第3話 疑惑
いつも読んでいただきありがとうございます。
夜の猫カフェ。
店内は暗く、奥の部屋だけが明るかった。
パソコンの光に照らされながら、真壁は真剣な表情で画面を見つめている。
既に何時間そうしていたのか、自分でも判らない。
やがて一通のメールを送り終えると、静かにパソコンを閉じた。
「……クロウさん。明日、依頼人が来ますのでお願いします。」
ソファの上で丸くなっていた黒猫が、ゆっくりと片目を開く。
真壁を見る。
そして、また目を閉じた。
翌朝。
真壁がシャッターを開け、猫カフェがオープンする。
いつもの常連の若い女性たちの姿はない。
それに気付いたクロウの機嫌が、少し悪くなった。
「お願いしますね」
「判ってる」
短く答える。
だが真壁の表情は、少しだけ曇った。
カラン。
ドアベルが鳴る。
1人の若い男が入ってきた。
「すみません……メールで来たんですが……」
「こちらへどうぞ」
真壁は男を店の奥へ案内する。
「クロウさん、秋山さんです」
部屋に入った男は、思わず立ち止まった。
椅子の上に、1匹の黒猫。
じっとこちらを見ている。
秋山は目を丸くした。
「……え?」
「内容は?」
「ッ!?」
腰が抜けそうになる。
だが、どうにか踏みとどまった。
言いたいことは山ほどあるが。
それを飲み込む。
「父が……殺されたんです」
クロウは何も言わない。
秋山は続ける。
「父は事故で死にました」
「それで、俺が父の店を継いだんです」
「そしたら、その日から銀行が土地を売ってくれって、しつこく来るようになったんです」
「中でも部長って男が……」
「電話だけじゃなく、直接来て」
「脅しに近いことまで……」
クロウの目が細くなる。
「あいつが!」
「あいつが父を殺したんです!」
「間違いない!」
「父は悩んでいました!」
「俺には話してくれなかったけど……」
「命を狙われていたんです!」
秋山は深々と頭を下げた。
「敵を……敵を取ってください!」
静寂。
クロウは男を見つめる。
そして、
「……いいだろう」
秋山の顔が安堵に変わる。
しかし、
「まだ動かない」
「3日後、また来い」
秋山は顔を上げた。
「えっ?」
「あいつが殺したんです!」
「お願いしますよ!」
クロウが男を見る。
それだけで、秋山は言葉を失った。
空気が変わる。
秋山は慌てて頭を下げた。
「……失礼しました」
深々と頭を下げ、店を後にする。
扉が閉まるのを見届けた後。
「……ブラン」
暗がりから、白と黒の犬が姿を現した。
「聞いてたよ、クロウさん」
「調べればいいんだね?」
「ああ」
「調べろ」
ブランは嬉しそうに尻尾を振った。
「任せな!」
「今回は三日もあるからね」
「余裕余裕」
軽い足取りで、店の奥の闇へ消えていく。
クロウは、その姿を見送る。
そして、ゆっくりと目を閉じた。
3日後。
秋山の望む答えが待っているとは限らない。
だが。
真実だけは、必ず見つけ出す。
今後もよろしくお願い致します。




