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魔皇の魔法とハツミリア  作者: 道草 遊者
王路院編

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295/295

第294階 三度目の命の雫の目覚めの日 藍

「お付き合いいただいて嬉しかったわ、オーニソガラムにラナン」

 フルールが提供したケーキはすでになく、程よい満腹感がお腹を満たしているわ。

「美味しかったわ、フルール」

 クスッと小さく微笑むフルール。

そしてフルールはルテ・アンプル(紅茶)ールを一口分だけ喉を通した。

「それは?」

 フルールはプロンジェナ(もじじょうほう)ジェを二枚、私に差し出してきた。

 「私の、皇帝の娘の権限を一時的に貸し与えると記載されているものです、

どこでも好きな場所に一度だけ行けるから会いたい人物にも会えますわよ」

「?」

 クスクスとフルールは笑う。

「二人で過ごす時間をいただいたもの、それ相応の施しがありますわよ、それは当然のことです」

 安易に受け取って良いのかしら、これ。

そう思ってると、フルールに実に丁寧に手に乗せられ掴まれる。

「拒むのだけは却下です」

 圧が強いわね。

まぁ断る気はなかったけれど。

「ありがたく受け取っておくわ」

 その直後、彼女(スズラン)が立ち上がり

【王宮グレル】を最初に目にした地へと繋がる扉を開いていた。

「行こ、ラナンちゃん」

 私は丁寧に礼をするフルールと彼女(スズラン)へ小さく頭を下げながら、扉をくぐり抜けた。


✴︎


「うーん、どこに行きたいかしら。ラナンちゃんは?」

 小さな悩みを打ち消すような笑みでオーニソは花が咲くように笑う。

不意の笑みに少し驚く。

「皇帝のお姫様の権力を叩きつけてでも、行きたいような場所って思い浮かばないわ」

 あははは。 と声を出して笑うオーニソ。

「思いついたのが皇帝に会う、七賢人に会うとかなのですわ」

 誰かに会って欲しい? そういう事なのかしら。

「セクス・フトゥールム」

 オーニソは目を見開いて驚く。

「ゲッカビジン様にお会いしたいということで?」

 本当のラナンキュラスが会いたがっていた憧れの彼女(セクス)

私は小さく頷いた。


✴︎


 王宮グレールのエントランスホールでプロンジェナ(もじじょうほう)ジェをかざすと

直轄部隊 藍が二名現れる。

 彼女達二人は藍色のフードに仮面、そして藍色の軽装を身に纏っていた。

「セクス様への謁見を希望ということでよろしいですか?」

オーニソと私は頷く。

「プロンジェナ(もじじょうほう)ジェに薄く染みているラ・メール・エモシ(まほうすい)オンを

通して思考に感情、心を読み取る仕組みです。限定的に」

 声からしてネモフィラさんにアガパンサスさんではなさそう。

「なんか監視されるみたいね」

水面に映し出すようなものです。 と即、返答があった。

「でも、本当に驚きましたわ。フルール様の一存で

元皇帝の一角にして七賢人様がこうも簡単に動くなんて」

 仮面の下で藍の彼女は苦笑したような気がしたわ。

「ただの戯れとも、そもそもは『黎宙の現エース』である『プラタナス様』への施しだそうです。

第三次と第四次月人戦役の立役者であるフルール様には、誰一人逆らいませんから」

 クスッと小さく冗談っぽい笑みを仮面越しから溢す藍の彼女。

プラ先輩への施し? 何か引っ掛かるわ。

何かしらね。

 エントランスホールから、時が途切れるように

彼女達の歩がラ・メール・ソンティ(まほう)モンを奏でる。

 藍の彼女達しか知らないようなラ・メール・ソンティ(まほう)モンで目の前に広がる道が

セクス・フトゥールム(ゲッカビジン)へと繋がる道なのだとそう思った。

 「王宮の入り口は遥か彼方と言ったところですわね」

 二人の藍はコクコクとオーニソの問いかけに答える。

 「そういえば、会ったことあるわね? ネモフィラさんにアガパンサスさんは元気かしら」

 仮面越しにジッと見つめられた気がした。

「「私達はお前が嫌いだ」」

「どうでもいいわ、答えるの? 拒否と受け取っていいのかしら?」

 オーニソ先輩が私と藍の二人の間に手を差し込む。

「穏やかではありませんのね、案内は当然してくださりますわよね?」

 二人の藍はコクンっと頷く。

「私はクラの為にお二人を斬って、お二人の為に『真祖』を斬ったわ」

 仮面の下の表情は分からない。

大切なものはなんだったのだろうと思ってはみるものの。

 「敵意を表明しても仕方ありませんのは分かっております。

転生者だから力を暴走させるのは嫌いです」

 立ち振る舞いに関してというところかしら。

「クラに刃を向けられて冷静になれるはずもないわ、私自身。

敵意が薄かったから結界内の生命維持に押し込めたけれど」

 《くろい まほう》の柄の先に触れる。

黒がほんのり漂う。

それは悪を踏み躙る絶対的な黒色で。

「暴走なんてさせられないわ、とても」

 唾が喉元を通る音が二つ響く。

「嫌いでもなんでもいいわ、普通の転生者と同じにしないでくれるかしら。

私は自分の魔法で転生したの」

 オーニソ先輩が藍のお二人をなだめる声がする。

小さな二つの肩が震える音が微かに耳朶に触れる。

「ラナンちゃんは一味違いますわよ、私が言うのですから。

ラナンちゃんを敵にしないでいただけますわね? 

大丈夫ですわよ、このオーニソガラムを信じていただけたら」

 藍のお二人は仮面越しに目を見合っているようだった。

「別に、すぐ好きにならなくていいわよ。

 でもこれから少し嫌いが解けていったら嬉しい。

ネモフィラさんもアガパンサスさんも好きだから」

 藍の一人が私へ一歩、歩を歩ませてくる。

「経過観察という奴ですね、そういう事にします」

 納得はいっていないんだろうなぁっと思いつつ、

私は私自身の口角が少し自然に上がるのを感じる。

嫌われるよりも認められたりした方が嬉しいわね。

「でも不思議ですわね、ゲッカビジン様の元へは通しますのね」

 オーニソ先輩の皮肉とも取れる痛烈な一言に少し吹き出しそうになったのは内緒。

「フルール様の御意向を私情で妨げることはできません」

 答えてくれた藍の一人は少し俯く。

「立場ということですわね、大丈夫よ。

先代エース(フルール)』だって貴女達の言う転生者なんて通しませんわよ」

 よろしくお願いしますと小さく重なる声が響く。

オーニソは笑顔を向けて応えていた。

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