人生は退屈すれば長く、充実すれば短い。
右手の腕時計で時間を確認する。
ほとんど時間が残っていない。
アンコールに応えるとは、思わなかった。
今回「彼」はあまり話をしなかったが、結構正直な「彼」自身について話をしていた。
意外だった。かなり捻くれた性格。プロフェッショナルだとは思う反面、本音は「隠す」タイプ。確かに、行動は感情的だが「彼自身の言葉」はそこにいない感覚がする。半端ない「TED」感。
だが、今回の話の「声音」は「隠し事」というか「言わなくていい」という判断がされた「何か」がありそうな感覚だが「嘘」が乗っていなかった。
きちんと「ファン」に、認識されない「名もなき風景」に「彼自身の言葉で話した」。
・・・これを35年前に出来ていれば、ここまで苦しくはならなかっただろうに。苦しんだから「話せた」のかもしれないが。
「元会長」は「選択と集中」で「日立製作所」を甦らせたが、反面「リストラ」された側からの恨みは酷かった。「彼」の苦悩はわからない。だが、100万人単位に恨まれてまで会社を守り切った胆力は、素直に尊敬する。
なんだろう。今の「彼」について、母親に話したくなった。数少ない思い出のひとつは「彼」のライブに行ったこと。
そして、あまりいい印象ではなかった。
そんな話をしていたけど、今の「彼」は違う。
なんとなく、そう伝えたくなった。
アンコール最初は「中間一位」の曲だった。
会場内は完全に「酔っ払い状態」。中間でダントツ一位である。ファンからしたら聞きたかった曲だろう。
なんと、サビの部分は「声出し禁止」のはずなのに「ファン達の歌声」の方が「彼」より大きいというなかなかふざけた状態。「彼」も途中でギターに集中してしまった。
あー、もう、常識とか論拠とかどうでも良くなってきた。よくわからないけど、今、楽しいって思う。なんか、それでいい気がしてきていた。
ダメだとわかっている。口元をマスクとチラシで覆いながら、こっそりサビを口ずさんでいた。




