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風雲急を告げる!豊原動く!

 静音の斬撃が一瞬止まった。その一瞬で十分だった。いずみは、なんとか態勢を持ち直して静音の斬撃を辛うじて受け止めた。

「誰じゃ?わらわの邪魔をする輩は?ただでは済まさぬぞ?」

 静音がもの凄く恐ろしい形相で光の元を睨んだ。そこには、三人の新たな人物の姿があった。

 それは、三人の男性のそれであった。二人は、すでに登場している人物で、もう一人はここが初登場の人物だった。まず、初登場の人物が声を発した。

「これは、お嬢様、お許しくださいませ。火急の要件につき、失礼を承知しながら割って入らせていただきました。」

 その人物は静音のことを「お嬢様」と呼びながら恭しく頭を下げながら言った。

「なんだ、じいではないか。こんなときにいったい何の用かえ?じいと言えども返答次第では容赦はせぬぞえ。」

静音は少し冷静になりながらも怒り心頭といった感じで言った。

「じい、何かあったのか?」

こちらは冷静そのものの感じで黒焔院がじいと呼ばれた男性に聞いた。

「はい、若。実は、密陀僧の置屋にこのような置手紙が届いておりまして。」

 そう言ってじいと呼ばれた男性は手紙のようなものを黒焔院に手渡した。黒焔院はひったくるように手紙を受け取り素早く読んだ。

「豊原の奴め、やってくれたな!」

黒焔院は忌々しげに手紙を握りつぶした。

「若!何があったのですか?」

密陀僧が黒焔院に近づきながら聞いた。

「ああ、豊原のやつが「お前らを悪者に仕立て上げることに成功した。警察に捕まりたくなければ1億円と「術具」を持って嵐山の渡月橋下に日付が変わるまでに来い。」と言ってきよった。」

「若、どうされますか?罠かもしれませんが・・・。」

じいと呼ばれた男性が思案半ばに言った。

「もちろん罠かもしれん。でも、売られた喧嘩だ。受けて立たねば我らが名が廃るであろう。静音!一旦刀を引け!」

「しかし、この小娘との決着がついておりませぬ!」

「静音!俺の言うことが聞けぬのか!もう一度言う、一旦刀を引け!」

黒焔院がいつになく激高した声で言い放った。

「畏まりました。口惜しい限りではありますが、若様直々のご命令。ここは従いまする。」

 静音がしぶしぶといった感じで刀を引いた。それに合わせていずみも刀を引き間合いを離した。

「静音!よく聞き入れてくれた。礼を言う。その小娘とはまた再戦することするが良い。」

「必ずや、その節にはあの小娘を屠ってみせまする。」

「うむ。その前に、豊原の豚野郎だ。まずは、こいつを型にはめてやらねばならぬ。俺たちに喧嘩を売ってきたこと後悔させてやらねばならぬでな。」

「それで、豊原の誘いに乗るのですか?」

密陀僧があまり気が進まなそうな感じで聞いた。

「さっきも言ったが場所や時刻が指定されている。罠だとしても行かなければ逃げたことになるであろう。この場合、選択の余地はない。」

黒焔院が言い切った。

「この手紙には、豊原と関係のあった4人の名前が書かれている。この4人は行かなければなるまい。」

「4人とは誰のことですか?」

密陀僧が確認するように聞いた。

「俺と静音。あとは密陀僧とじいの4人だ。山吹のじいさんは入っていない。」

「かしこまりました。」

 じいと言われた男性が事もなしげに言った。おそらく、このじいと呼ばれた男性が、寂明さんが言っていた萌黄原さんという人物なんだろうと思った。

「ちょっといいかい。」

先程登場した三人の男性の二人目が言葉を発した。

「何だ?この隙に後ろから切りつけようとでもいうのか?」

黒焔院が邪険に言った。

「そういうことではないよ。若駒由美の身に何かがあったらしい。常磐教授のスマホに「助けて!」というメッセージが入ったようだ。」

二人目の男性こと、「パープルナイト」のマスターのヒロさんその人が言った。

「って、由美さんは大丈夫なの?助けに行かなくちゃ!」

今度はいずみが息せき切って言った。

「いずみちゃん。気持ちは分かるが、助けに行くってどこに行くんだい?それに、これも罠である可能性があるよ。」

ヒロさんが冷静に言った。

「それじゃあ、見殺しにするっていうの!」

「お嬢ちゃん、そうは言っていないよ。ここに来るまでに三人で話をしてきたんだが、聞いてもらえるかな?」

最後の男性こと山吹老人が口を挟んだ。

「聞こうか。」

「聞こうじゃないの。」

 黒焔院といずみが口をそろえて言った。ここに来て、「いったい誰が主人公なのか?」と真剣に悩んでしまうが、それは置いといて話を進めよう。

「ここは3つに分かれようではないかということだよ。まず一手は若たちが豊原の誘いに乗って嵐山に行ってもらう。次の二手はわしと緋里さんで若駒由美を救出に行く。だいたいの監禁場所には目星はついておるからな。おそらくは、豊原の手先に使われている中藤の関係先だろうと思われるのでな。そちらは任せてくれ。最後の三手目は、少ししんどいが敵の本丸、すなわち金洛堂本社に直接乗り込んでもらうんだよ。これは、紫の三人に行ってもらうとしようと思うんだがどうかな?」

その後、しばらく沈黙が支配した。その沈黙を破るように黒焔院が言った。

「少し癪に障るが、山吹のじいさんの言うことが一番理に適っているようだな。美味しいところを小僧どもに持って行かれる気がしなくともないが、仕方あるまい。」

「そうじゃの。」

「そうよね。」

静音やいずみも同意するように言った。

「手早く行動することにしよう。俺たちは、直ちに嵐山に行く。そこが、空振りと分かれば、金洛堂に急行する。それまで、持ち堪えよ。」

 黒焔院が場を取り仕切るように言った。悔しいが、こいつのカリスマ性は相当のものだなと思った。

「私たちも、金洛堂が空振りだったら嵐山に急行するわね。」

いずみが、少し表情を和らげて言った。

「その必要はないと思うが、来たければ来るがよい。豊原の泣きの面でも拝ませてやるよ。」

黒焔院も少しニヤリとして言った。


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