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金洛堂の戦い① 髑髏兵雲霞の如く!

「ようこそ。金洛堂へ。貴様たちを待っていたぞ。やけに、遅かったな。尻尾を巻いて逃げ出したかと思ったぞ。黒焔院!よくぞ、今まで、俺様を小馬鹿にしてくれたな!今日こそは、目に物をみせてくれてるぞ!」

 中にいた声の主、すなわち豊原が一気にまくし立てた。

 その部屋は豊原のいるところに机が一つ、椅子が一脚あるだけで、あとはすべての机や椅子は端によけられてだだっ広いスペースになっていた。

「あら、何を言っているの?私たちは黒焔院さんたちではないわよ。ここにいる悪をこらしめにした正義の味方よ。」

 豊原の勘違いを聞いて、少し落ち着いたのか、いずみがいつもの調子で言い返した。

「なんだ、貴様らは?そうか!貴様らが「紫祈仙術」一派というわけか!これはまた大物がかかったぞ!まず手始めにお前らを血祭りにあげて、その後、黒焔院どもも根絶やしにしてくれてやるわ!

 これは、うまいこと各個撃破できるというものよ。お前らもバカだな。おとなしく団結して俺にかかってくればいいものを。おめおめとバラバラにやられに来るとはな。」

豊原が狂ったように哄笑した。

「そう上手いこといくかしら?私たちはあなたより強いわよ。「術具」がないと何もできない臆病者さん。」

「貴様!俺をバカにするのか!女とはいえ許さんぞ!今日、手に入ったばかりのこの「術具」『魔召(ましょう)の壺』の威力をとくと味わうがいい!」

豊原はそう言うと机に置かれた怪しげな壺に向かって何かを唱え始めた。

「柊太君、いずみちゃん。これはヤバいぞ。早く刀を用意した方がいい。」

 寂明さんがいつになく焦り気味に言った。言いながら、寂明さんは巾着袋から刀を取り出していた。

「ヤバいって何がですか?」

 俺は刀を取り出しながら何が何だか分からない感じで聞いた。いずみも刀を準備しながら同じような表情をしていた。

「『魔召の壺』というのは、異世界から妖魔を召喚できる壺なのだよ。「術」の名前で言うところの「幻魔(げんま)」と同じ効果があるのだよ。この「術」は紫と黒の継承者しか使うことのできない、いわば奥義的な「術」なのだよ。おそらくは、若駒由美をさらって、無理矢理にこの壺を作らせたのだろう。」

寂明さんが手早く説明してくれた。それを聞いていたのか聞こえたのか、

「ご名答。さすがだな。あの女、最初は抵抗したが、「こっちには人質がいるんだぞ!」と脅したら、あっさり作りよったぞ。「人質は女か?」と聞くから、「そうだ。」と答えたら、「言われた通りに作るから人質は助けて頂戴。」と言いよった。俺は表向き「分かった。約束する。」と答えたよ。

 俺は、女と聞いてあの生意気な静音のババアかと思ったが、存外、お前のことだったみたいだな。まあ、俺にしてはどうでもいいことだがな。」

豊原は、相変わらず狂ったように笑いながら言った。

「この外道!許さないわよ!それで、由美さんは無事なんでしょうね!」

いずみが、憤懣やるせない感じで言った。

「もちろん、無事だとも。まだまだ、俺様のために活躍してくれなくては困るからな。今は、安全な場所にいていただいているよ。その前に、祈仙術の継承者どもを根絶やしにしてくれるわ!そうすれば、「術具」を使いこなす俺様の天下になるからな!我が召喚に応じ、出でよ!」

 豊原の「術」が完成した。

 すると、どうだろう机の上に置かれた壺から煙が立ちこめ始めた。その煙は部屋中に充満していった。しばらく煙で視界が遮られていたが、徐々に煙が消えていき、視界が取れるようになった。そこには、刀を持った骸骨が10体ほど見られた。

「なんだこれは!俺はこんなつまらんものを呼び寄せたつもりはない!ええい、何でもいい!骸骨ども!あいつらをやってしまえ!」

豊原が訳も分からず命令すると、骸骨たちはこちらに向かって押し寄せてきた。

髑髏(どくろ)兵だな。一体一体では大したことはないが、こう、数が多いと厄介だな。こいつは倒れてもまた起き上がってくる。弱点は腰骨だ。腰骨を砕いてしまえば起き上がることはないから、切り伏せるというよりも叩き潰すイメージで戦った方がいいよ。」

寂明さんが刀を抜き放ちながら冷静に言った。

「分かりました。」

 俺といずみも刀を抜いた。いずみは先程、戦っているが俺は刀を抜くのも、戦いに挑むのも今回が初めてだ。すごく緊張して汗をかいてきた。

「柊太。落ち着いてね。大丈夫だから。」

いずみが優しく声を掛けてきてくれた。きっと俺の緊張が伝わったのだろう。

「分かったよ。ありがとう。腰骨だな。行くぞ!」

 俺は意を決して髑髏兵の腰骨目がけて刀を振り下ろしていった。すると、髑髏兵も意思があるのか、それとも本能なのかは分からないが、その刀筋を避けるように後ろに飛びずさった。

「柊太君!やみくもに飛び込んでは危ないよ!ここは時間はかかるが、慎重に一体ずつバランスを崩していって腰骨を狙っていこう。相手も骨とはいえ、兵隊だ。油断はしないでいこう。」

 飛び込んで行った俺を見て、すかさず寂明さんが言った。

 それから、俺たち三人はなるべく固まりながら、1人が誘き寄せてバランスを崩させ、後の二人で腰骨を狙っていく作戦に出た。それが、割と上手くはまって4体ほどを再起不能にした。周りを囲まれない位置取りにしたのも功を奏した。

「ええい!役立たずめ!何度でも召喚してやる。我が召喚に応じて出でよ!」

 豊原は狂ったように二度三度と壺に向かって唱えた。「術」は完成した。壺から立て続けに大きな煙が二度沸き起こった。

「今度こそ、力を見せてくれ、『魔召の壺』よ!」


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