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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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会 議

今回は少々重苦しい内容です。

サイラス視点です。

 会議室には、錚錚そうそうたる人物達が集められた。この王国で、重要な職に就く者ばかりだ。

 ただ一名、場違いな人物がいる。階級は問題ないのだが・・・。

 その本人、何故、この場に呼ばれたか理解していないようだ。とても、ご機嫌な様子。まあ、コチラとしては、勘違いしてくれている方が有難いのだが。

 他の人物達は、彼がこの場に呼ばれたことを薄々理解しているようだ。

 俺とエドワードを、さりげなく見ている。



 国王陛下が見守る中、

「本日は、私がこの場を取り仕切ることを許可された」

 エドワードのこの宣言により、会議が始まった。

 

「ここ、数ヶ月、王宮に魔法による攻撃が数度あった」

 エドワードの言葉に室内がざわめいた。

 俺は、エドワードの後ろの、室内を見渡せる位置に立ち、出席者達の表情を窺う。

「術を行った魔術師は、すでに捕まえてある。詳しくは、魔術庁長官に説明してもらう」

 エドワードが、シオン殿に視線を向ける。それを受けて、シオン殿が話し始めた。


「今回の攻撃は、王宮内で働く特定の人物を狙ったものだった。術は、結界によって撥ね返したので、その人物には被害は無かった」

 引き攣った表情から一転、安堵の表情を見せる出席者達。結界の存在は知っていたものの、やはり心配だったのだろう。

「術を行った魔術師達は、結界が持つ機能により位置を特定し逮捕。撥ね返した術により負傷していた。取り調べによると、少ない情報で依頼を引き受けた結果、王宮に攻撃する形になってしまったようだ」

「少ない情報とは?」

 出席者の一人が質問する。

「名前のみ、だそうだ」

「よく、それだけの情報で受けましたな」

「情報が少ない分リスクが大きいので、高額な金額を要求すれば諦めると思っていたらしいが、払ってくれたらしい」 

 質問した者が納得したようで、頷く。 

「狙われた人物は、重要な任務に就いているため、王宮で働いていることを秘密にしている者だったことから、依頼主がその事を知らなかった可能性が出てくる。一度きりなら、忠告だけで済ます予定だったのだが・・・」

 シオン殿が周囲を見渡す。出席者達の表情が深刻なものとなっていた。


「知らなかったとは言え、数度、王宮に攻撃した。この罪を償って貰わなければならない・・・」

 エドワードの一言に、会議室の空気が重くなる。

 依頼主が貴族なら、爵位剥奪、領地没収。本人は流刑。直系の一族の成人男子は強制労働。女性や未成年の男子は修道院送りとなり、一生、そこで過ごすこととなる。この国では、16歳以上を成人としている。

 平民(めったに無いのだが)なら、財産没収で流刑。家族は、成人男性は強制労働。成人女性は修道院。幼い子供は、孤児院に預けられる。


「問題は、今回の依頼主は貴族階級の20歳未満の者だった」

 貴族階級には、貴族として相応しい行動が求められる。親の元でそれを身に付け、一人前の貴族として周囲から認められるのはだいたい20歳以上。なので、20歳未満は親に監督責任があるとされる。

 例外は、男性では爵位を継承している、女性では結婚している場合だ。


「従来の法では想定外の事なので、皆の意見が聞きたい・・・」

 エドワードが一息ついた。少し緊張しているようだ。


「・・・ベントリコーサ侯爵、何か無いだろうか・・・」

 エドワードが指名したのは、場違いな人物(・・・・・・)

 本人は、自分が指名された本当の理由を知らない。

 自分が、初めに指名されたことを喜んでいる様に見える。


「そうですねぇ。20最未満ですが、犯した罪は大きいですから、流刑でも構わないかと」

「それは、少々重くはないか?」

 流刑先は、かなり過酷な環境の島だ。その島で、自給自足の生活を送らなければならない。元貴族にとっては、絶望しか味わえない場所だろう。刑期は短くても10年。無事に戻って来る事が出来た者はいないと言われる・・・。

「いいえ、将来、同じことを繰り返さないとも限りませんので、妥当かと」

「・・・そうか・・・。もし、女性だった場合は?」

「女性だからと言って、刑を軽くする理由にはなりません!」

 何故、その様に得意気に話すことが出来るのだろう?

「では、一族の者、特に父親に対しては?」 

「親には監督責任がありますから、爵位剥奪と領地没収で宜しいのではないでしょうか?」

 ベントリコーサ侯爵は、自分の発言に満足そうだった。


「何か意見のある者は・・・?」

 エドワードの問いに、誰一人、発言しようとしなかった。

「では、今回の事件の処分は、これで決定で良いだろうか?」

 意義を唱える者はいなかった。

 エドワードが陛下に視線を向けると、陛下が黙って頷いた。

「それでは、ベントリコーサ侯爵の案を決定とする!」

 エドワードの宣言を聞いた侯爵は、得意気だった。自分の意見が認められた事が嬉しかったのだろう。


「では、ヴィクトリア・ゼサリア・ベントリコーサの犯した罪により、デミアン・バイケル・ベントリコーサに爵位と領地の返還を命ずる!!」


 先ほどまでの得意気な表情が一転、血の気が引く音が聞こえてきそうな程、みるみる青ざめていく。

「な・・・何かの間違いでは・・・?」

「秘密事項が多いため、遠回しに忠告をしておいたのだが、無駄だったようだ・・・」

 シオン殿が言った。魔石を受け取らない選択をしておけば、依頼主本人はここまで酷い刑を受けずにすんだのだが・・・。皮肉なことに、自分の父親によって、刑が決められてしまった。

「後ほど、娘と牢で対面すると良い・・・。それと、ベントリコーサ元侯爵には、王国に提出する書類に虚偽の記載をし、脱税の容疑がある。現在、確認調査中だ。まもなく罪が確定されるだろう。何か、言いたい事はあるか?」

 元侯爵は、口をパクパクさせるだけで、言葉が出てこなかった。

「では、牢屋へ・・・」

 入口に立っていた護衛の兵士達に両脇を抱えられるようにして、連れて行かれた。


 ドアが閉まる音と共に、今までの張り詰めた空気が緩んだ。


「終わった・・・。皆も申し訳ない。茶番につき合わせてしまって・・・」

 頭を下げたエドワードに、出席者達が慌てた。

「いえ、彼の悪い噂は私共の耳に入っていましたので、本日は何かあるとは思っておりました。まさか、本人に刑を提案させるとは思ってもいませんでしたが・・・」

 今回の件で、出席者達はエドワードの手腕を確認できたことだろう。

 



***************



 掌の中で強く光った石を見て、私は喜んだ。

 上手くいった様だ。

 そう思った瞬間、何か強い衝撃により、私は弾き飛ばされた。

 掌から落ちた石は、不気味なほど黒く変色していた。

「ヴィクトリア様どうされました?」

 大きな音を聞きつけて、執事や侍女が駆け込んで来た。術は終わったから、人が来ても問題ないわよね。

「大丈夫。倒れただけ・・・」

 そう返事をした私の顔を見て、侍女と執事は顔を引き攣らせた。

「・・・お嬢様・・・、そのお顔は・・・・・・?」

「私の顔がどうかしたの?」

 執事の問いに、自分の顔に手を当ててみた。いつもと違う・・・。何かがおかしい・・・。


「鏡を!」

 侍女に渡された鏡を見て、呆然とした・・・。

 肌は土気色に変色し、頬が痩せこけている所為で、目だけが異様に目立っている。額には謎の印が付いていた・・・。


「何なのコレはっ!!!あの魔術師を連れてきて!!元の顔に戻してもらうのよっ!!」

 どうして、私の顔がこんな事なっているの?

「・・・それは、難しいです。お嬢様・・・・・・」

 執事が辛そうに答えた。

「何故っ?!」

「その、額の印。・・・それは、王宮の結界に反応した証拠です・・・。王宮に対して悪意を持っていると判断されたようです・・・。王宮の魔術師でないと、無理です・・・」

「私、王宮には何もしていないわ」

 あの女が、王宮にいるはずは無い。

「王宮の関係者では無いのですか?重要な方には、魔術避けの魔道具が支給されていると聞いたことがあります・・・」

「たかが、伯爵家の娘よ。どうして王宮の関係者になるのよ!」

 理解できない。

「・・・まさか、ヴェニディウム伯爵家のローズマリー様ですか・・・?」

 執事の言葉は、不味い事をしてしまったと言いたげな口調だった。

「そうよっ!それが、どうしたと言うの?!」

 私の苛立ちは、最高潮に達した。

「あの方は、王立大学の特別講師だったはずです。王国の最重要施設のひとつである王立大学の講師ともなれば、対象となるでしょう・・・」

 王立大学を卒業したことが、どれほど意味がある事なのか思い知らされた。

 あの女の実力をエドワード様達は認めているのだわ・・・。私達が相手にされなかったのは、上辺だけの人間だったから・・・。


「間もなく、王宮よりお迎えが来るでしょう・・・」

「・・・・・・」

 執事の言葉に、うな垂れるしか出来なかった・・・。

  

 

 

重苦しい内容は苦手なので、時間がかかってしまいました。この様な内容の話は、たぶん今回限りの予定です。

次回からは、いつもの様なほのぼの(?)した内容です。


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