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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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298/303

第297階 三度目の命の雫の目覚めの日 熱

 はじまったわ。瞬間、私は驚いた。

特等席ゆえなのか、泳ぐ人のデータを閲覧できる。

自身で登録したデータだけだろうけれど。

 オーニソは一瞬で、一人分、二人分と差をつけていく。

周囲は泳ぐことを専門としているプロと呼ばれる人達。

普段からこの速さで泳いでいたら、容姿もさることながら注目されるわけだわ。

 ネモフィラさんとその彼氏さんも泳ぐみたいね。

男女関係なくオーニソは圧倒的だった。

 水に吸い込まれるように斬り裂いていく指先、

水の一部かと錯覚してしまうほど柔らかくしなやかな

筋肉のうねりと身体のひねりにねじり。

 私に向ける笑顔からは想像もつかないほどの

何かに向き合う精神力、今私の目に焼き付かせるほどに

こんなにも魅せているオーニソ。

 息を合わせたように緊張感を呑み込む些細な音が重なり合って

私の耳が拾う。オーニソの泳ぎに誰もが魅入られている。

驚く小声が空気を小さく震わせている。

 水の色は水の色をしている、それ以上でもそれ以下でもない。

はずなのに、オーニソが泳ぐ軌跡は光の屈折を恩恵を受けているのか

虹が微かに煌めいたような気がした。

 ネモフィラさんとその彼氏さんが飛び込む。

飛び込んでスタート瞬間にオーニソと並ぶ、

その瞬間だけならおでこの分だけ二人の方が先を。

 オーニソと並ぶ。

オーニソは笑みをうっすらと浮かべたような気がした。

それはすでに一周目を終えた直後だったから、ほんの小さな小休憩だったのだろう。

 次の瞬間、オーニソの踝の近くに二人の額があった。

周囲もざわついていた。彼は【飛人】に所属している。

レサトお父様と同じで男性達のトップを走る超エリート部隊の現一人。

 ネモフィラさんは王院2年生としか記載がない。

でも分かる、オーニソが桁外れなだけでネモフィラんさんは人魚のように

しなやかに柔らかく泳ぐ。

 流石に専門性の高いプロにはほんの少しずつ距離を詰められていく。

逆にそのプロ達にぐんぐん距離を詰めるオーニソ。

距離が長く二周目はほとんどが若干以上速度が落ちる。

 オーニソだけは速度が落ちずに維持している。

圧倒的な持久力は戦闘にも活かされるでしょうね。

 普段の行動から身体能力の高さの片鱗は覗かせていたけれど、

こんなにも実力差が開いてしまうほどの光景を見せられるとは

思いもしなかった、ましてやこの太陽人達の間で。

 ラ・メール・ソンティ(まほう)モンの使用は

世世(わたしのまほう)ですら反応せず感じないわ。

純粋な鍛え抜かれたフィジカル差。

 五周目を終えたオーニソが水から上がる。

こっちを向いて笑顔で手を振ってくる。

軽く手を振って返しておいてあげたわ。

 私の飲み物も半分以上は減っていた。

 オーニソを見ながらみんなひそひそと

何かを言っているのが、ところどころで見える。

何を言ってるのか分からないけれど。

 悪口ではなさそうだけど、オーニソからしたら

あんまり気分の良いものでもなさそうね。

オーニソの歩が聞こえてきてこちらへ上がってくるのが分かった。

「ラナンちゃん!! どーだった!? わたくしの泳ぎですわ」

 聞こえない振りで押し通したのか、

いつもの事だから無理に慣れてしまったのか

そこまでは推し量れなかった。

「初めて見たわよ! 虹を生み出す泳ぎだなんて、

それにオーニソだけ圧倒的過ぎでは!」

 オーニソは苦笑しながら飲み物を二つ頼んでいた。

「ラナンちゃん飲み終わりそうですわね。

わたくし『魔女五傑(マレヴォレント)のスズラン』以上のフィジカルですの。

だから私は、相手が誰であろうとも勝てない道はないんですのよ」

 風が、嵐とも思える何かが通り過ぎていった。

物理的にじゃなくって、それはオーニソの自信が

積み重ねたものが魂から振動させた、それは。

「痺れたわ。けれど新入生伝統行事では、オーニソに私も負けないわ」

それは。

「良い返事ですわ」

それは、強者の魂の熱で

【命の雫】のような熱で

魔王を倒す勇者の閃光のような熱で。

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