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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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296/305

第295階 三度目の命の雫の目覚めの日 七賢人

「もう到着するのかしら」

 幻想的な景色が続く、何かを惑わすような。

分かっていて、わざわざ口に出した。

彼女(セクス)の放つ気や魔力を感じ取れない私ではないのだから。

「目的は分からないけれど、変な真似はしてほしくはないです」

「ラナンキュラスが会いたがっていた、私は合わせてあげたいと思った。

ラナンキュラスは憧れていたから」

 オーニソ先輩がふっと悲しい表情を自然に滲ませて、先へ歩を進める。

藍の彼女達からほんのり敵意が薄れている、そんな気がしたわ。


 *


「案内御苦労様。二人は下がって良いよ。

あとは私が会話を重ねるから」

 懐かしささえ込み上げる、その姿に声、そして振る舞いに。

セクス・フトゥールム。

久しぶりね。 とそうアオナは呟いた気がした。

「ゲッカビジン様、お会いできて光栄ですわ」

 ふっと笑みを浮かべるセクス。

「オーニソガラム、貴女の活躍は聞いているわ」

 オーニソ先輩は深々と頭を下げて応える。

「そして貴女は......」

 ラナンキュラスを通して(アオナ)は目があった。

刹那の静寂が支配する。

再会と憧れが交差するなかで感情がせめぎ合う。

「ラナンキュラス、転生者です。本当のラナンキュラスは

貴女に憧れておりました。セクス様」

 ハッとセクスは驚いた表情を灯す。

「そう、今の貴女の事を教えていただけるかしら」

 迷ったけれど迷う必要はないと深く思う。

私に対して。

「私には転生前の記憶がありません。なので何者かは分かりません」

 少し困ったような表情で応えるセクス。

さすがに大方嘘だと見抜かれている可能性はあるわね。

「そう応える必要性を教えて下さるかしら」

 それは味方でいたいのか、敵だとはっきりと認識したいのか。

私には推し量れなかった。

そう考える内に数秒、無言になってしまっていた。

「何者だと言われても、私もオーニソガラムも驚くことはないでしょう」

「誰かを探している? 同じような人物が近い過去にいたということですね」

 私の即答に二人は目を一瞬だけ見開いた、本当に一瞬だった。

世世(わたしのまほう)でなければ気付けないわ。

これが西の大帝国の強者達の精神力。

「記憶の断片を繋げて知り得る転生前の私をお伝えしても、

西の大帝国に連なる人物でも、月人と謳われる種族でもないわ」

 言って伝えてプラスに働いたかどうかは分からないわね。

「記憶が曖昧だから、伝えられないということ。

そう受け止めていいのよね」

 彼女(セクス)の表情は穏やかだった。

「ふーん、転生前のラナンちゃんは味方でも敵でもないのですわね。

スルグレの支配者であるトーラルカエの主はご存命でおられますし」

 オーニソは勘付いているのか、これまでの断片的な情報から知として飲み込めたのか。

私がスルグレの支配者である【トーラルカエの主のアオナ】である事実から

遠ざかる会話運びを決定付けようとしている。

「私達と覇を競い合った『ミリカンテアの勇者(アオナ・エカルラート)』と

同一人物であるという線は『現黎宙のエース候補』の見たてでは可能性すらない

ということと受け止めれば良いかしら」

 オーニソは肯定するように柔和な表情で応えている。

「残っている事実は火の四大貴族の最後の一人であらせられる、

クラレット様へと絶対的な忠誠を誓ってるとお伝えしますわ」

 彼女(セクス)は柔和な笑みを灯した。

「その事実は約束できるのね」

「私はクラレット様を皇帝に押し上げます」

 かつての皇帝、七賢人の面前。

でも、躊躇はしないわ。

だって意味ないもの、成るのだからクラは。

「私達を超えると。そう仰るのね、ラナンキュラス」

 私の名を呼んだ時の力強さは試されたと心から思った。

彼女(セクス)の心の剣が言葉の強靭な刃となって私を斬り伏せようとする。

「そう言いました、一字一句変えるつもりはありません」

 オーニソも彼女(セクス)も口元を緩める。

「妬いちゃいますわ、クラレット様に」

 オーニソは私に向けてウインクする。

妬いちゃうなんて言葉が嘘のような綺麗な笑みを携えて。

「協力致しましょう、クラレット様に」

 は!?

どういうこと!?

まって!?

「どういう事で?」

 言葉通りの意味です。 と彼女(セクス)

「元よりクラレット様にはどこかで手を差し伸べたいと思っておりました、

彼女自身の高い才覚ゆえに個の力ですべてを超えて踏破しておられました。それに......」

 悪戯な笑みを浮かべて。

「未来への投資で勝ち馬に乗らせていただきます」

 投資に勝ち馬ね、面白い考え方だわ。

「ありがとうございます」

 ラナンキュラスは憧れ(セクス)に会いたがっていた。

彼女の願いを叶えようとした。

そしたら、協力者になってくれるなんて。

「正式なプロンジェナ(もじじょうほう)ジェは

アンヴロペナ(きみつじょうほう)ジェとして作成いたします」

 わたしも承認しましょう とオーニソ。

「藍の御二人は転生者が大嫌いです、私も嫌われています。その辺りは大丈夫なのでしょうか」

 驚いた顔を一瞬だけみせてセクスは微笑む。

「皆が皆クラレット様を助けたがっていた。

貴女は手を差し伸べて先に受け止めてもらえた。羨ましかったのでしょうね」

 クラはなぜそんなに孤独であろうとしたのか。その心中をいつか聞いてみたいわね。

心開いてくれる時が訪れれば。 だけど。

「どう反応していいのか、正直分からないです。

でもクラレットが想像よりもたくさんの人々に気にかけていただけている事実は嬉しいですね」

 私の応えに彼女(セクス)は穏やかな笑みで一瞥する。

「私も気にかける一人だから、こうしてきっかけを与えてくれた貴女に感謝しているわ」

 私にだった、その貴女は。

でもセクス・フトゥールムに憧れ会いたがっていたのは本当のラナンキュラスで。

私は彼女のおかげでクラを助ける手を繋げられたんだと思う、だから。

「本当のラナンキュラスは貴女にセクス・フトゥールムに憧れていた! 

だからせめて彼女の残滓が残るこの身体で貴女に会うのが、

あの娘のためになると思ったんです、本当のラナンのおかげです」

 歩が近付く。

私の鼻に匂いが、穏やかなそれでいて

深く人を惹きつけるそんな色香のような匂いが私と触れ合う。

 彼女(セクス)は私を抱きしめていた。

「ラナンキュラスは......報告に上がっていました。

生きる事は絶望的なほどに心がジ・ハード・ラグナレクの犠牲となったと。

今の貴女に託したのですね、受け取りましたよ。二人のラナンキュラス」

 右目から涙が溢れた。

残っていたのだろうか、ラナン(あなた)の心は。

会えたのかしら。

 憧れ(セクス)に。



 【王宮グレル】は遥か後方に。

オーニソにジ・ハード・ラグナレクについて聞いたら。

いずれ話すわ。それに王院の授業でも【黎宙の知書空間】でも概要は知れるはずですわ。と

「セクス様はクラレット様への協力に積極的でしたので、そこは大丈夫ですわ。

むしろ強い味方を得たと喜ぶところですわ......それも兼ねてわたくしとの予定を戻しますわ」

 えぇ、もちろん。と私は答えて、オーニソに次の行き先を尋ねていた。

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