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柊太、束の間の休息

「さて。今から柊太を家まで送るから、また明日迎えに行くわ。少し早めに現地近くに着いていたいから、8時半に迎えに行くわね。」

いずみがスマホをしまいながら言った。

「あれ?今から、いずみの家に行かなくてもいいの?」

俺は、てっきり今から蒼ノ京家に行くものだと思っていた。

「うん。柊太は来なくていいよ。お父様と込み入った話になるだろうから、お母様や、お兄様を含めて蒼ノ京家で話をするわ。結論が出たら連絡入れるね。」

 いずみが、少し神妙な感じで言った。おそらく、この後の家族会議のことを考えてのことなんだろうと思った。

「うん。分かった。あまり、無理しないでね。」

俺は、そう言うのが精一杯だった。

「ありがとう。柊太。さあ、いきましょう。」

 いずみが、コインパーキングの会計を済ませて車を発進させた。夕方を過ぎてきているということもあり、道は混んでいた。いずみは、いつになく無口だった。何かいろいろと考えているんだろう。俺は、いずみの考えの邪魔にならないように静かにしていた。ほどなくして、俺のワンルームマンションの前に到着した。

「柊太。着いたわよ。今日は、()()()()休みなさいね。」

いずみが、ある一部をものすごく強調しながら言った。

「分かったよ。おとなしく飲まずに連絡を待っているよ。」

俺は苦笑しながら言った。

「では、またね。」

 いずみは俺が車から降りたことを確認してから車を発進させた。俺はいずみの車が見えなくなるまで見送っていた。

 さて、飲みたい気分は山々だが、いずみと約束をした以上、今日は飲まずにいようと思った。2日ぶりに俺は自分の部屋へと戻ってきた。何だか、随分長い間留守にしていたような気分だ。それぐらい、この2日間でいろんなことがあったなと思った。とりあえず、腹が減ってきていたので何か食べることにしよう。今日は、作るのが面倒なので、あり合わせで間に合わせることにした。冷蔵庫を見ると、ビールにカクテル、ワインもあるが・・・、ダメだ、今日は我慢だ。それから、冷凍庫を開いてみた。すると冷凍のラーメンがあった。これは、封を開けて鍋に入れて加熱するだけで出来上がるタイプのものだった。俺は、これにすることにした。少し物足りないが、まあ、これとスナック菓子で我慢することにしようかと思った。ひとまず、部屋着に着替えて、俺はラーメンを調理し始めた。ほどなくして出来上がり、俺はささやかな食膳についた。ものの10分ほどで食べ終わり、俺はスマホを眺めながらスナック菓子をつまんでいた。ああ、シャワーもしなければいけないなと思い、俺はスナック菓子を一旦置いて、シャワールームに向かった。昨晩は寂明さんのお寺に泊まらせていただいたので入浴はできていないので2日ぶりのシャワーとなる。湯船にお湯を張って浸かろうかと思ったけれど、面倒臭いのでシャワーで済ませた。シャワーの後、スマホを見ていたら、気付かないうちにウトウトとしていたみたいだった。その間に、何件かスマホに着信があった。ようやく気がついて、画面を見てみるといずみからだった。俺は慌てて折り返して連絡を入れた。

「もしもし。柊太?もしかして、飲んで寝ていたんじゃないでしょうね?」

いずみが少しムッとしながら言った。

「ごめんごめん。気づかないうちにウトウトしていたみたいだ。誓って言うが今日は一滴もお酒を飲んでいないよ。」

俺は、本当に飲んでいないので、真面目に言った。

「本当に?信じてあげるわ。飲んでいたら、こんなに早く反応はないものね。」

 さっきと打って変わって、いずみが軽快に笑いながら言った。俺は、飲んだらとんでもない奴になっているんだなと思って少し反省することにした。これからは、少しはお酒を減らす努力をしてみよう。多分、無理だとは思うが・・・。

「それで、どうだったの?蒼ノ京家の家族会議はどうなったの?」

俺は、いずみが「術」を使えるようになったかどうかが気になって聞いた。

「そうね。私も「術」を使えるようになったわよ。話せば長くなるから、また明日話すわね。明日、8時半って言ってたけど、もっと時間を早くして、祇園周辺を散歩しながら話をしましょう。だから、7時に柊太のところに迎えに行くわね。表で待っててね。寝てたら、起こす代わりに、そのまま一生起きずに済むようにしてあげるわよ。」

 いずみは笑いながらとんでもなく恐ろしいことを言ってのけた。明日は必ず5分前、いや、10分前には表に出ていようと固く誓った。

疲れていたのか、俺はその後すぐに眠りについた。かなり時間がたって、俺はふと目が覚めた。「やばい。遅れる!」。俺は、昨日のいずみとの約束を思い出して慌てて飛び起きた。

 スマホの時計を確認したらまだ5時を過ぎたばかりだった。日の出が早くなったとはいえ、まだ外は暗かった。アラームを合わせていることもあるし、もう一度寝ようかなと思ったが、万が一起きられなかった時のことを考えると恐ろしいし、良く寝たこともあり、すっかり眠気もなくなっていたので、このまま起きておくことにした。

 洗面所で顔を洗い、少し早いが朝食にすることにした。食パンが1枚残っていたので、それを焼いてマーガリンといちごジャムを塗って食べることとし、あとは、冷蔵庫を見たらヨーグルトがあったのでそれも食べることにした。少ないが、まあこれで我慢しておこう。テレビを見ながらゆっくりと食べ、それからコーヒーを淹れた。今度は、テレビを消し、スマホを見ながらまったりとブラックコーヒーを楽しんでいた。今日は、由緒正しき翠風院家に行くことにはなっているが、それ以外にもいろいろと動き回らないといけない予感がするので服装に迷った。迷った挙句、俺は、黒い綿パンに白いTシャツ、上着にグレー系のジャケットを羽織るというコーディネートにした。カバンは少し大きめの黒系のショルダーバッグにした。そんなこんなしていると6時半を回ってきたので、慌ててトイレを済ませて、歯磨きをして俺は表に出た。時間はまだ6時45分だ。15分も前に出ているのだから大丈夫だろうと俺は思った。


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