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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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23/53

○計画(side サイラス)

前回の話の裏、サイラス視点です。

後半は・・・。

2020/07/06 加筆・修正

 明後日の夜会のことを話し合うために、俺たちは、エドワードの執務室に集まった。

 エドワードと俺の他は、マリーの兄のロジャーと宰相閣下の息子ギルバート、魔術庁長官のシオン殿も来る予定になっている。

 

「申し訳ない。遅れてしまって。急遽、確認したい事が出来てしまって、それを済ませてきた」

「確認したい事とは?」

「マリーが捻挫した」

 シオン殿の言葉に、俺たちは息を飲んだ。

「念のため、結界に変化が無かったか確認してきたが、大丈夫だった」

 安堵のため息が漏れた。

 マリーの捻挫の原因が、自分で掘った穴に間違って落ちたという、ちょっと間抜けなものだった・・・。

「念のため一週間の安静と言っておいた。治癒魔法で治療も出来ると言ったが、夜会の事を口にしたら、拒否された。よっぽど出たくないんだろうな」

 シオン殿は、楽しそうに笑っていた。

 対して、エドワードは、少し残念そうだった。

「まったく、人騒がせな・・・」

 ロジャーが呆れていた。


 最近、王宮の結界に起きた魔法による攻撃は、マリーを狙ったものだった。

 どこかの令嬢が、エドワードと踊っているマリーに嫉妬して、魔術師に依頼していたようだ。どれも失敗に終わったが。

 依頼を受けた魔術師達は、シオン殿自らの尋問により、すべて白状した。

 魔術師達は、結界によって撥ね返された魔法で怪我をし、さらに額に印が付いたことで、初めて自分達の標的が王宮内にいたことを知り、呆然としていたらしい。逮捕しに行った衛兵たちが証言していた。


「知っていたら受けなかった」

 どの魔術師達も言ったらしい。

 王宮に魔法で攻撃することは重罪である。それを知らない魔術師はいない。

 依頼主からの情報は、名前だけだったそうだ。

 普通の伯爵令嬢が王宮にいることはないという先入観と、提示された金額に目がくらんで引き受けたと言っていた。

 情報が名前だけだと、怪我をさせることしか出来ないと言ったら、

「当日、参加できなくなればそれでいい」

と、依頼主は言ったそうだ。

 依頼主は、思いつきで行動するタイプのようだ。

 魔術師達も、怪我をさせるぐらいなら、万が一撥ね返されても治癒魔法で治せると思っていたようだが、王宮の結界は、基本倍返し。治癒魔法が効かない効果を付加して跳ね返していた。



 前回の夜会での依頼主の言葉から、懲りていないようだったので、罠を仕掛けさせてもらった。

 休業状態になっていた、犯人の魔術師の店を営業再開させる。

 以前に失敗したことに腹を立てている依頼主が、文句を言いに乗り込んでこないかと期待していたら、やって来た。いくつか用意していた中の、一番単純な罠に引っかかってくれた。

 店にいるのは、シオン殿の部下。


 今回の依頼も、今までと同じ。情報も名前のみ。

 学習能力無いのか?普通なら、もうちょっと情報を集める努力するんじゃないのか?

 

 依頼主に魔術師を信用させるためにも、術が成功したと思わせる必要がある。

 その為に、マリーが夜会を欠席していると思わせる必要が出てくる。

 マリーは、喜んで欠席するだろうが、問題は、王妃様をどうやって説得するか。あと、マリーと踊りたがっているエドワードだ。

 初めは、シオン殿の作った腕輪を使ってマリーを目立たなくして参加する方向で話を進めていたのだ。

 周囲に欠席していると思わせる為に、口裏を合わせる予定だったが、まさか本当に怪我をするとは・・・。


「そんなにマリーが心配なら、見に行ったらどうか?」 

 エドワードが、さっきから落ち着かない様子だったので、言ってみた。

「じゃあ、行ってくる」

 本当に、行きたかったんだな。すぐに部屋から出ていった。


 エドワードの行動力に半分呆れながら残された者達で話を進めることにした。


「あの、装置の性能、素晴らしかったですね」

 ギルバートが関心していた。

 夜会の会場に設置した、新型の映像記録装置のことだ。

 小型ながら、映像と音声を高精度で録画・録音できる。

 夜会の招待客には、『保安上、映像記録装置を設置している』と前もって通知していた。

 ただし、彼らが知っている映像記録装置は、旧型で録音の性能は今よりもかなり落ちる。大きさもかなり大きく、設置していることが一目で分かる。

 これを、会場の数箇所に設置。性能は新型と同程度に改良してある。

 そして、旧型装置の死角になる所に新型の装置を設置した。


 驚いたのは、魔道具の腕輪を着けていた俺とエドワードが映っていたことだ。

「あの腕輪は、人に認識させない様に出来る道具であって、装置には効かない」


 あの、ワイン事件も見事に映っていた。


 マリーに近づくワイングラスを持った怪しい令嬢数人。

 エドワードが、彼女達とマリーの間に入ったちょうどその時、令嬢がワインをかけた。ぶつかったフリをしていたようだたが、映像ではそうは見えなかった。同時にエドワードが腕輪に触れていた。

 突然、目の前に現れた様に見えたエドワードに、令嬢達は驚いているようだった。

 彼女達が、マリーにしようとしていたことをエドワードにやってしまったのだ。彼女達がマリーを標的にしていたことは、一目瞭然。一番知られたくない相手に、知られてしまったのだ。

 エドワードは、彼女達に氷のような冷たい視線を向けている。

 周囲から、かなりの注目を集めていた。

 

 この日以来、彼女達はすべての夜会を欠席しているそうだ。


 他にも、旧型装置の死角での秘密の会話が録音されていた。

 ほとんどが男女関係だったので、聞かなかったことにしておこう。

 一部、コチラが目を付けていた人物達の会話が録音されていた。今後の捜査の参考にしようと思う。


 明後日の夜会でも装置は設置予定。

 今回も、前回同様、招待客には通知してある。なので、決して盗撮などではない。


 装置の話題で盛り上がっていると、エドワードがご機嫌な様子で戻ってきた。

「その様子だと、マリーは大丈夫そうだな」

 俺が言うと、

「ああ、大丈夫だった。診察のこともあるので、王宮内の部屋に運んできた」

 楽しそうに答えた。


 話し合いの後、ロジャーと共にマリーの見舞に行った。

 彼女が着ている服は、一緒に出掛けた時に買ったものだった。

 それを見た俺は嬉しくなった。


「まったく・・・、心配をかけさせて・・・」

 ロジャーがマリーに説教を始めた。

「ごめんなさい・・・。サイラス様、笑わないで下さいよ・・・」

 つい、笑顔になっていたようだ。

 マリーはロジャーに説教を受けている姿がおかしくて俺が笑っていると思っているようだった。 

  

 



 夜会、当日。

 シオン殿が、魔法で気配を消して、依頼主の近くに付く。

 エドワードが、わざと依頼主の横を通ってロジャー、俺、ギルバートに近寄ることで、彼女の気をコチラに向ける。

 エドワードがロジャーに、マリーの欠席の理由を尋ねる。

 この時、シオン殿が魔法で、依頼主が俺たちの会話を聞き逃さない様にする。

 理由を聞いた俺たち三人が、「明日、見舞いに行ってもいいか」尋ねる。ロジャーの答えは、もちろん「構わない」だ。

 それを聞いたエドワードは、そのまま夜会の会場から出て行き、戻ってこない。

 これで、エドワードはマリー以外と踊る気が無いことを示すことになる。

 依頼主は、ひどい形相で帰って行ったそうだ。

 彼女は、俺たちの計画どおりに動いてくれるだろうか?

 

 エドワードが腕輪を使い、気配を消して戻ってくると思っていたのだが、最後まで現れなかった。

 たぶんあの部屋に行ったのだろう・・・。



 ***side??***



 悔しい、悔しい、悔しい、悔しい・・・・・・。


 今日の夜会は、あの女がいなかった。捻挫をしたらしい。

 今度の魔術師は、今までと違って優秀ね。

 そう、思って喜んでいたら、エドワード様は明日、あの女の見舞いに行くと言って、会場から去って行き、そのまま戻って来なかった。

 あの女が欠席さえすれば、エドワード様と踊るチャンスがあると思っていたのに・・・。

 あの女、いなくなればいいんだわ。エドワード様の前に、一生出れなくなればいいのよ。

 また、あの魔術師にお願いしなきゃ・・・。

 

  

 

 

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