「いずみ」対「静音」 意地と意地の激突!
そこから俺たちは歩くペースを落として前方の明かりへと近づいて行った。歩いて行くにつれてだんだんと明るさが増していき、俺たちは目的地に到着した。
鳥居をくぐり少し広くなったところに3人の人影があった。昼間の3人だった。男性の2人は昼と同じ格好だったが、女性のそれは少し違っていた。「戦装束」という感じで、黒い袴に上着の着物は白色のものを着用し、長い黒髪を白いリボンで縛っていた。腰にはしっかりと、刀を差していた。白銀に輝く美しい刀だった。「術」の明かりに照らされたその姿は幻想的でもあった。
「よく来たな。恐れをなして来ないかと思ったが、おめおめとやられに来たか。その度胸だけは誉めてやろう。」
黒焔院隼があざ笑うかのように言った。
「何を言う。やられるのはお前らの方だ。行くぞ。」
俺は、相手のペースや圧力に嵌ってはいけないと思い、精一杯の虚勢を張った。そして、巾着袋を開けて剣を取り出そうとした。するとその手を制止するようにいずみの手が置かれた。
「柊太。戦いたい気持ちは分かるけど、ここは私に任せて。」
いずみがいつになく真剣な眼差しで俺に言った。
「どうして?ここは俺に任せてくれたらいいよ。きっと何とかするから。」
俺はそんなに信用がないのかなと思い、少し苛立ちながら言った。
「ううん。そうじゃないの。柊太が私たちの矢面に立とうとしているのは分かるし、すごく嬉しいわ。でも、ダメなの。ここは私じゃなきゃダメなの。」
いずみは頑として聞き入れようとしなかった。
「どうして?」
「相手を見てごらんなさい。小雪さんが刀を差して、あとの二人は刀を差していないじゃない。これはある意味、相手方の意思表示なの。私に出て来いって言っているの。」
俺は少し落ち着いて相手方を観察してみた。いずみの言う通り、黒焔院と密陀僧の二人は腰に刀を差していなかった。小雪だけが戦装束で腰に刀を差していた。
どうしたものかと寂明さんの方を振り向いてみたが、寂明さんは刀を抜かずに小さく頷くだけだった。この状況を見て、俺は覚悟を決めた。
「分かった。ここはいずみに任せる。ただし、いずみに危険が迫ったら飛び出すからな。」
「ありがとう、柊太。ここは私に任せて。負けやしないわ。」
いずみはそう言って巾着袋から「惑刀 蒼炎」を取り出した。
「おやおや、お嬢ちゃん。わざわざわらわの刀の錆になりにきたのかえ。おとなしく坊やの後ろに隠れていたらいいものを。」
小雪こと静音がいずみを挑発するように言った。
「私を挑発しようとしたって無駄よ。あなたこそ、私のこの「蒼炎」で焼き尽くしてあげるわよ。」
いずみは落ち着いて言い返し、ゆっくりと刀を鞘から抜き放った。その刀身は蒼白く、うっすらと蒼い炎を纏っているかのようだった。
「なかなか良い刀じゃのう。その蒼い炎が眩しいわえ。」
静音は余裕の笑みを湛えながら白銀に輝く刀を抜き放った。
「この刀、「氷刀 吹雪」にて氷漬けにした上で、切り刻んでくれるわ。」
そう言いながらゆっくりと刀を中段の構えに構えた。
それを見たいずみも、同じく刀を中段の構えに構えた。そこからは、じわじわとした間合いの取り合いになった。
双方ともに最初の一撃を放てずに鬱屈したものが溜まってきているようだった。このやり取りを見ていた黒焔院が痺れを切らして口を挟んだ。
「静音!この小娘に目に物を見せてやると言っていたではないか!一気にケチらしてしまえ!」
「若!かしこまりました!只今より切り伏せてご覧に入れます!」
そう言いながら静音が凄まじい勢いでいずみに切り込んで行った。
“キーン”
研ぎ澄まされた金属と金属が触れ合う音がした。静音の斬撃をいずみが後ずさりながらも正面から受け止めた。
「小娘!なかなかやるのう!次はそうはいかぬぞえ。」
ニタリと笑みを浮かべて静音は二撃目、三撃目と立て続けにいずみに刀を打ち付けていった。いずみは、何とかこれを受け止めて横に流していった。
「これは、本人の技量もあるが、刀に秘められた魔力に拠るところも大きいな。」
寂明さんがボソッと呟いた。
「それはどういうことですか?」
「今戦っている二本の刀と、柊太君の持っている刀、あと、黒焔院が持っている刀、この4本の刀は特別なんだよ。刀そのものに途轍もない魔力が宿っており、主、つまり使用者を守ろうとするのだよ。だから、刀剣術に何の心得もないはずのいずみちゃんが、静音の斬撃に耐えられているんだよ。」
「そうなんですね。だとしたら、この戦いは長引きそうですね。」
俺はハラハラとしながら二人の戦いを見守っていた。『幻惑の不知火』で照らされた空間で刀を合わせる二人の姿はとても幻想的であった。和装の静音に対して、いずみは現代風の服装であり、まるで時代劇のステージに誘われたかのようだった。
また、刀を合わせるたびに飛び散る蒼白い火花が、幻想的な雰囲気に拍車をかけて美しかった。思わず状況を忘れて見惚れてしまうほどの美しさであった。静音といずみ、お互いに意地と意地のぶつかり合いという感じで一歩も引かない感じだった。
「なかなかしぶとい小娘じゃな。次で引導を渡してくれるぞえ。」
静音は一段と振りかぶって渾身の力と速さでいずみに殺到した。そのとき、いずみが少し体制を崩した。
「殺られる!」と俺は思って、咄嗟に目を背けてしまった。
そのとき、少し離れた鳥居の方から眩しい一筋の光が二人の間に差し込んだ。
「何かえ?」




