第7話 無念
いつも読んでいただきありがとうございます。
仏壇に手を合わせる、1人の老人。
「すまん……」
「仇も取れず、もう時間がないんだ…」
老人の横には、病院の名前が書かれた封筒が置かれていた。
―――
いつものように猫カフェがオープンする。
クロウは常連の女性客の膝の上で喉を鳴らしながら目を閉じていた。
真壁は、ドリンクや猫のおやつの注文がない限り、店の奥でパソコンに向かっている。
ブランは店の奥のソファーでくつろいでいるか、気ままに散歩へ出掛けていた。
閉店後。
3人が店の奥に集まると
真壁が口を開いた。
「明日、依頼人が来ます」
ブラン
「判った♪」
クロウは目を閉じたまま。
真壁が微笑む。
「では、ご飯にしましょう」
その日の食事も、いつもと変わらなかった。
真壁とブランが笑顔で食事をしている。
クロウは早々とご飯を食べ終えると、丸くなって目を閉じた。
だが、その耳だけは2人の会話を聞いていた。
翌日。
閉店間際。
カラン、カラン。
ドアが開き、1人の老人が入ってくる。
「失礼します」
真壁が一礼する。
「田辺様、お待ちしておりました」
「奥へどうぞ」
「どうも」
田辺は真壁に案内され、店の奥へ向かう。
部屋のソファーには、1匹の黒猫が丸くなって寝ていた。
田辺は真壁を見た。
「仇を取ってくれるんですか?」
真壁は目を閉じ首を振った。
「話す相手が違います」
「私は受付みたいなものですから」
その時。
黒猫が静かに目を開いた。
田辺
「君、私は遊びに来たんじゃない」
「時間がないんだ!」
クロウ
「うるさい」
田辺が固まる。
「い……今、喋った……?」
「最近は猫も話せるのか……?」
クロウは答えない。
ただ、細い目で田辺を見つめる。
クロウ
「話せ」
田辺は息を飲んだ。
「判りました」
「仇を取ってもらいたい」
「妻を……和子を殺した男を」
「和子は街で恐喝に遭い、そのまま殴られて……死にました」
クロウと真壁が静かに目を閉じる。
「犯人は未成年で、」
「刑務所にも入らず……」
「1週間前に戻って来てます」
「本当は自分でやりたかった」
「ですが……時間もなく……」
「自分の力では……」
クロウ
「2日後」
田辺
「受けて……もらえるんですか?」
真壁
「申し訳ありません」
「まずは調べますので、2日後、またご来店願えますか?」
田辺は少し肩を落とした。
それでも、小さく頷く。
「判りました」
「お願いします」
深々と頭を下げると、静かに店を後にした。
店内に沈黙が戻る。
クロウ
「ブラン」
店の奥のソファーから声がした。
「はーい♪」
「ちゃんと聞いてたよ」
ブランが顔を出す。
クロウ
「調べろ」
ブラン
「はーい♪」
「2日ね」
「了解」
真壁も頷く。
「私も調べてみます」
「当時の記事や、事件の情報も」
ブランは大きく伸びをした。
「それじゃ、行ってくるね♪」
「お腹空いたら帰ってくる」
真壁が笑う。
「ちゃんと帰って来てくださいね」
「はいは~い♪」
ブランは裏口から夜の街へ消えていった。
クロウは丸くなり、静かに目を閉じる。
だが、その耳だけは、真壁がキーボードを叩く音を聞いていた。
カタカタ……
カタカタ……
静かな猫カフェ。
いつもと変わらない夜。
だが。
2日後。
1人の老人の運命が決まる。
そんな予感だけが、静かに流れていた。
今後もよろしくお願いいたします。




