金洛堂の戦い③ 黒い援軍
“カキーン”
「間一髪じゃったの。お嬢ちゃん大丈夫かえ?」
静音だった。赤鬼の斬撃を受け流し、静音が優しく微笑みいずみに手を差し伸べた。
「・・静音さん。ありがとう・・。」
いずみは感極まって静音に抱き着いていった。
「こら!抱き着くでない!暑苦しいぞえ。まだ、敵は残っておる。ここはわらわと共に戦うのじゃ。」
静音が優しい中にも厳しさを込めていずみに言った。
「はい!分かりました!」
涙を拭いて顔を引き締めていずみが言った。
「お嬢ちゃんの刀は念ずれば「蒼い炎」を放つことができるんじゃ。その炎を赤鬼の顔部分に間断なく放っていくのじゃ。
わらわはこの「氷刀 吹雪」が発生さる「氷の刃」を赤鬼の足部分にぶつけていくでな。ここは、力勝負ではなく一旦遠隔攻撃で弱らせるのじゃ。」
静音はそう言って少し離れた間合いから何やら念じた。そしたら静音の言ったとおりに「氷の刃」が発生し、赤鬼の足部分に刃が切り込んでいった。
それを見たいずみも、見様見真似で何やら念じた。するとどうだろう、いずみの刀から蒼白い炎が生じた。それをいずみは、静音に言われたとおりに赤鬼の顔部分にぶつけていった。足と顔を同時に攻撃された赤鬼はたまらない。顔を押さえながら、じたばたと暴れ始めた。
「どうやら効いているみたいじゃ。しばらくこのまま攻めるぞえ。」
「はい!」
静音といずみは間合いをとっての遠隔攻撃を続けていくようだった。
「もっと余裕で間に合うはずだったが、間一髪だったようだな。」
静音といずみに気を取られていた俺は、背後にもう1人来ていることに気がついていなかった。そこには、黒焔院隼がいた。
「お助けいただきましてありがとうございます。」
俺は心から黒焔院に礼を言った。
「礼はあとで静音に言うがいい。静音だけが「疾速の術」を使っていたので間に合ったのだ。使っていなかったら、あの小娘の亡骸を見ているところだったからな。」
「はい。」
さっきの光景を思い浮かべて俺は改めて鳥肌が立った。
「さて、俺たちもこの青い鬼を始末してしまうとしよう。こいつらは動作は鈍いが生命力が半端ないから、静音たちと同じ作戦を取るとしよう。
小僧の刀は念ずれば「紫の雷」を発生させることができる。それを相手の頭から落とせ。
俺のこの刀は「黒い衝撃波」を発生させることができる故、それを足元に畳みかける。やってみよ。」
「はい。」
俺は黒焔院に言われたとおりに念じてみた。黒焔院の言ったとおりに「紫の雷」が発生した。それを俺は青い鬼の頭の上から落とした。
それを見届けた黒焔院は素早く念じて「黒い衝撃波」を発生させ、青い鬼の足元目がけて放っていった。赤鬼と同じく、青い鬼も足と頭を同時に攻撃されてのたうちまわった。
「こっちも効いているみたいだな。小僧!しばらく続けるぞ!」
「はい!」
俺と黒焔院は「雷」と「衝撃波」をそれぞれ打ち込んで行った。
一方、寂明さんの方である。防戦一方だった寂明さんのところに一人の助太刀が加わっていた。密陀僧である。こちらは多くを語らずとも役割分担ができたみたいで、寂明さんがひきつけてバランスを崩させた髑髏兵を、密陀僧が腰骨を砕いていった。
状況は一変した。「黒祈仙術」一派の加勢により、劣勢から一気に優勢へと変わった。一方、劣勢を目にした豊原は焦っているようだった。戦況をキョロキョロと見まわして喚きまくっていた。そして、壺のところに戻って壺に向かってお呪いを唱え始めた。
「我が召喚に応じよ!」
しかし、壺は無反応だった。
「なぜだ!この肝心なところで何故反応せん!もう一度言う!我が召喚に応じよ!」
何度唱えても壺は無反応だった。それを見た黒焔院がボソッと言った。
「奴は「術」を乱用し過ぎたのだ。壺や自分の力にキャパがあることを知らなかったようだな。それに、あんなに冷静さを欠いた状況では成功するものも成功せんよ。」
鬼二体に対する遠隔攻撃が功を奏してきたのか、鬼二体はかなり弱ってきた。
「よし、頃合いだな。小僧は、青い鬼にとどめを刺せ。」
「いいのですか?」
「かまわん。早くやれ。」
そう言うと黒焔院はなんと、壺に向かって切りかかっていった。俺もわけが分からないまま青い鬼にとどめを刺しに渾身の力をこめて切り込んで行った。俺の刀が、青い鬼の心臓部分を思い切り切り裂いた。
「うぎゃあ!」
断末魔の悲鳴を上げて青い鬼は倒れた。倒れると、その姿は煙に覆われた。その煙が消えると、なんと、青い鬼の姿は跡形もなく消え失せていた。静音といずみの方も、いずみが赤鬼のとどめを刺していた。こちらも、青い鬼と同じように、倒れるとその姿が煙に覆われて、その煙が消えると赤鬼の姿は消えていた。静音さんはというと、こちらも黒焔院と同じように壺に向かって切り込んでいた。
「間に合わなかったか・・。」
「そのようですね。」
黒焔院と静音が口惜しそうに言った。




