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由美との会話 黒幕の正体

「ありがとう。大丈夫よ。」

由美が微笑みながら言った。

「そしたら聞くわね。まず聞きたいのは「黒祈仙術」一派の者とはいったい誰なの?その人物がこの件の黒幕なの?私たちも少し、嫌がらせをされたからその人物かなと思って。」

「どんな嫌がらせをされたの?」

由美が少し首をかしげて聞いてきた。

「私の車のドアミラーをいじってみたり、脅しの手紙を渡してきたりしたわよ。」

いずみがさっきの出来事を思い出して少し不機嫌になって言った。

「あらそうなの。それは「黒幕」のしそうなことじゃないわ。それをしたのは、おそらくは密陀僧(みつだそう)のやつね。」

由美が笑いながら言った。

「密陀僧?って誰ですか?」

すごく変わった名前が出てきたので俺は思わず横合いから口を挟んだ。

「密陀僧っていうのは「黒祈仙術」一派の継承者の一人よ。フルネームで、密陀僧拓真(みつだそうたくま)っていうの。黄色系の家系だわ。この人物は「黒幕」とその連れ合いに盲目の忠誠を誓っているから少し性質が悪いのよ。」

由美が少し首をすくめて言った。

「そんなに難儀な人物なんですか?」

俺はこの後対峙することになると嫌だなと思って言った。

「そうね。いい意味でも悪い意味でも「黒幕」に忠実だから、そこまで無茶なことはしないと思うから大丈夫だと思うわ。この人物も普段は仕事を持って働いているし、あまり無茶をすると仕事をなくしちゃうものね。」

「それなら少し安心しました。」

「それで、この「黒幕」は誰なの?」

少し逸れていきそうだった話をいずみが強引に戻してきた。

「あらごめんね。少し話が逸れちゃったわね。「黒祈仙術」の「黒幕」は「黒焔院隼(こくえんいんはやぶさ)という人物なの。年はあなた達より少し上よ。」

由美が「黒幕」の名前を教えてくれた。

「今あなた、「黒祈仙術」の「黒幕」って言ったわよね。そしたら、それ以外にこの件の「黒幕」がいるの?」

いずみがかなり険しい表情で聞いた。

「さすがね、お嬢ちゃん。その通りよ。もう一人の「黒幕」は別にいるわ。この人物が実社会の中で「術具」を使って「術」を悪用しているから今回の騒動になってきたの。」

由美が少し目に怒りを込めて言った。

「それは誰なの。」

「ときに、あなた達は「株式会社金洛堂」って知ってるかしら?」

おもむろに由美が聞いてきた。

「もちろん知ってるわよ。あの健康食品を主に扱う会社よね。その金洛堂がどうかしたの?」

「この金洛堂の社員の一人が、さっき言った黒焔院隼と手を組んだわけなの。私が作った「術具」を黒焔院隼が金洛堂の社員に高値で売りつけたわけなのよ。こういうと分かるわよね。」

「この金洛堂の社員があなたが作った「術具」を悪用しているわけね。」

いずみが納得したように言った。

「そういう訳なのよ。この社員の名前は「豊原克洋(とよはらかつひろ)」って言うの。とても油断のならない人物らしいわよ。」

「そうか。あなたは直接この豊原に会ったことはないのね。」

「その通りよ。今のところは黒焔院隼を通しての関係だけだわ。でも、この豊原は油断ならないから、いつ何時、私の存在を嗅ぎ付けるか不安で仕方がないの。」

「そりゃそうね。あなたの存在を嗅ぎ付けられたら何をさせられたか分かったものじゃないわね。」

「それで、私は隠れているのはやめて自らを「日本伝統呪術研究所所長」と名乗るようになったの。普段は普通の文学系の雑誌社に勤めている会社員よ。場合によってその肩書を使っている訳なの。」

「それで、あなたの望みは何なの?」

いずみが一番の核心部分を聞いた。

「私の望みは、豊原を止めてほしいの。「祈仙術」は決して現代社会に出してよいものではないわ。このままいくと、社会の秩序は崩壊してしまうかもしれないの。」

由美が真剣な眼差しで懇願するように言った。

「分かったわ。あなたとお話ができてよかったわ。でもって、ごめんなさい。あなたを一方的に敵と決めつけてしまっていて。」

いずみが珍しくしおらしく言った。

「いいのよ。お話を聞いてくれてありがとう。これからどうするの?」

「お父様と話をして、封印を何とかしてもらうようにお願いしてみるわ。確かにあなたの言うとおり、このままではいけないと思うから。」

「ありがとう。助かるわ。あなたのお父様とは一度お会いさせていただいたけど、あなたが今の状況を把握したうえで、情理を尽くしてお話したら分かってくださると思うわよ。」

「あらあら。なんと手の早いことですこと。もう、私のお父様と会っているとは恐れ入ったわ。」

いずみが苦笑しながら言った。

「では、早速帰ってお父様にお話しすることにするわ。今日はあなたとおはなしできて良かったわ。」

「こちらこそ、聞いてくれてありがとう。連絡先の交換をしてもらてっいいかしら?」

由美がスマホを取り出しながら言った。

「いいわよ。」

いずみがスマホを取り出しながら言った。俺も慌てて取り出した。そして互いに連絡先を交換した。

「では、何かあったら連絡するわね。今日はありがとう。」

由美がそう言って去っていった。

「こちらこそありがとう。」

 俺といずみは由美を見送ってから車を停めてあるコインパーキングに向かって歩き出した。

 辺りは夕焼けまっしぐらという感じだった。時間のほどは5時半を過ぎたあたりだった。なんだかんだで1時間と少しは話をしていた感じだったようだ。

「今からいずみの家に行くんだね。こんな夕方に行っても大丈夫かな?」

「少し待って。今、お父様に連絡を入れるから。」

そう言っていずみは少し離れてスマホを取り出し通話を始めた。

「もしもし、お父様。いずみです。今お話しいいかしら?」

そこまでは聞こえたが、そこからは聞こえなかった。

 俺は手持ち無沙汰になり、しばらくここまでの出来事と明日からの予定をおさらいすることにした。「パープルナイト」に若駒由美が現れ、そこから寂明さんに会い、次に日に太公望さんに会った。それから、常磐教授に会ったりといろんなことがあったなと思った。明日は翠風院家に伺う予定のはずだが、この後、いずみの家、蒼ノ京家に伺わないといいけないんだなと思った。


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