しばしの休息 東王路大学近くの喫茶店
場所は変わってここは東王路大学の近くの喫茶店。そこには、柊太といずみがいた。時間は13時を過ぎたあたりであるが、まだまだランチタイムの客で賑わっていた。柊太といずみは一番奥にある2人掛けのテーブルに向かい合って座っていた。
「なんだか昨日からいろんなことがあって少し疲れたわ。」
いずみが小さく伸びをしながら言った。
「俺もだよ。ここで昼食を食べながら少し状況を整理しようか。」
「そうね。お腹も空いたし、私は何を食べようかしら。」
いずみがメニューを開きながら言った。
「どれも美味しそうだわ。私は、ミックスサンドセットのしよっと。」
いずみが選んだのは、卵やハム、レタスを挟んだ定番のミックスサンドにスープとサラダ、ドリンクが付いたセットだった。
「柊太は何にする?」
そう言っていずみは柊太にメニューを渡した
「そうだな。俺は何にしようかな?」
確かにいずみの言う通りどれも美味しそうである。メニューも豊富で迷ってしまう。しかしそんなに時間がある訳ではないので、俺はハンバーグセットにすることにした。これは自家製ハンバーグをデミグラスソースで味わい、目玉焼きとサラダが添えられた一品だった。そこに、ライスまたはパン、それにスープとドリンクも付いているというものだった。俺は、ライスが好きなのでライスにすることにした。
「この後は、「術具」についてのお話を聞くんだったわね。」
「そうだよ。何て名前の人だったっけ?」
「あらやだ。もう忘れちゃったの?常磐教授って方よ。」
何だか一言余計なことを言われた気がしたが気にせずにいよう。
「そうそう、「術具」があればいずみも「術」が使えるかも知れないな。」
「そうね。いっそのこと、お父様が封印とやらをこの騒動が終わるまでの間、一時的に解除してくれないかしら?」
いずみが少し考えこむ感じで言った。
「そうだね。その方が手っ取り早いかもしれないけど、果たしてそんなに都合よく封印を解除できるかどうか、出来るとしても、いずみのお父様がやってくれるかどうかだな。」
封印そのものよりも、いずみのお父様の考えが一番難しいのではないかなと俺は思った。
「お待たせいたしました。」
ちょうどそこに店員が二人分のランチを運んできてくれた。思わず二人が顔を見合わせて無言になった。話をしている内容が「術」だの何だのなので、やむを得ない反応だなと思った。そこからしばらくは二人とも何となく無言でランチを食べていた。食べ終わり、食器を下げてもらい、二人とも食後のコーヒーを頼んだ。
「とても美味しかったわ。柊太の方はどうだった?」
「俺のも美味しかったよ。とりあえずお腹が空いていたし、無心で食べちゃったけどね。もう少し味わって食べればよかったかな。」
俺はコーヒーを一口飲みながら言った。
「私もだわ。でもお腹いっぱいになったわよ。この後、眠くならないようにしないといけないわね。」
「俺がウトウトしていたら、しっかり聞いててな。」
「分かったわ。10分あたり五千円もらうけどね。」
いずみが笑いながら言った。
「それは暴利だ。せめて二千円でご勘弁を。」
俺も笑いながら返した。
「それにしても、今度はどんな人なのかしらね?ずいぶんと漠然とした情報ばかりで進んできているけど大丈夫かしら?」
いずみが心配そうに言った。
「大丈夫なんじゃないかな。難しそうだったらその時はその時だよ。」
俺は正直のところあまり気にしていなかったので気楽に言った。
「本当っに、あなたの頭はお気楽でいいわね。少し、その神経を分けてほしいわよ。そもそも神経が通ってたとしての話だけどね。」
いずみがこれ以上ないくらいの憎まれ口を叩いた。
「ひどいな。さすがの俺も傷ついたぞ。」
俺は少し抗議するような口調でいずみに言った。
「あなたのどこに傷つく神経があるのよ。」
こちらも負けじといずみが言った。
「さあ、もう行くわよ。あまり遅くなっても先方様に申し訳ないしね。」
いずみが伝票を持って立ち上がった。
「俺が払うよ。」
慌て俺は言った。
「いいわよ。飲んだくれて貧乏しているフリーターさんなんかあてにしていないわよ。」
今世紀最大に傷つくことを平然といずみは言ってのけて会計を済ませてくれた。
「ありがとう。この埋め合わせはきっとするよ。」
俺はそういうのが精いっぱいだった。我ながら情けない・・。
「別にいいわよ。これに懲りて少しお酒を控えたらどうかしら?」
いずみが、スンと澄まして言った。
「はいはい。申し訳ありません。そうさせていただきたく思います。」
俺はしおらしく言った。
「『はい』は一回でしょ。」
いずみが小憎らしく言った。
「申し訳ありません・・・。」
「そう、それでいいの。少しはおとなしくしていなさい。」
これではどっちが主人公だか分からないなと思いながら俺は言った。




