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翠風院家①及び蒼ノ京家の家族会議

「多分、敵方だと思うわよ。油断ならない感じだったわね。」

 いずみは、まだ険しい顔のまま言った。近くにベンチがあったので、俺といずみはひとまず腰掛けることにした。

「また、一人関係者が増えたわね。もう、何が何だか分からなくなってくるわ。」

いずみがイヤイヤをするように頭を振った。

「俺もだよ。いずみで訳が分からなくなっているのに俺が理解できているはずないだろう。」

「それもそうよね。柊太は半分分かっていたらいい方かしら?」

いずみが笑いながら毒づいた。機嫌が戻ったのはいいが、少し傷ついたぞ。

「少し状況を整理しましょう。まずは、小雪さんから。あの人は間違いなく敵方だと思うの。敵方と言っても、豊原の方ではなく、「黒祈仙術一派」の一人だと思うの。」

「どうして、そう思うの?豊原の女かも知れないよ?」

「何となく女の勘よ。すごくプライドが高そうだったから、豊原なんかの言いなりにならないと思ったの。」

「ああ、そういえば、由美さんが言っていた黒焔院隼の連れ合いさんかもね。」

俺はふと思って言った。

「よく覚えていたわね。エライぞ柊太。私もそう思っていたところなの。」

褒められはしたが、何だかそんなに嬉しくない。

「そうだとしたら、「黒祈仙術一派」との接触は初めてじゃない?」

「そうね。車に細工したり、ビラを渡してきた人物はいたけれど、ここまで面と向かっての接触は初めてよね。」

いずみも納得して言った。

「「また会うことになる」ってどういうことだろう?」

俺は今後の展開が見通せずに言った。

「それは、ひとまずは豊原の動き次第じゃないかしら。「黒祈仙術一派」がどこまで豊原に加担しているかによるんじゃないかしら?」

いずみも展開を考えながら言葉を選んでいるようだった。

「では、今は考えても仕方がないから、昨日の蒼ノ京家の家族会議の様子を教えてくれないか?」

「ああ、そうね。忘れてたわ。そうしましょう。」

 いつもは、ここで憎まれ口の一つでも叩いてくるいずみだが、今回はやけにおとなしく話題の転換に応じた。

「昨日、柊太を送って家に帰って夕食を摂ってから、家族4人でお話したの。」

いずみの家族構成は、両親と兄といずみの4人だ。

「それで、どうなったの?」

「うん。お父様も、寂明さんをはじめとしていろんな人から情報を聞いていて「このままではいけない」とは思っていらっしゃったらしいの。本来であれば、私が、この騒動に巻き込まれるのは嫌みたいだったけど、既にどっぷり入り込んでいるし、何も知らないまま丸腰でいる方が危険だと思ったらしいの。」

俺は口を挟まず、いずみの言葉を聞いていた。

「そこで、お父様が考えた方策として3つの案があったらしいの。1つは、兄に「術」を継がせて騒動を治めに行く方法。2つ目は、私に「術具」を与えて騒動からは身を引いて、自分の身を守る体制に入ること。3つ目は、私に「術」を使えるようにして積極的に関わっていくこと。」

いずみが、3つの案を言い示した。

「それで、どうなったの?」

「私を除いた3人は1つ目の案、兄に「術」を継がせて騒動を治めに行く方法がいいという意見だったの。でも、私は強硬に反対したの。もう、ここまで関わってきているし、柊太のことも心配だから、私にやらせてくれって頼んだの。」

「でも、なかなか、お父様もお母様も納得してくれなかったわ。でも、途中からお兄様が私の味方に付いてくれて、最後には折れてくれたわ。」

「そうだったんだね。でも、なぜお兄様はいずみの味方をしてくれたのだろう?」

「お兄様にも結婚間近の彼女さんがいて、「もし、自分の彼女がそういう立場だったら俺も共に戦いたいと思うから」、って言ってくれたの。その一言がお父様とお母様を動かしてくれたみたいだわ。ああ見えて、お父様もお母様も情に厚いからね。」

いずみはそういってショルダーバッグから蒼色の巾着袋を取り出した。

「それは俺の持っている巾着袋と同じだね。中に何か入っているの?」

「入っているけど、今は出せないわ。「術」もいくつか伝授してもらったから、また「術」を相互に教え合いましょう。」

「そしたら、蒼ノ京家では、いずみとお父様の2人が「術」を使えることになっているのかな?」

俺はふと疑問に思って聞いた。

「ううん。違うの。お父様はやはり、「術」の拡散が気にかかるみたいで、お父様自身の「術」を一旦封印されたの。だから、今、蒼ノ京家で「術」を使えるのは私だけなの。」

「そうなんだ。この騒動が落ち着いたら、元に戻すという訳だね。」

「そういうことになると思うわ。」

「ところで、その大きな荷物は翠風院家様への手土産なの?」

「そうよ。一つは、伏見の有名な酒蔵の日本酒よ。またとない1本なのよ。蒼ノ京家では、突然の来客や急な訪問のためにこういった京都の名産品を多数置いているのよ。あと、もう一つは、蒼ノ京家の家宝の一つの「茶碗」よ。時価にして数千万円は下らないわよ。」

そういって、いずみは笑った。

「そんなに大事なものを手放すんだ。翠風院家っていうのは本当にすごい家柄なんだね。」

俺は素直に感心した。

「そうね。それもあるけど、今日の案件がかなり重要な案件になってくるのよ。それは、行けば分かると思うわ。」

いずみはそう言って立ち上がった。

「そろそろ動きましょう。10分前には近くにいて、5分前に訪問しましょう。」

「分かった。」

 俺も立ち上がり、先程下見をしてきた翠風院家に向かって歩き出した。ほどなくして、目的地の近くに着いたので、俺といずみは少し離れたところで時間調整をした。時間になったので、俺といずみは翠風院家の門の前に来た。いずみは何の躊躇もなく、厳重なインターホンを鳴らした。


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