、たぶん、この指輪がちゃんと機能するか確認のためでしょう。


「それにしても、人が多いですね」

 食べ物の屋台も出ているので、昼に近付くにつれて人が増えているようです。

 私は、はぐれないようにエミリーさんと腕を組んで歩いています。

 何度か声をかけられましたが、その度にデニスさんが追い払ってくれます。とても頼りになる“お父さん”です。


「そこの彼女達、暇?」

 またですか。もう、ため息しか出てきません。強面の二人組でした。

「君達。お嬢さん方が嫌がっているじゃないか」

 無視を決め込んだところに、一人の青年が間に入ってきました。

 二対一で言い争っています。

「うわぁ。厄介なのに巻き込まれた・・・。マリー様、申し訳ございません。しばらく、わたしにお付き合い下さい。親方も分かっていますので、ご心配なく・・・」

 エミリーさんが、男達に聞こえないように小声で言いました。


「覚えていろよ!」

 男達が捨て台詞を残して去っていきました。いったい何だったのでしょう。

「大丈夫ですか?」

 助けてくれた?青年が声をかけてきました。

「ええ、助けてくださってありがとうございます。初めてなので、どこの花がいいか分からなくて、迷っていたところなんです・・・」

 普段は、はきはきとした口調のエミリーさんですが、今はか弱い女性を演じているようです。

「それなら、僕のお勧めでよければ、案内しますよ」

「よろしくお願いします」

 笑顔で答えながら、リズさん達やデニスさんに目配せしています。リズさん達は、軽く頷き、人ごみの中に消えていきました。


 青年が進む方向を見ながら、

「全くもう、分かり易いわね。もしかして、下っ端?とにかく、ただじゃ済まさないわよ・・・」

ブツブツ呟いています。

 青年は、市のある広場から離れて、人通りの少ない場所へと行くようです。

「たぶんですね、先ほど、わたし達に絡んできた男達と仲間です。人通りが少ない場所に連れて行って、金品を脅し取るつもりですね。親方達にまとめて捕まえてもらうので、しばらく我慢してくださいね」

 エミリーさんが説明してくれました。


「お嬢さん方、助けてあげたんだから、何かお礼をくれるんだろうな」

 人気が無い場所で、青年が凄んできましたが、エミリーさんから説明を受けていましたし、体格も声も大したことが無いので、全く怖くありません。逆に笑いをこらえるのに必死です。

 ですが、何を勘違いしているのでしょうか?相手には、恐怖で震えている様に見えているようです。

「わたし達が怖がると思っているの?おかしくて噴出しそうなんだけど・・・」

「なんだと・・・」

 エミリーさんの発言に怒った青年が、指笛を吹きました。

 物陰から、わたし達に絡んできた男達と他にも数人現れました。

「あら、そっちがその気なら、こっちだって容赦しないわよ。マリー様、指輪をお願いします」

 指輪の石を押すと、ヒュ~という音と共に、乳白色の煙が立ち上り、はるか頭上で バンッ と花火がはじけました。かなり大きな音です。

 その音に男達が怯んだ隙に、いつの間にか現れたデニスさん達に叩きのめされていきます。


「ローズマリー様、安全な場所に・・・」

 私の横にはセイラさんがいました。

 セイラさんと共に、少し離れた場所から捕り物を見学です。

 エミリーさんにすねを蹴られた青年が、悶絶しています。

「靴のつま先部分を丈夫に加工してあるんですよ。少々重いのが難ですが、護身用に良いですよ。ローズマリー様が今履かれている靴もそうですよ」

 セイラさんがとても楽しそうに説明してくれました。


「ゼータ、魔法で捕縛しちゃって」

 セイラさんが側に立っていた男性に声をかけます。

「分かりました。先輩」 

 ゼータと呼ばれた男性は、デニスさん達に叩きのめされて、気絶している男達に呪文を唱えました。

「牢屋に入るまでの間に逃げ出そうとすると、手足を動かすことが出来なくなるのはもちろんですが、かなり恥ずかしい状態になりますから。大勢の前で晒し者になって、罪を反省するといいわ」

 恥ずかしい状態・・・、晒し者・・・・。いったい、どんな術なのでしょうか?

 いつものセイラさんとは違う笑顔に、怖くて聞けませんでした。


「マリー様、申し訳ございません。せっかく楽しみにしていた花市なのに、つまらない事に巻き込んでしまいまして。無視することも出来ましたが、一般の者に被害が出てしまうのは避けたかったので・・・」

 エミリーさんが謝ってきました。

「いえ、私は無事ですし、エミリーさんの言うように、他の方が被害に合う事を避けることが出来たので良かったです。それにしても、リズさんもエミリーさんもお強いですね。驚きました」

「王宮の庭に不信人物が進入した時に対応できるように、わたし達は訓練を受けているんですよ。お祭りの時期は、今回の様に街の治安維持に協力したりするんですよ」

 だから、捕まえた男達の行動が分かったわけですね。


 色々ありましたが、その後は平和に過ごすことが出来ました。


「恋人達の間で人気の花は何ですか?」

 立ち寄ったお店の女性に尋ねてみました。

「一番はスズランだね。咲いた花を結婚式のブーケに使うとか言ってたわね。ところで、お嬢さんは相手はいるのかい?」

「相手・・・ですか?」

 恋人としての相手でしょうか?それとも好きな人という意味でしょうか?

 ある人の顔が浮かびはしたのですが・・・。

「おや、いないのかい。なら、ピンクのチューリップはどうかい?花言葉が『愛の芽生え』だから、花が咲く頃には、いい人が見つかるかも知れないよ」

「それなら、わたし買います」

 女性の説明を一緒に聞いていたセイラさんが言いました。

「僕の立場は・・・?」

 ゼータさんが小声で呟いていました。

 そんなゼータさんに、お店の女性が赤のチューリップをこっそりと勧めていました。花言葉は『愛の告白』だそうです。ゼータさんは、もちろん購入していました。


 私は、結局、庭園の花壇に植える苗と、種をいくつか買っただけでした。


 リズさん達とメアリ達はやはり、スズランを買ったそうです。

 


 

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