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シールの魔女は婚約破棄されたので、魔女業に専念することにしました!  作者: 江本マシメサ
第四章 皮膚シールを作ろう!

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シャルール湿地帯へ

 イビル・フェアリーの討伐を成功したあと、まっすぐオーベルジュ閣下に報告に向かった。


「妖精の仕業だって!? ぜんぜん気付かなかった!!」

「叔父上、アデールがフェアリー・リングに近づいた話は、覚えていただろうか?」

「アデールがフェアリー・リングに? あ、ああ……思い出した! そんなことがあった! どうして今まで忘れていたのか!?」


 きっとその記憶もイビル・フェアリーが精神に干渉し、記憶を曖昧にさせていたのかもしれない。


「アデールがフェアリー・リングについて、晩餐会の招待客に話を聞いたと言っていたのだけれど、それもイビル・フェアリーの仕業だったのかもしれないなあ……」


 年に一度集まる晩餐会は、親族を中心に親交の深い人達しか招待していないという。


「妖精の深い知識があるような人はいないだろうから」


 イビル・フェアリーが人間に化けて参加者を装い、アデールにフェアリー・リングのことを吹き込んだのかもしれない。


「後遺症の目眩の症状を訴える人も多かったんだ。これで、悩みが解消されたらいいな」


 まさかフェアリー・リングが大変な問題を引き起こしていたとは、夢にも思わなかった。

 後遺症に悩んでいた人も、完治と見せかけて魔力を奪っていたのだろう。

 イビル・フェアリーは倒した。これで安心できるだろう。


 これからオーベルジュ閣下や領地の魔法使い達が、裏庭の調査をしてくれるようだ。

 しっかり安全を確認してもらい、領民の方々が安心して暮らせる土地にしてほしい。


 今日はここで一泊するという。

 ユベール様と紅茶を囲みながら、これからについて話し合う。


「イビル・フェアリーを討伐したので、アデールの背中の痕がなくなるのでしょうか?」

「いいや、この先も残る可能性が高い」

「やはり、そうなりますよね……」


 人が発動させたものならば、術者が死んだ場合に消失する。けれども妖精の呪いは特殊で、すべて消え去ることはないようだ。


「ただ、次代の子どもにまで呪いが作用することはないだろう」


 それを聞いて安心する。


「でしたら、あとはスキン・スライム探しを頑張らなければならないわけですね」

「そうだな」


 ひとまず、今晩はゆっくり休ませてもらって、明日のスキン・スライム探しに備えなければ。


 そんな感じで、一日目の素材探しの旅は終わったのだった。


 ◇◇◇


 翌日、私とユベール様はスキン・スライムを探しに行くためにフロンティエールを出発する。

 オーベルジュ閣下とセザムさんなど、たくさんの人達が見送りに来てくれた。


「ユベールお坊ちゃま、どうかご無事で」

「気をつけるんだよ」


 ワイバーン車に乗り込み、フロンティエールの地を飛び立ったのだった。


 大空を十分ほど飛んだ先に、スキン・スライムが生息しているという〝シャルール湿地帯〟に到着した。

 〝トネリコの森〟と違い、かなり地面がぬかるんで歩きにくい。

 一歩踏み出した途端、足が想定以上に沈んでギョッとする。

 引き抜こうとしても、びくともしなかった。


「メーリス、大丈夫か?」

「すみません、足がぬかるみに取られてしまって」


 ユベール様は私の体を支え、沈みかけていた足を優しく引き抜いてくれた。


「ありがとうございます」

「気にするな」


 さっそく足手まといになっている。しっかりしなければ。

 歩くときはなるべく地面がしっかりしているところを進んだほうがいいだろう。


 今回、スキン・スライム探しということで、魔獣及び魔物避けは使っていない。

 そのため、何度もエンカウントしてしまう。 

 湿地帯なので、通常の森と生態系が大きく異なる。

 虫系の魔物は群れで襲撃してくるので、心臓に悪い。

 ユベール様がすぐに倒してくれることだけが唯一の救いである。


 黙々と先を進むこと二時間ほど――大きな沼が見えてくる。


「あれは、魔物が潜んでいると主張するような沼だな」

「ええ、明らかに怪しい気配がします」

「鑑定魔法で検索してみようか」

「そうですね」


 呪文を唱え、鑑定魔法で沼に生息しているであろう生き物を検索してみた。


「――見定めよ、鑑定アナライズ!」


 種族名:スキン・スライム

 ランク:中位魔物

 属性:無

 説明:人間の肌に極めて近い質感を持つ唯一無二の魔物。美容系のアイテムの素材になるが、乱獲が進み数が極端に減っている。


「なっ――ユベール様、大変です!!」

「どうした?」

「あの沼全体が、スキン・スライムだそうです」

「なんだって!?」


 そもそも、沼ではなかったのかもしれない。

 スキン・スライムが体を休めている状態なのだろう。

 一歩、足を踏み入れた瞬間、沼――ではなく、スキン・スライムが動き出す。


『キイイイイイイイン!』


 耳を塞ぎたくなるような鳴き声を上げつつ、広がった状態から球体に戻った。


「お、大きい……!」


 見上げるほどに大きなスキン・スライムが出現してしまった。

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