第二十二話 残るもの
闇の中で、黒い剣だけが光っていた。
光と呼ぶにはあまりにも暗い。
闇と呼ぶにはあまりにも鮮明。
それは、見る者の目を焼くのではなく、記憶を削る光だった。
地下闘技場の魔法灯はすべて消えた。
壁画の保護陣も崩れかけ、通信陣から届いていたテリア女王の声も途切れ途切れになっている。
『ソル……聞こえ……るか……トーマを……剣を……』
そこで雑音が走る。
青白い通信陣が歪み、黒く滲む。
ロイドが立ち上がろうとしながら、歯を食いしばった。
「通信が……喰われている……!」
目の前にいるのは、トーマだった。
だが、もうトーマではなかった。
表情は消えている。
呼吸は浅く、規則的で、人間らしさがない。
空白の瞳は誰も見ていないようで、同時に全員を見ている。
忘却の剣が、彼の手の中で静かに鳴った。
「記録は不要」
トーマの口が動く。
声は冷たく、平坦だった。
「名は不要」
黒い刃がゆっくり持ち上がる。
「苦痛も、絆も、過去も、すべて忘れればよい」
その言葉を聞いた瞬間、ソルは立ち上がった。
足は震えていた。
先ほどの黒い衝撃で全身が痺れている。
骨の奥にまで冷たいものが入り込んでいる。
それでも、立った。
「ふざけるな」
ソルは剣を構える。
「トーマは、そんなことを望んでいない」
空白の瞳がソルへ向く。
「トーマは壊れた」
「壊れても、終わっていない」
「終わった」
「終わっていない!」
ソルが踏み込んだ。
速い。
シェイン最高戦力。
一人で部隊を壊滅させると言われる彼女の剣が、闇を裂いてトーマへ迫る。
だが、トーマは動かなかった。
いや。
動いたことに、誰も気づけなかった。
次の瞬間、ソルの剣が弾かれた。
黒い刃が、いつの間にかそこにあった。
重い音ではない。
まるで、剣同士がぶつかった記録そのものが消されたような、音のない衝突。
ソルの腕に激痛が走る。
「っ……!」
トーマが一歩踏み込む。
ただ一歩。
その一歩で、距離が消えた。
「忘れろ」
黒い剣が振られる。
ソルは身を捻って避けた。
完全には避けきれない。
肩口を黒い刃がかすめた。
血は出なかった。
代わりに、ソルの頭の中から何かが抜け落ちる感覚がした。
「……っ、何を……」
一瞬、ソルは自分がなぜここにいるのか分からなくなった。
誰を守ろうとしていたのか。
何のために剣を握っていたのか。
空白が生まれる。
すぐにロイの声が飛ぶ。
「ソル!」
その名前で、ソルは戻った。
ソル。
自分の名前。
シェインのヴァルキリー。
最高戦力。
トーマを守る。
「……助かった」
ソルは歯を食いしばる。
ロイは短剣を構えながら言う。
「名前を切られる」
ロイドが叫ぶ。
「刃に触れるな! 記憶や認識を削られます!」
リンがチャクラムを展開する。
「なんて厄介な剣でしょうねぇ……!」
ガーネが前へ出る。
「止める」
大斧を構えたガーネが、地面を踏み砕く勢いで突進した。
彼女の戦いは単純だ。
だが、その単純さは強さでもある。
迷いなく進む。
迷いなく振る。
迷いなく耐える。
「おおおっ!」
ガーネの大斧が、トーマへ振り下ろされる。
地下闘技場の床が震えるほどの一撃。
まともに受ければ、普通の人間なら骨ごと砕ける。
だが、トーマは剣を片手で上げた。
黒い刃が、大斧を受ける。
受けた、というより。
大斧の勢いが、途中で忘れられた。
「なっ……」
ガーネの目が見開かれる。
力が抜けたわけではない。
腕も動いている。
筋肉も張っている。
武器も振り下ろしている。
なのに、攻撃としての意味が消えた。
トーマの剣が横へ流れる。
ガーネの大斧が弾かれ、彼女の体勢が崩れる。
「ガーネ!」
リンのチャクラムが飛ぶ。
大小の円刃が闇を裂き、トーマの腕と足を狙う。
殺すためではない。
拘束するため。
武器を落とさせるため。
だが、トーマはリンを見た。
その視線だけで、リンの背筋が凍る。
「あなた……」
リンは笑おうとした。
いつものように余裕を見せようとした。
だが、口元が引きつる。
トーマが剣を振る。
チャクラムの一つが空中で消えた。
砕けたのではない。
落ちたのでもない。
それが飛んでいたという事実だけが抜き取られたように、視界から消えた。
リンの手元に戻る感覚もない。
「……冗談が過ぎますねぇ」
もう一つのチャクラムが戻る前に、トーマがリンの前にいた。
速すぎる。
リンは後ろへ跳ぶ。
間に合わない。
黒い剣が彼女の腹部を狙う。
アリスの結界が間に入った。
「させない!」
蒼い結界が黒い刃を受ける。
一瞬、結界は耐えた。
だが次の瞬間、結界の術式の一部が消えた。
アリスの目が見開かれる。
「術式を……忘れさせた!?」
結界が崩れる。
衝撃でリンとアリスが吹き飛ばされた。
リンは地面を転がり、壁に叩きつけられる。
アリスも膝をつき、肩で息をした。
「っ……なんなのよ、これ……!」
ロイドは必死に魔法陣を組んでいた。
「記憶干渉防御、術式再構築……対象名固定……!」
しかし、黒い剣の力は術式に触れるたびに、その意味を削っていく。
防御陣の一角が消える。
次に、補助陣の名前が消える。
さらに、ロイド自身が組んだはずの式の一部が思い出せなくなる。
「……私は、今、何を……」
ロイドの手が止まりかける。
その瞬間、ロイが叫ぶ。
「ロイド!」
名前を呼ばれ、ロイドの意識が戻る。
「っ、すみません!」
「謝るな」
ロイは影のように走った。
闇の中で、彼女だけがまだトーマの動きに追いつこうとしていた。
短剣を逆手に持ち、背後へ回る。
狙いは首ではない。
手首。
剣を持つ手。
「落として」
ロイの短剣が、トーマの手首へ迫る。
トーマは振り返らない。
だが、黒い剣が後ろへ流れた。
ロイの短剣とぶつかる。
その瞬間、ロイの視界が白く飛んだ。
いや、白ではない。
何もない。
彼女は一瞬、自分が誰か分からなくなった。
黒い服。
短剣。
影。
任務。
名前。
名前が遠い。
「ロイ!」
ソルの声。
戻る。
ロイ。
テリアの影。
ソルのライバル。
トーマを止めに来た。
「……危ない」
ロイは即座に後退する。
だが、遅い。
トーマの蹴りがロイの腹に入った。
音がした。
重い、嫌な音。
ロイの体が宙を舞い、石壁に叩きつけられる。
「ロイ!」
ソルが叫ぶ。
ロイは崩れ落ちた。
それでも、短剣は手放していない。
「まだ……」
立とうとする。
しかし膝が笑う。
記録を削られた影響か、体が自分のものではないように重い。
トーマはロイへ向かって歩き出した。
ソルが割って入る。
「こっちを見ろ!」
剣を構える。
ソルの目には怒りがあった。
恐怖もあった。
それでも、立っていた。
「お前がトーマの体を使うな」
トーマの表情は変わらない。
「体も名も、器にすぎない」
「違う」
ソルの声が震える。
「トーマは、トーマだ」
「トーマは忘れた」
「なら、思い出させる!」
ソルが再び踏み込む。
今度は真正面からではない。
ロイが作った影。
リンが残したチャクラムの軌道。
ガーネが砕いた床。
アリスの崩れた結界の残滓。
すべてを使う。
仲間の戦いの残り香を拾い、剣筋へ変える。
トーマが一度見せた「受け取る戦い」。
ソルはそれを、今この場で返すように戦った。
彼女の剣が、トーマの黒い刃をかすめる。
避ける。
流す。
踏み込む。
引く。
もう一度斬る。
数合。
ほんの数合だけ、ソルは忘却の剣を持つトーマと渡り合った。
ロイドが目を見開く。
「ソル……!」
リンが血を拭いながら笑う。
「さすが、シェイン最高戦力ですねぇ……」
だが。
それでも、届かない。
トーマの剣が、ほんのわずかにソルの剣へ触れた。
その瞬間、ソルの剣筋が崩れる。
今まで積み上げた戦いの感覚。
何度も繰り返した型。
ロイと競い合った記憶。
その一部が、霧のように薄くなる。
「しまっ……」
黒い剣の柄が、ソルの胸を打った。
斬られてはいない。
だが、衝撃は深い。
ソルの体が弾き飛ばされ、砂地に転がる。
トーマだったものは、ゆっくり歩く。
黒い刃を下げたまま。
地下闘技場に、足音だけが響く。
こつ。
こつ。
こつ。
ソルは起き上がろうとする。
腕が動かない。
脚も痺れている。
それでも、彼女は歯を食いしばって顔を上げた。
「……トーマ」
名前を呼ぶ。
「戻れ」
返事はない。
トーマの空白の瞳が、ソルを見下ろす。
「戻る場所はない」
剣が上がる。
ソルの喉元へ向けて。
その瞬間、ガーネが横から飛び込んだ。
「まだ」
大斧を盾のように構える。
黒い剣が大斧に触れる。
金属が裂ける音はなかった。
大斧の刃が、最初からそこになかったように欠けた。
ガーネの目が揺れる。
だが、彼女は引かない。
「まだ、終わってない」
トーマが剣を横に振る。
ガーネの体が吹き飛び、観客席の石段へ叩きつけられた。
「ガーネ!」
リンが叫ぶ。
ガーネは動かない。
戦闘不能。
リンの表情から、完全に余裕が消えた。
「……これは、もう笑えませんねぇ」
彼女は残ったチャクラムを握る。
だが、その手は震えていた。
恐怖。
それを認めるしかなかった。
今のトーマは、誰かが一人で止められる相手ではない。
いや、全員で挑んでも届かない。
「ロイドさん」
リンが低く言う。
「撤退路は?」
ロイドは血の滲んだ額を押さえながら答える。
「確保を試みています。しかし、闘技場全体が忘却の領域に侵食されています。入口の位置情報が不安定です」
アリスが顔を上げる。
「入口が分からないってこと!?」
「はい。認識がずらされています」
闘技場が、迷宮になっていた。
入ってきた道が思い出せない。
階段はあった。
檻の通路もあった。
だが、どちらの方角だったのか、誰も確信できない。
記録喰いと忘却の剣。
二つの力が絡み合い、この場所そのものを記憶から切り離し始めていた。
ソルはそれでも立とうとする。
「撤退……するなら……トーマを……」
声が途切れる。
彼を置いていけない。
だが、近づけば殺される。
剣を奪うどころか、名前を削られる。
ロイが壁にもたれながら立ち上がった。
口元に血が滲んでいる。
「殺さず止める方法……少ない」
アリスが叫ぶ。
「少ないじゃなくて、考えなさいよ!」
ロイは短く答える。
「考えてる」
リンが苦笑する。
「その割には顔に出ませんねぇ」
「出ない」
「でしょうね」
そのわずかな会話すら、絶望に浮かぶ薄い泡だった。
トーマは中央に立っていた。
足元には、黒い影の残骸が蠢いている。
記録喰いの残滓は、忘却の剣によって削られ、もはや形を保てていない。
だが、完全には消えていなかった。
むしろ、喜んでいるように見えた。
──そうだ。
影が囁く。
──それでいい。忘れろ。消せ。空白になれ。
トーマの空白の瞳が、わずかに揺れる。
「空白……」
剣が黒く脈打つ。
「すべて、消す」
ロイドが気づいた。
「まずい……! 剣の領域が広がります!」
闘技場の壁画から、文字が剥がれ始めた。
古代文字が黒い粒になり、空中へ散る。
壁画に描かれた人々の輪郭が消えていく。
観客席。
檻。
砂地。
血の跡。
この場所の歴史そのものが、消えようとしていた。
「止めないと……」
アリスが立ち上がる。
だが、膝が震えている。
魔力は残っている。
それでも、心が震える。
恐ろしい。
魔法を組むたびに、術式の意味が削られる。
名前を忘れそうになる。
自分が誰に怒っているのか分からなくなりそうになる。
それでも。
「テリア王国ヴァルキリー、アリス……!」
アリスは自分の名を口にする。
「私は、ここにいる!」
巨大な魔法陣が展開される。
蒼い炎が闘技場を照らす。
リンも立ち上がった。
「ベイル王国ヴァルキリー、リン」
チャクラムに魔力を込める。
「まだ倒れるには、少し美しくありませんからねぇ」
ガーネも瓦礫の中で目を開ける。
「ガーネ」
大斧は壊れた。
それでも、拳を握る。
「まだ戦える」
ロイが短剣を構える。
「ロイ」
ソルも剣を支えに立ち上がる。
「ソル」
ロイドが血を拭い、魔法陣を組み直す。
「ロイド」
全員が、自分の名前を呼んだ。
ここにいるために。
忘れられないために。
トーマを止めるために。
「トーマ!」
ソルが叫ぶ。
「聞こえるなら、戻れ!」
ノアたちの名はここにない。
だが、トーマの中にあるはずだ。
ノア。
ミア。
ユナ。
レナ。
帰ると言った場所。
約束。
そのすべてを、ソルは声に込めた。
しかし。
トーマはゆっくり首を傾げただけだった。
「トーマは、もういない」
黒い剣が、横へ構えられる。
その構えを見た瞬間、全員が理解した。
来る。
今までとは違う。
これは、防御も回避も許されない一撃。
闘技場ごと、記録を断つ斬撃。
ロイドが叫ぶ。
「全員、防御!」
アリスが結界を張る。
リンがチャクラムを重ねる。
ガーネが前に立つ。
ロイが影の膜を広げる。
ソルが剣を構える。
ロイドが防御陣を展開する。
三国の力が重なった。
それでも、黒い剣が振られた瞬間。
すべてが砕けた。
音はなかった。
ただ、全員の視界から一瞬、世界が消えた。
次に見えた時。
アリスは壁に叩きつけられていた。
リンは砂地に倒れ、チャクラムは砕けていた。
ガーネは膝をつき、片腕が動かなくなっていた。
ロイドの防御陣は完全に消失し、彼自身も血を吐いて倒れていた。
ロイは影から弾き出され、短剣を落としていた。
ソルは剣を握ったまま立っていたが、その剣は半ばから折れていた。
「……っ」
ソルは立っていた。
ただ一人。
だが、それは立っているだけだった。
体は限界を超えている。
足元に血が落ちる。
肩の傷からではない。
内側から、何かが壊れた血だった。
トーマが近づく。
ゆっくり。
空白の目で。
ソルは折れた剣を構える。
「まだ……だ」
声が掠れる。
「まだ、終わっていない」
トーマは止まらない。
ソルは一歩踏み込もうとする。
膝が崩れた。
それでも、手を伸ばす。
トーマの胸へ。
剣ではなく、手で。
「戻れ……トーマ……」
その手は届かなかった。
トーマの足が、ソルの胸を踏みつけた。
鈍い音。
ソルの息が止まる。
「ソル!」
ロイが叫ぼうとする。
だが声が掠れて出ない。
トーマはソルを見下ろす。
忘却の剣を、ゆっくり持ち上げる。
狙いは喉。
殺すつもりだ。
いや。
殺すという言葉すら違う。
消すつもりだ。
ソルという名前ごと。
存在ごと。
「やめ……ろ……」
ロイドが地面を這いながら手を伸ばす。
リンも動こうとするが、体が動かない。
ガーネは立てない。
アリスは魔力を練ろうとして、術式を組めない。
ロイは短剣へ手を伸ばすが、指が届かない。
全員が、見ているしかなかった。
諦めてはいない。
誰一人、諦めていない。
それでも届かない。
最悪の絶望は、心が折れた時ではない。
心が折れていないのに、体が動かない時だ。
助けたいのに、手が届かない時だ。
声を上げたいのに、喉が潰れている時だ。
トーマの剣が、ソルへ振り下ろされようとした。
その瞬間。
闘技場の空間が、赤く裂けた。
ひゅう、と風が鳴る。
黒い忘却の領域に、赤い傷が走る。
トーマの剣が止まった。
ほんのわずかに。
赤い裂け目の向こうから、紅い旗が現れる。
ゆっくりと。
堂々と。
まるで、地獄の底にさらに別の地獄が旗を立てるように。
セイレンが歩いてきた。
紅い旗を肩に担ぎ、冷たい瞳で闘技場を見渡す。
その後ろから、ルークが現れる。
大剣を肩に乗せ、ぼんやりした表情のまま、しかしその瞳だけは底知れない戦意に染まっていた。
「……間に合った、とは言いにくいわね」
セイレンが言った。
その声は静かだった。
だが、怒っていた。
トーマだったものが、ゆっくりセイレンを見る。
空白の瞳。
黒い剣。
血と忘却に濡れた姿。
セイレンはそれを見て、ほんの少しだけ目を細めた。
「ひどい顔」
ルークが一歩前へ出る。
「トーマ?」
短い問い。
返事はない。
ルークは大剣を握り直した。
「違う」
その一言で、闘技場の空気が変わる。
セイレンは紅い旗を立てるように地面へ突き刺した。
赤い布が、黒い闇の中で揺れる。
「忘却の剣」
彼女はトーマではなく、剣へ向かって言った。
「その体は、まだあなたのものじゃない」
黒い刃が鳴る。
トーマの口が動いた。
「すべて、忘れればよい」
セイレンは笑った。
冷たく、鋭く、怒りを隠さない笑みだった。
「忘れさせる?」
赤い空間裂傷が、彼女の周囲にいくつも走る。
「私から何かを奪えると思うなら、やってみなさい」
ルークが大剣を構える。
たったそれだけで、重力が増したようだった。
彼女の視線はトーマに向いている。
「戦う?」
セイレンは答えた。
「ええ」
そして、紅い旗が大きく翻った。
「相手はトーマじゃない。今は、あの剣よ」
ルークは短く頷いた。
「うん」
トーマだったものが、ソルの喉元から剣を引いた。
ゆっくりと、レッドフラッグスの二人へ向き直る。
地下闘技場に、三つの異質な力が向かい合った。
忘却の剣。
記録喰いの残滓。
そして、紅い旗。
ソルは地面に倒れたまま、かすれた声で呟いた。
「セイレン……」
セイレンは一瞬だけソルを見た。
「死んでないなら、そこで見ていなさい」
いつもの冷たい言い方だった。
だが、その声の奥には確かに焦りがあった。
ルークが大剣を肩に乗せたまま、トーマへ向けて一歩踏み出す。
「返して」
その一言だけ。
だが、それは地下闘技場全体を震わせた。
トーマだったものは、黒い剣を構える。
忘却が、紅い旗へ刃を向けた。
そして誰もが悟った。
絶望は、まだ終わっていない。
だが。
初めて、地獄に亀裂が入った。




