003_嘘は不義理だが役に立つし人間界では武器
「えっと……リンネヴェールっていいます。」
私はスマホを配信モードにしてリンネを撮っている。
「ええと、魔界からやってきた悪魔です……」
リンネヴェールが登場するゲーム「ぷちモン☆だんじょんず!」と同じ、
黒い甲冑とまがまがしい大剣を装備させて。
「人間界のこと、あんまり詳しくないんですが……」
いいよいいよ、なにしゃべってもかわいい……
超有名声優、水城いろはの声だもんね!
おどおどしてるところとか、また最高にかわいい。
「人類の皆さんと仲良くなりたいなって、思ってます……」
うんうん、さっそく人が来てるな!
【名無し】生成AI?
【名無し】草
【名無し】コスプレのクオリティえぐい
【名無し】バーチャルだと思ったら実写だった
YouVibeのチャンネル登録者数は10人か……
まあ最初はこんなもんでしょ!
「ダンジョンに挑戦します……チャンネル登録?おねがいします……」
私は配信を止める。
「いいよいいよリンネちゃん!ほらさっそく10人も登録してくれて!」
「……お姉ちゃんが喜んでくれるなら。」
アカウントは新しく作った。前のアカウントは……復旧しなくていいか!
「くうう!スマホ買いなおしてよかった!」
気付いたら私はスマホのカメラでリンネを撮りまくっていた。
もっと早く買えばよかったんだよ。でも忙しかったし……
「今週末もダンジョン行くわよ!」
「……がんばる。」
「じゃあこれ、約束の……チキンボックス!」
「お肉!食べる!」
ぷちモン☆だんじょんず!の登場キャラ「ぷちモン」の好物は肉で、
肉はレベルアップ用の素材だ。
それが反映されているのか、リンネは肉を好む。
ちなみに好感度を上げるアイテムは宝石だ。
今度あげてみようか……どんな反応するんだろ。
「お姉ちゃん。ちょっと危ないかも。」
リンネの頭上に「LEVEL UP」の文字が輝く。
「危ない?なにが?」
「悪魔が近くにいる。気を付けて。」
「いやリンネちゃんがいるでしょ?」
「……私以外の悪魔。来てる。近い。」
トットットット……
軽い足音が階段を上がる音だ。
「……近づいてきてる。」
「もしかして……住所特定されてたり?」
「……ここまできたらもう確定。敵意はないけど、気を付けて。」
ピンポーン
……鳴った。インターホンが。
「ど、どどどっどどうすれば?」
「出るしかない。お姉ちゃん、私の後ろに。」
リンネは玄関へ。私はすぐ後ろをついていく。
……リンネが扉を開ける。
夜の闇に映えるピンク髪ツインテの女の子が目の前にいた。
金色の瞳にとがった耳、頭の二本の角、背中の羽に尻尾。
悪魔だ。リンネと同じサイズ感の悪魔だ。
「歌って踊れる魔界のアイドル!ライアルチェインです!よろしく☆」
リンネはばたりと扉を閉めた。
「ちょっと!?ライアが来てあげたのよ!?入れなさい!」
「……人違いです。他をあたってください。」
「いやお前リンネヴェールだろ!わかるわ!他人のフリすんな!」
「……お姉ちゃん。助けて。」
リンネはとてとてと私の後ろに隠れる。私は扉を開ける。
「歌って踊れる魔界のアイドル!ライアルチェインです!よろしく☆」
「……はじめまして……?」
見たことある。ぷちモン☆だんじょんず!のガチャの最高レア、
URの自称魔界のアイドル、ライアルチェインだ。
公式サイトで最も推されてるキャラが、この子だ。アイコンにもなってる。
声優は田代ひかり。これまた超有名声優だ。
……ちなみに私の推しのリンネヴェールのレアリティは最低レアのRだ。
「はじめまして!リンネヴェールのご主人様でいいのかしら?」
「リンネ。そうなの?」
「うん。すみれは私のご主人様だよ。」
く、くううううううう!!!
やめて、鼻血がでるからやめて!
「は、はい。そういうことになりまし……た。」
「ライアのことも、かくまって欲しいの!」
私は扉をばたりと閉めた。
「ちょっと!?開けなさい!?ちょっとー!!!」
「お姉ちゃん、予定変更。ライアを受け入れましょう。」
「本気!?」
「……本気。むしろ好都合。開けてあげて。」
私は扉を開けた。
「歌って踊れる魔界のアイドル、ライアルチェインです!よろしく☆」
あ、それ3回目もやるんだ。
「ライアルチェイン。話があるの。」
リンネはそう切り出す。
「ライアからもお話があるわ!」
「かくまってあげる。条件はひとつだけ。」
「話が早いわね!条件を言いなさい?」
「すみれの言う事には従うこと。……いい?」
「お安い御用!」
ライアルチェインが仲間になった!……え、これ大丈夫なの?
「で。ライアの最初の仕事が、これってワケね。」
「そう。私にはコセキがないから。」
翌日、半休を取った私は二人を連れて区役所に来ていた。
「本当にできるの?」
私は心配だし、疑問視もしているし……なにより信用できない。
だって名前がライアー(嘘つき)だし。
「この区役所、Wi-Fiが設置してあるみたいね……おバカさん。」
ライアルチェインは目を閉じた。
その10秒後、ゆっくりと目を開けた。
「はい、OK。」
「……ずいぶん早い。成功したの?」
「もちのろんでございます。じゃあさっそく申請に行きましょ!」
私たちが区役所に来た理由……
それは、私たちの住民票の写しを貰いに来たのです。
「ではこちらが世帯全員の住民票の写しになります。」
……申請書一枚で簡単に手に入った……
ええと卯月すみれ、卯月凛音、卯月来亜。
「完璧な仕事よ!どう、見た?見たでしょ!?」
おい、ライアルチェイン。お前ちゃっかり自分の戸籍もねじ込んだな?
あーあ
登場させちゃった……
ピンクツインテ。




