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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第四章 皮膚シールを作ろう!

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フェアリー・リングの妖精達

 オーベルジュ大公領に住む人々を苦しめた流行病が、妖精達の仕業である可能性があるなんて……。


「目眩で倒れそうになったさい、メーリスの浄化シールや回復シールが有効だった点が引っかかったのだ」


 病気に起因し治療法がないと医者が匙を投げた目眩ならば、シールで治るわけがないのである。


「人里にフェアリー・リングを作るのも、おかしいですよね」

「たしかに」

「しかし、どうして長年この違和感に誰も気付かなかったのでしょうか?」

「それについてだが、奴らは認識と記憶に干渉する魔法を使っている可能性が高い」


 先ほど目眩を覚えたユベール様は、記憶が混濁する瞬間があったという。


「頭の中が真っ白になって、これまで何を話していたのか曖昧になった」


 私が浄化シールと回復シールを貼った瞬間、我に返ることができたようだ。


「目眩病について疑問に思った瞬間、何も考えられなくなるような精神干渉系の魔法でしょうか?」

「その可能性が高い」


 妖精達は人里で暮らすために、フロンティエールに住む人々から魔力を奪っていた。

 絶対に許せるものではない。


 そんな妖精達のフェアリー・リングを調査しに行く前に、対策のシールを貼っておく。

 ユベール様にもペタペタ貼っていった。


「そのようにたくさん使ってもいいのか?」

「命には替えられませんので!」


 いつか役に立つかもしれない、と作っていたシールが今、役立つのだ。

 コゼットとシュシュも、妖精達との対峙に向け、やる気があるようだ。

 〝トネリコの森〟での活躍が、自信に繋がったのだろう。


「二人とも、頼みますね」

『きゅう!』

『任せて!』


 私も足手まといにならないようにしなくては。

 補助系、攻撃系のシールはいつでも使えるように、一冊の本にまとめて貼ったシール帳を作ってみたのだ。

 シール帳自体にも仕掛けの魔法をかけてあって、必要なシールの名前を口にしたら、貼ってあるページが自動で開くようになっている。

 これで、戦闘時にわたわたせずに済むだろう。


 ユベール様と共に、湖があるという裏庭のほうへ回り込む。

 屋敷が影になっているからか、薄暗くじめっとした印象がある。


「その、正直に申しますと少々不気味ですね」

「たしかに。ただ、昔はこうではなかった」


 ユベール様の記憶に残る裏庭は、ここまで暗い雰囲気ではなかったという。

 妖精達が住みついた影響なのか。

 進んでいくうちに、違和感が大きくなる。


「ユベール様、あちらに黒水晶があります」

「なんだと!?」


 クラスター状の水晶が突起していて、汚染されたように黒ずんでいる。


「あれは……魔力を貯めるコアかもしれない」


 そんな物などなかったという。


「人里で見られる物ではないだろう」

「ええ……」


 確実に、妖精達がこの辺りを住処にしているのだ。

 そしてついに、妖精達の拠点となるフェアリー・リングを発見した。

 毒々しいキノコが円を描くように生えている。

 そこに、コウモリに似た妖精達が座っていた。

 私達に気付くと、ギャアギャアと喚き始める。

 すぐさまそれにシュシュが反応した。


『出て行け、って言ってる』


 おそらくそんなことを言っているのだろうな、と思っていた。


「シュシュ、交渉とかできますか?」

『出て行け、って言うの?』

「ええ、穏便な形で」

『わかった。言ってみる』


 シュシュが妖精語で話しかけてくれた。


『ぎゃ! ぎゃぎゃぎゃ! ぎゃ?』

『ギャア、ギャーース!!』


 妖精側は毛を逆立てながら、甲高い鳴き声をあげた。


『いやだ、だって』


 これから先も妖精達はフロンティエールを拠点とし、人間達から魔力を奪うつもりだったようだ。


「ならば、倒すしかないようだな」


 ユベール様が水晶剣をすらりと抜く。

 それが戦闘開始の合図となった。


『ギャーーーーーー!!!!』


 妖精は耳をつんざくような高い声をあげる。

 衝撃波が生まれ、地面を裂いた。

 足場が悪くなるも、ユベール様は妖精に接近し、一撃を与える。

 しかしながら、その妖精が幻術で作り出した幻だったようだ。

 それを確認してすぐに、私は鑑定魔法を展開させる。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!!」


 すると、本物のみ情報が浮かんでくる。


 種族名:イビル・フェアリー

 ランク:中位妖精

 属性:悪

 状態:激昂

 説明:悪意の塊から生まれた妖精。魔法に精通し、非常に悪質。



 十数体いるように見えた妖精――イビル・フェアリーのほとんどは、幻だったようだ。

 イビル・フェアリーの情報を目にしたユベール様は、弱点である聖魔法を付与させ、切りつける。


『ギャアアアアアア!!!!』


 腕を切り落とされ、断末魔のような叫びを上げるイビル・フェアリーだったが、突然姿を消す。


 いったいどこに――と思った瞬間、目の前に現れてギョッとする。

 転移魔法を使ったのだろう。


『ギャッ、ギャッ、ギャーース!!』

「メーリス!!」


 ユベール様が私の名前を叫んだ瞬間、魔法陣が浮かび上げる。

 魔力吸引の魔法だ、と気付いたときには発動していた。


 致命傷を負ったので、私の魔力を奪って回復させようとしていたのだろう。

 しかし――私を守るようにして、シールの魔法が発動される。

 反転魔法シール。

 相手が発動した魔法を、そのまま返すシールだ。

 私からごっそり魔力を奪うつもりだったのだろう。

 そんなイビル・フェアリーは、逆に大量の魔力を奪われて絶叫した。


『ギャーーーーーーーーーーーーー!!!!』


 そのまま全身が干からび、命が尽きる。


「倒したか?」

「はい」


 イビル・フェアリーの体は崩れて砂と化し、風にながれて消えてしまう。

 裏庭の淀んだ空気もきれいになり、黒ずんだ水晶も跡形がなくなっていた。


「やはり、魔力吸引の魔法を使ってきたか」

「ユベール様の想像通りでしたね」


 調査する前に、魔力吸引の魔法を使う可能性が高いので、注意しておくように言われていたのだ。

 そして狙われるならば、竜族のコゼットと契約を結んでいて高い魔力量を持つ私だろうとも。

 それを聞いて、反転魔法シールを貼っていたのである。


「ユベール様、おけがはありませんか?」

「平気だ。メーリスは?」

「私もこのとおり、問題ありません」

「そうか、よかった」


 無事、オーベルジュ大公家の裏庭を拠点としていたイビル・フェアリーを倒すことができた。

 これで一安心だろう。 

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