第298階 三度目の命の雫の目覚めの日 遊具
「わたくしが恐れられている理由の一つに
このフィジカルがありますわ。
土の四大貴族はフィジカルが頭一つ抜けて強くて」
オーニソを周囲が見る目、それは憧れや羨望の他に
恐怖や恐れも滲み出ているのは感じていたわ。
あぁ、絶対に届かず敵わないという絶望を起源としているものなのね。
「『魔女五傑のスズラン』のフィジカルは
土の四大貴族最強にして四大貴族最強と名高かったのですけれど、
それをわたくしが超えてみせましたの。
……腕相撲、武術、スポーツ。素手ならなんでも。スズランは剛剣の達人なので
刀を使いたがっておりましたけど、わたくし刀剣は素人なのですわ」
だからと。
私はオーニソが追加で頼んでくれた飲み物の甘さを舌で感じながら
喉に流れ込んできて喉でも味わっていた。
「伝統行事が終わった後で、ラナンちゃんの剣技を教えていただきたく思いますわ。
それにわたくしが剣技を教えてほしい気持ちと、今日のことは関係ないですわ」
オーニソと戦うんだわ、そんな気持ちがこだまする。
世世が届かないなんてことはないだろうけど、
どんな風に戦えば良いのか分からなくなって迷っているのかもと。
「戦ったあとにしませんか? 私の剣技を直接受けて、
それでも同じ気持ちならその時に考えたいです」
オーニソが懸けてきたすべてを。
伝統行事において歴史上唯一の黒星として名が刻まれてしまうかもしれない。
この気持ちが勝負をすることなんだって、そう思ったの。
「まったくかまわないですわ!! 今日はとにかく楽しんでいただければいいですから!」
私の答えにオーニソは小気味よい返事で了承していた。
「これからは何をする予定なの?」
なにしよーかー。 なんてオーニソは軽口を叩きながら、なぜか笑顔だった。
私はこの施設は初めてなんだけど?
「空中離宮グレズィルの最上階で食事をすることだけは決めてありますわ、
とりあえずゆっくりしましょうか? この特等席は滅多に
購入できる金額で販売されていないですもの」
ふーん、運が良かったのかしら。
それともオーニソだから融通が聞いたのかしら? まぁいいわ。
「そしたらとりあえず、くつろぐわ」
確かに、疲れが取れていく気がするわ。
身体の奥まで洗われていく、そんな心地良さに包まれていく。
「この特等席はルソンの質が繊細過ぎて、庶民に下ろせないのですのよ。
こういったルソンを使用した皇帝と七賢人達が遊んで創った
オーバーテクノロジーは実は目にするだけなら珍しくないのですわ」
セクス様達のラ・メール・ソンティモン。
それでも世世には届いていないわよ。
あんたは一体何を創ったのかしらね、魔皇。
「王宮グレールにはたくさん使われていたでしょ?
オーニソはどこまで見えて、どこまで感じて、どこまで捉えられているの?
あ、でもこれはなんてズルい質問だったわ」
オーニソは微笑む。
「えぇ、その通りですわ。王宮グレールはその宝庫ですわね。
わたくしはラナンちゃんのだけは見えないわ、先代さえ見えそうだったのに。」
オーニソさえ見えない深さ、その深さに私は浸っている。そういうことなのね。
私はどこまで世世の深さを知っているのかしら。
もしかしたら私が【世世】まで進化させてしまったのかしらね。
「私もまだ、自分を知ろうとしている段階だわ」
思う通り以上に遥かに【世世】は動く。
使ってみてそれはすごく強く感じていたこと。
「それにしてもこんなにも見えないなんて初めての経験ですわ、
だからこそ未知が恐ろしくも楽しみでたまりませんわ」
世世は未知と評されるのね。
その未知を私は既知の力に変えていく。
そうしてもっと私は【世世】を知るのね。
「私も知らない先輩が楽しみです」
虚を突かれたように驚くオーニソ。
不敵に口角をほんのりとあげて戻して
いつものオーニソの表情に戻る。
「さて、探り合いはここまでにして」
オーニソは一息吐くように自身の飲み物で喉を潤していく。
「遊ぶ?」
それでも人への思いやりで構成された心地良さは私の太陽人としての身体を怠惰へと誘う。
「寝ながら、このままで遊べないの? オーニソ」
オーニソはけらけらと自身の口元を軽く抑えながら笑っている。
「ラナンちゃんのご所望はこちらですわね」
眼鏡?
これは物質ではないわ。
私の人差し指の上で軽くくるくると回転する。
「元々、これは身体を怪我された方々のリハビリだったり、
一生動けない身体に生まれた子供へ世界を歩かせるものですわ」
擬似幽体離脱。
オーニソはそう言った。
「スパイ用途も見込まれましたけど、ルソンで輪郭を作り出す仕組みなので
無効化で魂、精神が重傷を追い異常をきたす可能性を
否定しきれませんので却下されたらしいですわ」
ラ・メール・ソンティモンに自身の一部を移すってことね。
それはそうだわ。
魔法は本来、命の循環と密接に結び付いている。
「守護できる場所でしか使用ができないってことかしら」
オーニソは目を見開いた、それは一瞬のことで。
少し【世世】で探ったから分かるわ。
そうでなければ娯楽へと移せない。
「その通りですわ。敵の施設では万が一の可能性を示唆して使用を禁じている。
いや、西の大帝国からその道具を用いては出られないですわ」
皇帝と七賢人達の頭脳を破れない限りは。
そうオーニソは確かに私に伝えた。
彼等彼女等をまとめて超越すること、ね。




