第三十話 敗北の経験
地下闘技場の事件から、数日が過ぎた。
シェイン王国には、少しずつ日常が戻りつつあった。
訓練場には朝から木剣の音が響き、兵たちはいつものように走り込み、城の厨房からは焼きたてのパンの匂いが漂っている。
だが、その日常は以前とまったく同じではない。
封印室には、忘却の剣が眠っている。
王城の結界には、記憶干渉を警戒する術式が加えられている。
そして、トーマの訓練場復帰には、毎回ロイドの厳しい監視がついていた。
「トーマ、そこまでです」
「まだ十回しか振ってない」
「今日は十回までです」
「昨日は十五回だった」
「昨日の夜、腕の痛みが出たと報告を受けています」
「……誰から?」
「ノアです」
トーマは少しだけ顔をしかめた。
訓練場の端にいたノアが、気まずそうに目を逸らす。
「ご、ごめん。でも、痛いの隠してたから」
「隠してはいない。言わなかっただけだ」
ユナが静かに言う。
「それを隠すと言う」
ミアが頷く。
「そうだぞ、トーマ! 痛い時は痛いって言えってロイドが言ってただろ!」
「ミアに言われると妙に悔しいな」
「なんでだ!」
レナが腕を組んで、うんうんと頷く。
「分かるぞトーマ。まだ行けると思う時ほど止められるのは悔しい!」
ロイドが即座に言う。
「レナはそちら側に立たないでください」
「でも気持ちは分かる!」
「分かっても止める側に回ってください」
「うむ、止まれトーマ!」
「切り替えが早い」
トーマは木剣を下ろした。
身体はもうほとんど回復している。
歩ける。
走れる。
軽く剣も振れる。
だが、完全に元通りというわけではなかった。
忘却の剣に支配された時の反動は、肉体の奥にまだ少し残っている。
無理をすると、腕が痺れる。
胸の奥が冷える。
ときどき、視界の端に黒い羽根の幻がよぎる。
そのたびに、トーマは名前を呼ぶ。
「トーマ」
自分の名。
それから、今ここにいる名前たち。
「ノア。ミア。ユナ。レナ。ロイド。ソル」
その訓練は続いていた。
もう一つ、変わったことがある。
トーマは剣を持たない訓練を増やしていた。
木剣ではなく、短い棒。
あるいは素手。
忘却の剣を再び手にする日はいつか来るかもしれない。
けれど今は、剣に頼らない体の使い方を覚える必要があった。
ソルはそれを静かに見ていた。
「悪くない」
「本当に?」
「地下闘技場の前より、動きに迷いが少ない」
トーマは少し驚く。
「あんな目に遭ったのに?」
「遭ったからだ」
ソルは木剣を肩に乗せる。
「お前は怖さを知った。自分が壊れることも、誰かを傷つけることも、剣に飲まれることも。そのうえで立っている」
トーマは黙る。
ソルは続けた。
「恐怖を知らない強さは、折れる時がある。恐怖を知って、それでも前に出る強さは、粘る」
「俺にそれがあるのか?」
「今はまだ小さい」
「はっきり言うな」
「だが、ある」
その言葉に、トーマは少しだけ息を吐いた。
ソルにそう言われると、不思議と信じられる。
レナが横から言った。
「つまり、トーマは強くなってるってことだな!」
「そうだ」
ソルは頷く。
「でも今日はここまでだ」
「ええっ」
トーマとレナが同時に声を上げた。
ロイドは満足そうに頷く。
「ソルがこちら側にいて助かります」
「私は最初からロイド側だ」
「たまに訓練量が過剰ですが」
「……善処する」
「そこは断言してください」
そんなやり取りの中で、訓練場に一人の兵士が駆け込んできた。
「ロイド様!」
ロイドが振り返る。
「何事ですか」
「テリア王国より、正式な書簡が届きました!」
その言葉に、訓練場の空気が変わった。
テリア王国。
その名を聞くと、どうしても地下闘技場の記憶が胸をよぎる。
テリア女王。
セイレン。
赤い裂け目。
記録喰い。
忘却の剣。
だが兵士が差し出した封筒には、禍々しさはなかった。
青と黒の封蝋。
テリア王国の正式な紋章。
ロイドは封を確認し、慎重に開いた。
文面を読み始めた彼女の眼鏡の奥で、目が少し細くなる。
「……なるほど」
レナが前のめりになる。
「何だ? また何か来るのか?」
「来る、というより」
ロイドは書簡を閉じた。
「開催されます」
ミアが目を輝かせる。
「大会か!?」
「はい」
ロイドは全員を見た。
「リトルヴァルキリートーナメントの次に行われるもの。当然、ヴァルキリートーナメントです」
訓練場に、ざわめきが走った。
ヴァルキリートーナメント。
各国のヴァルキリーたちが出場する本戦。
リトルヴァルキリーではない。
ノアたちが戦った大会より、はるかに規模も実力も上。
ロイド、レナ、ソル。
リン、ガーネ。
アリス、ロイ。
三国の主力がぶつかる、戦乙女たちの大会。
レナの顔が一気に輝く。
「ついに来たか!」
ソルは静かに息を吐いた。
「予定通りだな」
トーマはロイドを見る。
「それは、皆への案内か」
「はい。ですが、それだけではありません」
ロイドはもう一通、封筒の中から小さな手紙を取り出した。
封蝋は同じテリア王国のもの。
だが、宛名にはこう書かれていた。
トーマ殿へ
トーマは眉を寄せる。
「俺に?」
「はい。招待状です」
ノアが小さく息を呑む。
ミアは驚いて叫ぶ。
「トーマも大会に出るのか!?」
「大声」
ユナが注意する。
「すまん!」
ロイドは手紙をトーマへ渡した。
「読みますか」
「ああ」
トーマは受け取る。
少しだけ緊張した。
忘却の剣の封印以降、テリア王国から個人的な文が届くことはなかった。
差出人は、テリア女王。
トーマは封を開き、文を読む。
そこには、丁寧な文字でこう書かれていた。
⸻
トーマ殿。
次なるヴァルキリートーナメントに、特別招待者としてお主を招く。
正式なヴァルキリーではないお主を招くことは、通常の慣例から外れる。
じゃが、お主は三国の運命にすでに深く関わっておる。
忘却の剣、記録喰い、そしてお主自身の過去。
それらと向き合うためにも、戦いの場に身を置くことは意味があるとワシは考える。
もちろん、無理に勝てとは言わぬ。
むしろ、今のお主にはこう伝えておきたい。
負けても構わぬ。
勝利だけが得るものではない。
負けてなお立ち上がること。
敗北の中で自分を知ること。
誰かの強さを受け取ること。
それもまた、今のお主に必要な戦いじゃ。
参加するかどうかは、お主自身が決めよ。
テリア
⸻
トーマは手紙を読み終え、しばらく黙っていた。
負けても構わぬ。
その一文が、胸に残った。
大会への招待状にしては、妙な言葉だった。
勝て。
示せ。
証明せよ。
そう言われるなら分かる。
だが、テリア女王は負けてもいいと言った。
「負けても構わぬ……」
トーマは呟く。
ソルが手紙を見る。
「テリア女王らしいようで、らしくない言葉だな」
ロイドは頷く。
「勝敗よりも、経験を重視しているのでしょう。地下闘技場の件を踏まえれば、トーマには制御された戦闘経験が必要です」
レナが拳を握る。
「つまり大会で鍛えるってことだな!」
ユナが冷静に言う。
「たぶん、それだけじゃない」
ノアも静かに言った。
「負けても構わないって……トーマに、勝たなきゃいけないって思いすぎるなって言ってるのかも」
トーマはノアを見る。
ノアは少し考えながら続ける。
「地下闘技場で、トーマは自分が何者か分からなくなった。勝つとか、強くなるとか、それだけを考えたら、また怖くなるかもしれない」
「だから負けてもいい?」
「うん。負けても、トーマはトーマだから」
その言葉は、静かに刺さった。
トーマは自分の手を見る。
剣を握った手。
仲間を傷つけた手。
剣を離そうとした手。
「参加するべきだと思うか?」
誰にともなく問う。
ロイドが答える。
「利点と危険があります」
「だろうな」
「利点は、実戦に近い環境で、しかし殺害禁止のルール下で戦闘経験を得られること。各国のヴァルキリーと戦うことで、自分の立ち位置を把握できます」
「危険は?」
「記録喰い、レッドフラッグス、忘却の剣に関わる何者かが大会を利用する可能性」
ソルが続ける。
「それと、お前自身の精神状態だ。追い詰められた時、剣なしでどこまで保てるか」
トーマは頷く。
「忘却の剣は使えない」
ロイドはきっぱり言った。
「当然です。封印解除は認められません」
レナが腕を組む。
「じゃあ木剣か?」
「大会用の訓練剣、もしくは非殺傷武器を用意します。正式な出場形式はテリア側へ確認が必要ですが、特別招待枠なら調整は可能でしょう」
ミアが目を輝かせる。
「トーマも大会出るのか……! 見たい!」
ユナが言う。
「でも危ない」
ミアは少し考える。
「危ないけど、見たい!」
「正直」
ノアはトーマを見ていた。
「トーマは、どうしたい?」
その問いに、トーマはすぐには答えられなかった。
どうしたいのか。
怖い。
当然怖い。
人前で戦うこと。
追い詰められること。
自分の中にまた黒いものが湧くかもしれないこと。
でも、それ以上に。
逃げたくない。
地下闘技場で、自分は仲間の名前に助けられた。
なら今度は、戦いの中で自分を保てるようにならなければならない。
誰かを傷つけないために。
誰かに守られるだけで終わらないために。
そしていつか、忘却の剣と向き合うために。
「出る」
トーマは言った。
訓練場の空気が止まる。
「怖い。でも、出る」
ノアは静かに頷いた。
「うん」
ソルも頷く。
「なら、鍛える」
レナが笑う。
「よし! 特訓だな!」
ロイドがすぐに言う。
「無茶な特訓は禁止です」
「分かってる!」
「本当に?」
「たぶん!」
「駄目です」
ミアが手を上げる。
「私たちも手伝う!」
ユナが頷く。
「トーマの名前を呼ぶ訓練ならできる」
ノアも言う。
「防御も、支える膜も使える」
トーマは三人を見る。
「ありがとう」
ミアがにっと笑う。
「私たちも、次の大会に出るわけじゃないけど、見てるだけじゃつまらないからな!」
「応援と訓練補助」
ユナが言う。
「それと、トーマが無理した時の通報」
ノアが少し申し訳なさそうに言う。
「それは私がやるかも」
「信頼されてないな、俺」
ロイドが淡々と答える。
「信頼しているから監視するのです」
「そういうものか?」
「そういうものです」
トーマは苦笑した。
けれど、その胸には温かいものがあった。
また戦いが始まる。
今度は地下の闇ではない。
三国が見守る大会。
ルールある戦い。
けれど、その裏にはきっと不穏な影もある。
忘却の剣。
記録喰い。
ゼロ。
セイレンとルーク。
そして、テリア女王の招待状。
負けても構わぬ。
その言葉が、戦いの意味を変えていた。
勝つためだけではない。
自分を知るため。
敗北しても名前を失わないため。
誰かの強さを受け取るため。
そして、トーマとして立つため。
⸻
その日から、ヴァルキリートーナメントに向けた特訓が始まった。
シェイン王国の訓練場は、一気に熱を帯びた。
ロイドは大会形式を想定した戦術訓練を組んだ。
「トーマは正式なヴァルキリーではないため、通常の戦闘兵とは異なる扱いになる可能性があります。単騎戦に出るか、特別試合枠になるか、まだ確定していません。ですが、どちらにも対応できるよう準備します」
「集団戦もあるのか?」
「可能性は低いですが、完全には否定できません」
「なら全部やるのか」
「はい」
「容赦ないな」
「負けても構わないことと、準備を怠ることは別です」
トーマは何も言えなかった。
ソルは基礎戦闘を担当した。
剣を持たず、短棒と素手での動き。
「忘却の剣がなくても、お前は戦える必要がある」
「素手か」
「ゼロも素手を好んだ」
その言葉に、トーマは一瞬反応した。
ソルも気づいたが、すぐに続ける。
「だが、お前はゼロではない。真似るな。参考にしろ」
「分かった」
トーマは拳を握る。
剣士としてではなく、トーマとして戦う。
それが新しい課題だった。
レナは速度訓練を担当した。
「私についてこい!」
「無理だ」
「最初から諦めるな!」
「レナについていける人間の方が少ない」
「じゃあ少し遅く走る!」
「本当に少しだな!」
レナの訓練は荒かった。
だが、彼女は以前よりトーマの状態を見るようになっていた。
息が乱れすぎた時。
足元がふらついた時。
顔色が変わった時。
以前のレナなら気づかず進んでいたかもしれない。
でも今は違う。
「止まれ、トーマ」
そう言えるようになっていた。
ロイドはそれを見て、小さく頷いた。
「成長していますね」
レナは得意げに笑う。
「私も特訓してるからな!」
「何の?」
「止める特訓!」
「良いことです」
ノアは防御と精神固定を担当した。
ノアの魔力膜は、トーマの訓練に欠かせないものになった。
硬い盾。
受け流す膜。
支える足場。
そして、もう一つ。
名前を刻む光。
ノアは小さな防御膜に、トーマの名前を込める練習を始めていた。
「これが近くにあると、少し落ち着く」
トーマは言った。
「本当?」
「ああ。黒いものが近づいても、戻りやすい気がする」
ノアは嬉しそうに微笑んだ。
「じゃあ、もっと上手くなる」
「無理はするなよ」
「トーマに言われたくない」
「……確かに」
ミアとユナも手伝った。
ミアは全力で突っ込んできて、トーマに「予想外への対応」を叩き込む。
「いくぞトーマ!」
「待て、合図は?」
「今言った!」
「それは合図じゃなくて宣言だ!」
ユナはその横で、糸を使って足元や腕を軽く引っかける。
「戦場では思った通りに動けない」
「それは分かるけど、ミアとユナの組み合わせは地味に厄介だな」
「褒め言葉」
「褒めてる」
三人のリトルヴァルキリーたちは、以前よりずっと息が合っていた。
トーマの訓練に付き合うことで、彼女たち自身も成長していく。
それを見たロイドは、記録にこう書いた。
トーマの訓練は、シェイン全体の連携強化にも繋がっている。
⸻
一方、テリア王国でも準備は始まっていた。
アリスは自室で魔法式を組み直していた。
「トーマが出るなら、普通の大会じゃ済まないわね」
ロイは窓辺に座っている。
「うん」
「あなたも出るんでしょ?」
「たぶん」
「たぶんって何よ。最高戦力でしょうが」
「テリア女王が決める」
「出るわよ。絶対」
ロイは少しだけ考える。
「ソルも出る」
「でしょうね」
「戦うかも」
「嬉しそうね」
ロイは首を傾げる。
「そう?」
「そうよ」
ロイは少しだけ目を逸らした。
アリスはそれを見て、小さく笑う。
「分かりづらいけど、あなたも変わったわね」
「そう?」
「ええ。前より人に興味がある」
ロイは少し黙った。
そして、短く言った。
「トーマ、戻ったから」
アリスはその意味を考える。
地下闘技場で、ロイは確かにトーマの名前を呼んだ。
彼が戻ったことは、ロイにも何かを残したのだろう。
テリア女王は大会の書類を見ながら、窓の外を見ていた。
「負けても構わぬ、か」
自分で書いた言葉を思い返す。
それは、トーマに向けた言葉であると同時に、過去の自分へ向けた言葉でもあった。
勝たせること。
強くすること。
可能性を伸ばすこと。
それだけを見て、セイレンを見失った。
だから今度は、負けることにも意味を与えたかった。
テリア女王は静かに呟く。
「トーマ。お主が何を得るか、見せてもらうぞ」
⸻
ベイル王国でも、リンとガーネが訓練を再開していた。
リンは砕けたチャクラムの代わりに、新しい武器を調整している。
「地下闘技場では散々でしたからねぇ。次はもう少し美しく戦いたいものです」
ガーネは片腕の回復訓練をしていた。
「大会、出る」
「もちろんです。あなたが出ないと、ベイル女王陛下が訓練場を壊します」
「もう壊した」
「あら、早いですねぇ」
遠くで、ベイル女王の豪快な笑い声が響く。
「ヴァルキリートーナメントだ! 鍛え直せ、全員!」
ベイル王国の訓練場には、土煙が上がっていた。
⸻
そして荒野。
紅い旗の下。
セイレンは、三国に大会の気配が広がっていくのを感じていた。
ルークは隣で大剣を磨いている。
今度はちゃんと刃を磨いていた。
「トーマ、出る?」
ルークが聞く。
「出るでしょうね」
「戦う?」
「大会ではね」
「私たちは?」
「出ないわ」
「そっか」
ルークは少し残念そうだった。
「戦いたい」
「まだ駄目」
「なんで?」
「今のトーマは、まだ大会で学ぶ段階よ。私たちが潰すには早い」
ルークは首を傾げる。
「潰す?」
セイレンは少し黙る。
以前なら即答できた。
弱ければ壊す。
そう言えた。
だが今は、少しだけ言葉が遅れた。
「……試す」
ルークはセイレンを見る。
「変わった?」
「変わってない」
「そっか」
ルークはそれ以上聞かなかった。
セイレンは遠く、シェイン王国の方角を見る。
「...負けても構わぬ、ね」
テリア女王の書いた言葉を、どこかで感じ取っているようだった。
セイレンは薄く笑う。
「母上にしては、悪くない言葉ね」
ルークが顔を上げる。
「褒めた?」
「褒めてない」
「そっか」
紅い旗が風に揺れる。
セイレンは小さく呟いた。
「せいぜい負けなさい、トーマ」
その声には、嘲りだけではなかった。
「負けて、立ちなさい。剣ではなく、自分の足で」
⸻
シェイン王国の訓練場。
夕暮れ。
トーマは短棒を構えていた。
正面にはソル。
横にはレナ。
後方にはノア、ミア、ユナ。
ロイドが記録板を持って立っている。
「今日の最後です」
ロイドが言う。
「トーマ、目的は?」
トーマは答える。
「勝つことじゃない」
ソルが問う。
「では何だ」
トーマは短棒を握り直した。
「倒れても、自分の名前を失わないこと」
ノアが静かに頷く。
ミアが拳を握る。
ユナが糸を構える。
レナが走る準備をする。
ソルが剣を構える。
「では来い」
トーマは一歩踏み込む。
怖さはある。
だが、その怖さと一緒に進む。
大会は近い。
ヴァルキリートーナメント。
戦乙女たちの舞台。
そこに、記憶なき男トーマも招かれた。
勝つためだけではない。
負けるためでもない。
自分を知るために。
誰かの強さを受け取るために。
そして、忘却に抗う名前を、戦いの中で刻むために。
夕暮れの訓練場に、木と木がぶつかる乾いた音が響いた。




