第296階 三度目の命の雫の目覚めの日 再会
「実はチケットが二人分取れましたのよ。
色々慌ただしくはなりましたけど。
移動式空中リゾートにして空飛ぶ王宮『空中離宮グレズィル』ですわ」
重力を徐々に軽減していくリュミエール・アサンスール
で私達は遥か上空へと運ばれていた。
内部は十人が手を広げても入るぐらい広く円柱状になっているわね。
時々時の魔法も影響しているみたいで、【空中離宮グレズィル】と
リュミエール・アサンスールを繋げる役目を担っているみたい。
だから乗る場所は定位置で、【空中離宮グレズィル】へと追いつける。
「さぁ、こっちにおいでくださいまし。ラナンちゃん」
「えぇ、オーニソ」
リュミエール・アサンスールから降りて
【空中離宮グレズィル】までの道はニュアージュ・アン・エールだった。
雲にラ・メール・エモシオン(まほうすい)を染み込ませていて、
ラ・メール・ソンティモン(まほう)のニュアージュ・アン・エールとしていたわ。
「『王宮グレル』に作りは似ているのね」
【空中離宮グレズィル】の入口へと一歩踏み出した時にそう感じたわ。
「元々は歴代の皇帝達の離宮だそうですわ。
現代の様に食事や遊戯を楽しむための娯楽施設にして民たちに開放したという
『五代目皇帝 三清』のジュピター様の逸話がありましてよ。
女好きとして有名な逸話が多い皇帝様ですから、
なんでも女性達の水着を合法的に拝むためとかなんとか」
ふーん、確かに水の遊戯が多いわね。
「変態皇帝と憶えておくわ」
あははは。 とオーニソはお腹を抱えて笑っていた。
「ラナンちゃんなら皇妃に迎えられたと思いますわ」
オーニソが言う? 良いスタイルしてるわ。
大きな胸が好きなタイプな私は違うし、そもそも女好きとして
たくさん遊んでそうなタイプは却下だわ。
「いえ、迎えられなくて結構です」
あははは。 とオーニソはまたもお腹を抱えて笑っていた。
「まぁ、わたくしは泳ぎたいですわ、自信ありますし。
魅せ付けてこようかしら。四大貴族様の魅力ってやつをですわ」
なんで手を握っているんですか?
「オーニソ? 連れて行くき満々では?」
両手で握らないでくれるかしら?
「合法的にラナンちゃんの白い肌を堪能するチャンスですわ。
ジュピター様にわたくしは感謝いたしますわ」
良い意味で諦めよ。なんだか水に浸りたいし。
結局私も巻き込まれてミロワール・メールに着替えたわ。
着心地はとても良くて、脱げない仕様で。
オーニソに選んで買ってもらったんだけれど、
白系の色にしたら素肌とほとんど一緒でなんか危ないって赤くなっていたわね。
ミロワール・ドー・オンソルスレで見たら別の色にしたくなったわ。
結局、黒系のノワール・ドゥ・シャンブルのトップスに
天使の羽とアンダーに悪魔の羽根をあしらった
泳がない人向けかつ美意識の高い女性向けのミロワール・メールを着ているわ。
小ぶりな翼だけの天使になれるミロワール・メールで評判も価値も高いそうで。
「思ったより胸デカいし、すごい筋肉ですね」
胸は目に付いたけど手足の筋肉に背中、引き締まったお腹に形が良いお尻。
露出を好まないオーニソが脱ぐと、こんなにも鍛えられ上げられているのかと別世界を感じるわ。
それでいて私の事を白い肌と賞賛するけど全然引けを取らないほどの白さで輝く肌。
青系のイリスで水の抵抗を極限まで減らす仕組みが施されているらしく、
それでいて布面積は私が来ている美意識の高い女性向けの
ミロワール・メールの八十五%ほどという、
天使の羽と悪魔の羽根を含めての計算だわ。
「ミモモに比べたら小さいですわ。
それに血筋上は胸囲は大きめなので、
ほどよくするために苦労しましたわ」
私自身、アオナ、ラズベリー、ラナンキュラス。
大きかったためしがないわね。
羨ましい気持ちを抱いていると問われると否のような気がするわ。
「動きを阻害されると困りますもの、だからちょうど良くて気に入ってますわ。わたくし自身」
へぇー、大き過ぎるお胸って動きを阻害するのねって、知らない知識が増えていく。
ミモモさんを見てると魅力値はとても高いと感じるけれど。
「ラナンちゃん、助かりますわ。周囲の視線が二、三割そちらに流れていきますもの」
はあぁい? 確かに視線は感じるけれど。
そういえば男性も多いわ。
特に女の子達に見られているわね。
「わたくしの顔が見えるだろうし、ナンパされる事はありませんでしょうけど。
一泳ぎしてくるのであちらの席に先に行って、何か飲まれてくつろいでいただけますと助かりますわ」
ぜんぶわたくし持ちで良いので! と言い残してオーニソは
アクロバティックな動きをしながら泳ぐコースへと行ってしまった。
「ラナンさん!?」
声の方を振り返ると。
私はどうやら美男美女の熱々カップルに話しかけられたみたいで
ミロワール・メールは色違いだし、耳に付けてるものもペアルック。
「ネモフィラさんね、お久しぶりと恋人さんですよね」
ネモフィラさんが水色系統で彼氏さんが赤系統のミロワール・メールで
彼女達も積極的に泳ぎにきた、泳げるみたいだわ。
へぇー、【魔女五傑】に狙われただけあって
とってもイケメンね、彼氏さん。
「こうしてネモフィラと『空中離宮グレズィル』に
遊びに来れるのも貴女のおかげです!ありがとうございます!!」
そうやって、頭を深く下げられる。
もう床に擦り付けそうな勢いで。
ネモフィラさんが彼をなだめていた。
「嬉しいけど、恥ずかしいわ」
ネモフィラさんは苦笑していたわ。
「この場なので控えめにしときますけれど、ユハニスと同じ気持ちです。本当に助けていただいて......」
溢れ落ちる涙、我慢できないぐらいに両目から溢れてくる。
そんなネモフィラさんを私は抱きしめていた。
オーニソが私にするように。
「気にしないで良いわよ。元気ならそれで良いわ」
ありがとうございます。
と泣きじゃくる涙が溢れてどうしようもない声で。
そうネモフィラさんはつぶやいていた。
「そういえば、オーニソ様と来ていらしたんですね。オーニソ様は普段は、
お一人かプラタナス様とご一緒されてるところを度々お見かけしますので」
オーニソというと、次に泳ぐ順番になっていた。
「オーニソに誘われたわ、あちらで見る事になっているのよ」
私がオーニソに言われた席を指差すと
二人はとっても驚いた表情で興奮気味だった。
「あんな特等席! 普通は座れませんよ。いつか二人で
座ってみたいと思ったりしてますが、権力も何もかも不足していて」
確かに特別綺麗な席だとは思ったわ。
変態皇帝が水着を一番堪能できる席ってところかしら。
「私は席に向かうわ、可愛いカップルなんだから気をつけてよね」
ちょっと皮肉めいたことを口にすると、ネモフィラさんは赤くなって会釈して、
ユハニスくんも赤らめながらネモフィラさんの手を引いていた。
そのユハニスくんの握る手を、ネモフィラさんは強く握り返していた。
まるでずっと一緒だよと伝えるように。
それから私はというとその特等席について、飲み物を頼んだわ。
すごく身体を伸ばしても、高い位置で誰にも見られないし、
なんだかふわふして寝心地いいし、オーニソがとても見やすい。
そして飲み物はもう届いて手に持っているわ。
アイスのような冷たくて柔らかくてフワッとした甘い何かが
ちょこんとのせてあって舌にうれしいわ。




