第74階 魔物の国の玉座で
亜人達の王
魔人王マサムネさんに
父の武具を作って頂ける
約束をして貰った
私はゼムさん達と
マサムネさん、ネクさんと
魔物国に向かっていた
その道中魔獣の国の大貴族ともいえる
キャメロット・オブ・フィナーレの
大王象卿と出くわした
「俺はやめておくが
それも伝えておこう
魔獣国で困ったら
伝えてくれ、助力しよう」
テュポーン卿は不敵に笑った
「おうおう、天変地異でも
起こるのかヨォ!」
ゼムさんは笑いこけている
「起こせるぞ!
やってやろうか
グワハハハハハ!!!」
「....愛されてんな」
ネクさんが"愛"のページを開く
「へ?」
「テュポーン卿が力に
なろうなんて聞いた事が無い
この場にはそのつもりで
来たのだろうな
魔獣国でも非常に強い貴族だから
良い人脈ともいえる...
ゼムと軽口叩き合えるのが
その証拠だ
あと、グリモワ様は一線を画す程に
強いから話にのぼりやすいんだ
ほおっておいてやってくれ」
馬鹿ばっかりなんだ、俺の友達は」
なんて嬉しそうな
ネクさんがそこにいた
「ふふふ、そうね
私は魔界に対して何も知らないわね
まだまだよろしくね
ネクさん!」
「おうおう」
「おい!いちゃいちゃ
してんじゃねぇ!!」
ゼムさんが尻尾で
ネクさんにペシっと一打当てる
「ぬおっ!!!」
"驚き"のページが開かれる
「それでは失礼しようかな」
テュポーン卿は翻す
「私、これから魔物国に戻って
魔法使おうと思うのだけれど
秘匿にしてくれるなら
見ても良いわよ」
「ぬ?...」
「全てとは言わないわ
国民にね、今回の様に」
「承知した、ゼム殿も
よろしく願おう」
「心得た」
ゼムさんは軽く吠えた
「よし、かっ飛ばすぜ!」
ゼムさんの号令と共に
魔物国に入国した
「ハツミ!!!」
グルルルッ!!と言いながら
ゼムさんが勢いよく滑らかに止まる
「マスカリア!!」
ぴょこんと飛び出て来た
その後ろから
「あなた...」
「奥さん!」
ガルゥッとゼムさん
「大丈夫なのか"アビシニアン"」
そう呼ばれてゆったりと
少しやつれてはいるけれど
気品のあるフォーン色の体毛に
グリーンの瞳が美しく
小顔で凄く引き締まっていて
とてもスレンダーな美しい猫の獣人である
アビシニアンと呼ばれた彼女は
マサムネ王に跳躍して飛びついて
うっすらと涙を流した
亜人達の国で滑らかな銀毛と
満月の様に光輝くゴールドの瞳が
特徴的なマサムネさんとの
抱擁は目を奪われる程に美しい
「今はマテハが誠心誠意
尽くしているがお姉ちゃんの方は
目を離すと自傷行為を辞めない
だから、マユナが何度も止めている」
私は口を一瞬小さく噤んで
「ゼムさん、ネクさん、テュポさん
それにマサムネさん...使うの半分は
躊躇していたけど私は魔法を使う
だからフォアローゼズ3人を集めて」
「身体の傷はマテハが見てくれた
それで、日が経つ事に快復していく
だろうって、でも精神の傷は
本人次第って」
「グリモワ様にも急いで
貰ってくれるかしら?」
ネクさんは"玉座へ"と
ページを開いていた
私達は玉座に赴いた
「悪いわね、魔王グリモワール様
今は時間が惜しいの
無礼は私が拳で踏み躙るけど
良いかしら」
「...構わないよ、何をするんだい?」
一番幼くとても小さな
猫の獣人のシンガプーラちゃんは
悲しむイムに抱えられて
恐怖に怯えていた
「痛いのいや....」と
小さく何度も呟いていた
セピア色の体毛が滑らかで
母親であるアビシニアンさんと
同じグリーンの瞳が美しい
今は涙で潤んでいる
「ハツミ、暴力的な傷は
非常に多かったものの
3人とも辱しめは
受けていないのが不幸中の幸いかな
あとは全て完治出来る傷だった」
マテハが薄っすらと笑みを浮かべる
「うん、ありがとうね
後は私が引き受ける」
マユナに殆ど羽交い締めの様に
抑えられている
姉のターキッシュアンゴラちゃんは
銀世界にも見える程の
美しくエレガントに流れる
白亜な体毛に
父親であるマサムネさんの
ゴールドを右眼に
母親であるアビシニアンさんの
グリーンを左眼に
持つオッドアイの猫の獣人である
これは魔獣達歓喜だわ
母子の美しさに見惚れながらも
私は1つ咳払いをした
「今から行うのは端的に申し上げれば
"精神の手術"です
3人の今後に対し正常な判断が出来る
マサムネ王に行うか行わないか問います
執刀医は私、助手は四精霊
質問があれば、どうぞ」
「もし、失敗したらどうする?」
「その可能性を配慮出来ないなら
自身でどうにかして欲しい」
「俺が言うのもどうかと思うけど
悪魔との取引みたいだな」
ネクさんは笑っている
「助かるなら、
我が命さえ惜しくない」
マサムネ王は笑った
「引き受けるという事で
宜しいですね?」
「あぁ、頼むよ」
覚悟を決めた男の表情だった
「マサムネ!現状
現実的ではないぞ!」
ゼムさんが吠える
「なーに、私は本来なら死んでいる
妻達もそうだ、龍髭は
そういう漢だった、
でも運命は捻じ曲がった
思いもよらぬ方向に
ゼム殿とネク殿とまたこうして
語り合えるであろう?」
「クソ野郎が!!!」
ゼムさんは泣きながら吠えた
"生きろ"というページを
ネクさんは開いていた
「アオナ、今何処まで
到達しておる?」
不意のばっちゃの声が私の耳に響いた