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王妃専属ガーデナー  作者: 瑛美(あきみ)


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19/53

◯初夏のコテージ

2020/06/26 一部修正

 今日は、剪定を兼ねたハーブの収穫です。

 コテージ前の菜園もハーブ園も順調に育ち、いくらか収穫できるようになりました。

 採れたての野菜で作るサラダはおいしいです。


 収穫したハーブで、オイル漬けやビネガー漬け、シロップを作ります。

 化粧水なども作れますが、せっかくのフレッシュハーブです。料理に使ったほうが良いに決まっています。

 オイル漬けとビネガー漬けは、一ヶ月ほど熟成させる必要があります。出来上がるまでは、薬草園のセイラさんから頂いた物を使います。

 シロップは、ミントで作りました。

 このシロップを水で割って、魔法で冷やせば、これからの季節にピッタリの飲み物になります。

 手伝いに来て下さる男性の庭師さん達に振舞う予定です。


 昼食は、鶏肉の香草焼きのサンドイッチとハーブティーです。

 庭のテラスで頂きました。


 夏の間は、午後は屋外での仕事を控えることにしました。

 代わりに、温度が一定に保たれている温室での仕事をしていくことにします。

 屋内庭園となっている温室ですが、あまり植物は植えられていません。

 王妃様が、王太子妃の頃のように頻繁に温室を訪れることが出来なくなってしまったので、こちらにあった植物は、人が多く訪れる庭園に移動させたそうです。

 今の温室は、暑さが苦手な植物の鉢植えの避難場所となっています。


「どうしようか悩むわね」

 王妃様と私が好き本を元にする予定ですが、夏は暑さが苦手な植物を、冬は寒さが苦手な植物を避難させる場所も残しておきたいのです。

 立っていても良い案が浮かばないので、作業の合間にお茶が出来るように設置したベンチに座ります。ベンチは、温室のほぼ真ん中においてあります。

 温室の入口は4箇所。

 庭園側、つまりコテージ側の入口は、他より大きく開口できるようになっています。

 コチラを正面入口と考えて・・・。

 あれこれ一人で悩んでいると、メアリが呼びに来ました。

「エドワード様とサイラス様がいらっしゃってますよ」



「今日は、どうされたのですか?」

 お二人は、応接室で待っていました。

「トリテレイア王国から、マリー宛に荷物が届いていたから、それを届けに来た」

「お忙しい中、ありがとうございます。でも、明日、王妃様の所に行く予定でしたのに」

「ここの植物の成長を見たかったから、ついでだ」

 エドワード様が言いました。

「サイラス様もですか?」

「俺は散歩がてら、エドワードに付いて来た。ずっと座りっぱなしはさすがにキツイ」

 最近、忙しいと聞いています。

「では、お茶でも飲んで、ゆっくりして下さい。私は、こちらを早速開けさせていただきます」


 エドワード様から受け取った荷物を包んでいた紙を開きました。

 あちらの国の料理の本が2冊と、小説が5冊。

 サイラス様が小説を手に取りました。

「恋愛・・・小説?」

「何でも、あちらの国の若い女性の間で流行している小説らしいです」

 同封されていた、王太子妃殿下の手紙に書いてあります。

「大学をご案内したときに、『デイジー』のことをお話したら、興味を持たれたようです。・・・あら、こちらの小説を送ってほしいと書いてあります。クララさんに連絡して、ロゼッタさんに用意して頂かなきゃ。今度のお休みの日に取りに行くついでに、流行している雑貨も購入して、一緒に送ろうかしら」

 早速、メアリにお願いして、お願いの手紙を届けてもらいましょう。


「えーと、誰が取りにいくのかな?」

 サイラス様が尋ねてきます。

「え、もちろん。私ですよ。今、何が流行しているのか、直接行って見てみたいですから」

「一人で?」

「メアリか女性庭師のどなたかと一緒の予定ですが・・・?」

 何か私、おかしなことを言ったかしら?

「それなら、私が・・・・・」

「俺が一緒に行こう!」

 エドワード様が、何か言いかけたようですが、サイラス様が遮るように言いました。

「え?でも、サイラス様、お忙しいんじゃないのですか?それに、サイラス様とご一緒だと、目立ちます」

 サイラス様は、背が高く、顔立ちも整っていらっしゃるので、すごく注目されると思うのですが・・・。


「エドワードと行くよりはマシだと思うが?『デイジー』の事は、俺の担当だったからね。以前は定休日に裏口からの訪問だったから、実際に営業しているところは見たことが無かったからな。見に行きたいと思っていたのだが、さすがに、男一人で行くのは、俺でも恥ずかしい。目立つのが気になるのなら、先日の夜会でエドワードが着けていた腕輪をシオン殿から借りてくる」

「それなら、大丈夫ですね。でも、全く気付かれなくならないですか?私、独り言を言っている人に見られませんか?」

 夜会の時、エドワード様が周囲に全く気付かれなかった。そんな状態の人と会話している姿は、周囲からどう見られてしまうのだろう?

「いや・・・、調整が出来るらしい・・・」

「分かりました。では、お願いしますね。私の休みは、サイラス様に合わせますので。クララさんから連絡が来ましたら、お伝えします」


 エドワード様とサイラス様を見送り、わたしはクララさんへの手紙を書くために書斎に行きました。



   ***side サイラス***



「俺が行きたかった・・・・」

 エドワードが恨めしそうに言った。

「一応、お前は王太子だぞ。もし、何かあったらどうするんだ!?前回の様に定休日に行くのならともかく、営業日に護衛を何人も連れて行くのは迷惑だろうが!」

「だから、俺も腕輪を使って・・・」

「却下!!もっと自覚を持て。それと、お前が行ったらお店の人が困るだろうが・・・。そうなると、マリーが気をつかって仕事の話がまともに出来ないと思うが。せっかく頑張っているマリーの邪魔をしたいのか?」

「・・・ああ、分かった・・・」

 普段はしっかりしているエドワードだが、マリーが絡むと、時々自分の立場を忘れてしまうようだ。最近は特に・・・。

 それは俺も同じだな・・・。ムキになってエドワードとマリーが一緒に出掛けるのを阻止しようとしているのか・・・。


「心配するな・・・。俺がお前の代わりにマリーを必ず守るから・・・」

「ああ、頼む・・・」

 エドワードの真剣な表情から、マリーのことをどれだけ大切に想っているか窺うことができた。


「・・・必ず守るから・・・」

 

 

女性の庭師さん達は、午後から親方デニスさんのところに行っています。

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