◯初夏の夜会(裏)
2020/06/26 一部修正
***side シオン***
「またか・・・」
ため息が出てしまった。
結界に攻撃があったので、解析してみれば、術者以外は同じだった。
前回の術者は、魔術師専用の牢の中だから、今回は関係が無いのは明かだ。
職員も分かっていて、すでに犯人を捕まえに行っているらしい。
「エドワード殿下の所に行ってくる」
解析結果を持って、部屋を出た。
「シオン先生も夜会に参加されるんですか?」
不思議そうにローズマリーが尋ねてきた。
「私が居るのがそんなに珍しいか?一応、これでも男爵なんだが。まあ、正直なところ、遠慮したいのだが、今日はどうしても出なければならないんでな」
今回の夜会は、改良によって小型化された映像記録装置を会場に設置してある。新しく開発した魔道具の効果の確認もある。
「先生、もしかして、例の術使ってます?」
周囲に認識されにくくなる術を使っていることに気付いたらしい。
「こうしないと仕事にならないからな」
夜会だが、ダンスをしに来たわけではないので、声を掛けられないようにするためだ。
「仕事ですか。大変ですね」
「ローズマリーにも協力してもらうことになるがな」
「ダンスをせずに済むのなら喜んで協力します」
「いや、それは避けられない・・・・」
ローズマリーもダンスは嫌いか・・・。残念だが、ダンスはしてもらわないといけない。
その理由でもあるエドワード殿が近づいてきた。
彼には気配を消す魔道具を渡してある。効果は有るようで、誰も殿下の存在に気付いていない。
「エドワード様も術をかけているのですか?」
ローズマリーの質問に驚いてしまった。
「いや、殿下には魔道具をお渡ししてある。今日は、その道具の効果の確認だ。それにローズマリーは協力してほしい」
「と、言うわけで、マリー今日はよろしく」
殿下が嬉しそうに言った。
殿下は青色の石の効力を使用しているはずだ。それに気付くことが出来るのは・・・・。
「俺には全く気付きませんでしたね」
二人が去って行った後、近くにいたサイラス殿がつぶやく。寂しそうに見えたのは、気のせいだろうか。
彼にも同じ魔道具を渡していた。
「緑の石なら、気付いてもらえたかな?」
「友人として思われているなら、大丈夫だろう。私自身にかけている魔法が、そのレベルでかけている」
親しい人間で無いと、個人を認識できない。
「青だと、俺もエドワードもお互いに気付かないレベルなんですよ。それなのに、マリーはエドワードのことは気付けるんだ・・・」
私は、サイラス殿の背中を優しく叩いてやることしか出来なかった。
「落ち込んでいてもしょうがない。仕事をしますか」
そう言って、サイラス殿は去って行った。
さて、私も仕事をしなければ。
二回の魔法の攻撃の犯人達に尋問した結果、同じ依頼主だということが分かった。
依頼理由は、コチラの想像したとおり。単純すぎる・・・。
「金の使い道を間違っている。金だけじゃないな・・・。色々と間違っているか・・・」
知人なら、間違いを正してやるのだが、全くの他人だ。実害が無ければ放っておくのだが。
依頼主は、この夜会に必ず参加しているはずだ。そして、自分の計画が失敗したことを知るだろう。
依頼主を発見。近づいていく。
「また、失敗・・・・。使えない魔法使いだわ。もっと有能な魔法使いを探さないと」
俺の中で、要注意人物認定された。容赦せずに叩きのめす!!
近くにいたサイラス殿と目が合った。彼もかなり怒っているようだ。
さて、どうすれば、自分が犯した罪の重さに気付くことが出来るかな?
***side サイラス***
今日の夜会は、シオン殿が作ってくれた気配を消す魔道具を着けて参加する。
あまり気付かれたくないので、青い石を使用する。紫だと気配が消えすぎて、相手が全く気付かず、ぶつかってくるらしいので、人が多い場所には向かないらしい。
青でもかなりの効果だ。製作者のシオン殿には気付かれてしまうが、エドワードさえ気付かないのだから。俺も、エドワードのことは気付かなかったけどね。
「シオン先生も夜会に参加されるんですか?」
マリーがシオン殿に声をかける。
シオン殿の隣に俺が居るのは気付いていないようだ。魔道具の効果に驚いたと同時に、ちょっと複雑な気分になる。心のどこかで、マリーには気付いてほしかったのかも知れない。
マリーとシオン殿の会話をなにげなく聞いていたのだが、マリーの言葉に驚いた。
「エドワード様も術をかけているのですか?」
マリーの言葉で、初めてエドワードを認識できた。
シオン殿も、マリーがエドワードのことを認識できたことに一瞬驚いたようだったが、その後の表情は何か楽しんでいるようだった。
エドワードは嬉しそうな表情だ。
俺は、自分でも驚くほど落ち込んだ。
俺には全く気付かなかったのに、エドワードには気付いたのだ。
シオン殿が、俺の背中を優しく叩いてくれた。少し復活した。
落ち込んでいても仕方が無い。
今回の夜会は、例の領地の領主も参加している。
魔術庁の作った、映像記録装置で確認することも出来るのだが、近くで実際に観察していたほうが面白そうだ。色々な意味で。
彼を探している途中、シオン殿が言っていた“依頼主”を見つけたので、近寄ってみた。
相手は、俺に気付いていない。
「また、失敗・・・・。使えない魔法使いだわ。もっと有能な魔法使いを探さないと」
計画が失敗した理由は、術者の能力が原因と思っているようだ。懲りずに、まだ続けるらしい。
シオン殿と目が合う。
すごい殺気だ・・・。どの様に獲物を仕留めるか計画している冷たい微笑み・・・。
シオン殿のような美形が怒ると、すごい迫力だ。
この件で、少し忙しくなりそうだ。
目標の人物を見付け、少し離れた場所に立つ。
出てくる話は、自慢話。美食と装飾品のだ。
そんなのに使う金があったら、もっと学生に金を使え!
まぁ、そうやって自慢できるのも今のうち。
こちらの人物も、シオン殿に止めを刺して貰おうかな。




